§ 未完の巨匠
あと10年、いや5年でいい、長生きして音楽活動を行ってくれていたら、当時のクラシック音楽シーンは明らかに変わっていたであろうという”惜別”の指揮者たちがいた。その生きた時代、享年によっても異なるが、小生は7名を以下のリストにのせている。
50才台での昇天、シノーポリとともにベイヌムはその一人である。ともに指揮の最中に突然の死が訪れる。ベイヌムが天に召された57才という年令はもちろん”夭折”の範疇には入らないが、たゆまぬ研鑽のうえ、スターダムにのった働き盛りでの急逝は、“未完の巨匠”という意味ではなんとも勿体なく思う。
§ 黄金の1950年代
クラシック音楽界における1950年代は、あたかもマンモスが闊歩するかのような一大時代であった。しかし、たとえばフルトヴェングラー、トスカニーニやワルターなど30名の巨匠を並べた次の座右の選集のなかに、さきの7人のうち、フリッチャイやケンペは入っているが、ベイヌムの名前はない。それくらい、あまたの大指揮者が覇を競っていた黄金期であった。
織工Ⅲ 拾遺集 グレート・コンダクターズ(30CD) (fc2.com)
ベイヌムは、故国オランダで確実に地歩を固めて1940年代にロンドンに進出、米国でもフィラデルフィア管デビューに成功しロサンジェルス・フィルのシェフを務めていた、その矢先の死であった。世界的に注目された”昇竜期”にあっただけに誠に残念なことと思う。
織工Ⅲ: ベイヌムの特質 (shokkou3.blogspot.com)
§ メンゲンベルクとコンセルトヘボウ
欧州3大オケといえば、ベルリン・フィル、ウィーン・フィルそしてコンセルトヘボウが、いまも”通り相場”だが、実際は群雄割拠、有力楽団が犇(ひし)めいている。しかし、当時もいまもコンセルトヘボウのシェフは指揮者にとって最有力なポストであることに変わりはない。
さて、前任の大指揮者メンゲンベルクとベイヌムのレパートリーは、バッハやブラームスなどかなり重なっているが、ベートーヴェンとチャイコフスキーに関しては、メンゲンベルクには以下の多くの録音が知られている。
<メンゲンベルクの音源>
【ベートーヴェン】
交響曲全集
・第1番 ハ長調, Op.21 ➀ 8November 1938、②14 April 1940, Live
・第2番 ニ長調, Op.36 21 April 1940, Live
・第3番 変ホ長調, Op.55 18 April 1940, Live
・第4番 変ロ長調, Op.60 ➀1&2 December 1938、②25 April 1940, Live
・第5番 ハ短調, Op.67 ➀4 May 1937、②18 April 1940, Live
・第6番 変ロ長調, Op.68 ➀22 December 1937、②21 April 1940, Live
・第7番 イ長調, Op.92 25 April 1940, Live
・第8番 ヘ長調, Op.93 ➀第2楽章:10 June 1927、② 9 November 1938、③18 April 1940, Live
・第9番 ニ短調, Op.125 ➀31 May 1938, Live、②2 May 1940, Live
・フィデリオ序曲, Op.72b
28 April 1940, Live
・「レオノーレ序曲」第1番,
Op.138 2 June 1931
・「レオノーレ序曲」第3番,
Op.72b 13'06 30&31 May 1930
・「エグモント」序曲, Op.84 ➀
May 1926、② May 1926、③29 April
1943, Live
・「コリオラン」序曲, Op.62 ➀
May 1926、② 1 June 1931
・バレエ音楽「プロメテウスの創造物」Op.43より ➀ 24 June 1935、② 1 November 1942
・「アテネの廃墟」,Op.113 ~トルコ行進曲 ➀ 30&31 May 1930、②1 November 1942
【チャイコフスキー】
交響曲
・第4番 ヘ短調, Op.36 11&15 June 1929
・第5番 ホ短調, Op.64 ➀第2,3楽章:10 June 1927、②10 May 1928、③ 26 November 1939, Live
・第6番 ロ短調, Op.74「悲愴」➀22 December 1937、②22 April 1941
・弦楽のためのセレナーデ ハ長調, Op.48から ➀ワルツ:10 May 1928、② 6
October 1938, Live、③8 November 1938
・幻想序曲「ロメオとジュリエット」30&31 May 1930
・大序曲「1812」, Op.49 April 1940
晩年まで現代音楽に強い関心、オランダの大指揮者の軌跡 (amazon.co.jp)
一方、ベイヌムではこの2大作曲家の録音はいかにも手薄である。しかし一部交響曲と、協奏曲など残された音源の秀逸さからみて、もしも10年、いや5年でも存命していたら、ステレオ収録できっと良き成果を残してくれたのではないかと悔やまれる。
織工Ⅲ: ベイヌムの芸術 (shokkou3.blogspot.com)
§ ベイヌムの先駆性
ここでは3つについて簡略にまとめてみたので、以下を参照されたいが、ブリテン、ブルックナーはベイヌムの独自の領域。マーラー、フランスものの一部はメンゲンベルクと重なっている。また、シューベルトの初期の交響曲でもベイヌムの取り上げは積極的である。
織工Ⅲ: ベイヌムの先駆性 マーラーとブルックナー (shokkou3.blogspot.com)
織工Ⅲ: ベイヌムの先駆性 ブリテンとフランス音楽 (shokkou3.blogspot.com)
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