土曜日, 8月 11, 2012

グールド ブラームス間奏曲集

Brahms: 10 Intermezzi


多くの作品がグールド28才、1960年の録音。しかし、深く思索的なピアニズムは「弾き手」の年令を全く意識させない。クリアすぎるほどに研ぎ澄まされた<音>の連続、その一方、グールドのいつもの唸り声も背後で微かに響く。 

 だが、「聴き手」の神経は、そこには止まらずブラームス還暦ちかくの深さをたたえた憂愁の<音楽>に自然に行きつく。そして、どうして倍以上も違う作曲家の心情を、20代の若者の「弾き手」がかくも豊かに表現できるのだろうとの驚きが次にくるだろう。 

 しかも、半世紀前に録音されたいわば「歴史的」な音源のはずなのに、この稀有な演奏は今日ここで奏でられているかの如く生々しくも「現代的」に響く。グールドは健康上の理由で常備薬を手放せなかったと言われるが、この音楽は逆に、グールドから「聴き手」の心に直接投与される最良の音楽サプリメントである。

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