価格、内容からは大変な廉価盤選集。以下は作曲家別を中心とするチェック・リストを作成した。ただし、他のbox setですでになんどもリ・パッケージされているものもあり、また全体の基本コンセプト、統一感は希薄。一般には自分のコレクション上、重複覚悟で何点が新規の魅力的な「買い」かによっての判断となろう。
小生は、VOL.1のヒルデガルト・フォン・ビンゲン作曲集/セクエンツィアー中世音楽アンサンブル(1994年)から聴く。この清浄な妙なる響きを聴いて、買って損なしと得心した。人それぞれ、お目当てを楽しんで探し、価格を考量のうえどうぞ!
<収録情報>(録音時点)
【ヴィヴァルディ】
・協奏曲集『四季』/ヴェニス・バロック・オーケストラ(1999年)
イ・ムジチで「四季」を知って以来、どちらかというとしっかりとした合奏にこの曲の魅力を感じてきたが、ジュリアーノ・カルミニョーラとヴェニス・バロック・オーケストラのテイストはまったく別で、「軽みの美学」とでも表現すべきか、音はとても優しくて、テンポはあくまでも軽快かつ可変的。
特色としては、即興的な雰囲気も感じさせる自由度が高く、各楽器の個性を思うさま前面にだしたような演奏である。ちょっと表情をつけすぎといった場面もあるけれど、全般に快速で一瞬たりともあきさせない。こうした「四季」もあるのだといった新鮮な印象。聴きおわったあとによき爽快感がある。
【ロッシーニ】
・アリアとデュエット集/カサロヴァ(メゾ・ソプラノ)(1999年)
ヴェッセリーナ
・ カサロヴァのロッシーニを聴く。非常に奥行きのあるメゾ・ソプラノで、「セヴィリアの理髪師」(チューリヒ歌劇場)、ロッシーニ:歌劇「チェネレントラ」、ロッシーニ : 歌劇「タンクレディ」全曲(いずれもミュンヘン放送管弦楽団)などの全曲録音でも知られる第一人者。
最近、ロッシーニの歌劇は世界的に再評価されており、この曲集でもその魅力のエッセンスは十分に伝わってくる。カサロヴァの表現力豊かでよく伸びる詠唱はバックで流しているだけでもなんとも心地よさを感じる。2曲所収の「アルジェのイタリア女」を聴いていると、地中海の輝く太陽のような曲筋を南ドイツの透明感あるオケの音色ととともにコロラトゥーラの歌姫は余裕をもって歌いきっている姿が連想できる。良き選集である。
【バッハ】
・ゴルトベルク変奏曲/グールド(1981年)
・マタイ受難曲(ハイライト)/レオンハルト指揮(1989年)
・無伴奏チェロ組曲第1~3番/ヨーヨー・マ(1994~1997年)
【 モーツァルト】
・レクィエム
ニ短調K.626(バイヤー版)/アーノンクール指揮(2003年)
フランツ・バイヤー(Franz Beyer)校訂版。この楽譜は1980年に出版されたが、アーノンクールははやくも翌年、この版による録音をウイーン・フィルと世に問うており、本盤はその後20余年をへた再録である。一般にバイヤー版のほうが、オーケストラの響きが純化され、その分独唱がクリアに前面にでるように思うが、それ以上に指揮者の個性如何というのがこの曲の最大の特色かも知れない。
ぼくは、従来、求心力のあるべーム盤や同じバイヤー版ではバーンスタインの劇的な表現に惹かれてきたが、このアーノンクールの演奏も見事である。これはレクイエムらしいレクイエムであり、モーツアルト演奏の第一人者を自負するアーノンクールの解釈ー流麗さなどのシンフォニックな部分を削ぎ、厳格なレクイエムとしての演奏ーをめざしているように感じる。一聴に値する成果。
【ベートーヴェン】
・交響曲第5番『運命』、第7番/バーンスタイン指揮(1964年、1958年)
【メンデルスゾーン】
・ピアノ三重奏曲第1番、第2番/スターン他(1966年、1979年)
【シューベルト】
・交響曲第9番『グレート』/ヴァント指揮(1995年)
この曲は、凡庸な演奏だと、独活の大木のような感もあり退屈さを伴うが、見事な演奏だと見上げる大樹のごとく堂々とした威容をしめしそこにはビビッドな感動がある。ヴァントの演奏は後者の典型である。個々のフレーズを大事に扱い周到な意味づけを行い、過度な音量は排除しつつも、全体の構えは実に堅牢、かつ大きい。
ブルックナーで幾多の名演を世におくりだしたヴァントは、シューベルトとブルックナーの近似性を感じていたかも知れない。ふと、ブルックナーを聴いているような錯覚におちいる部分もある。ベルリン・フィルの音色には磨かれた輝きがあり素晴らしい演奏である。
ブルックナーで幾多の名演を世におくりだしたヴァントは、シューベルトとブルックナーの近似性を感じていたかも知れない。ふと、ブルックナーを聴いているような錯覚におちいる部分もある。ベルリン・フィルの音色には磨かれた輝きがあり素晴らしい演奏である。
【ショパン】
・ワルツ第1~14番/ルービンシュタイン(1963年)
・ピアノ協奏曲第1番(ピアノ六重奏版)/ルイサダ(ピアノ)(1998年)下記参照
【ブラームス】
・交響曲第1番、第3番/ワルター(1953年)
最近のリマスター技術の飛躍的な進歩によって、古い演奏の良さが再評価される傾向にある。ワルターのブラームスもその一つであり、晩年のコロムビア響とのステレオ録音ブラームス交響曲全集よりも、剛毅、大胆なニューヨーク・フィルとのモノラル演奏Brahms: The Symphoniesを評価する向きも多い。
1番と3番のカップリングだが、録音は3番(1953年12月21,23日)、[2番(12月28日)]、1番(12月30日)と一気呵成に行われた。1958年に心臓発作で倒れる以前、高齢なるもなおエネルギッシュなワルターの元気な姿を彷彿とさせる記録である。
それにしても、なんとも思い切りのよりブラームスであり、リズムの刻み方、メロディの明確なる彫琢、熱気あるオケの操舵とも実に魅力的である。このワルターの成果は、先行録音をよく研究していたカラヤン/ウイーン・フィルの両曲の名演Legendary Decca Recordingsの下敷きになっているように感じた。交互に比較するのも一興。
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%B9-%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC1%E7%95%AA-3%E7%95%AA-%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%A8%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%A2%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF/dp/B00005G89P/ref=cm_cr_dp_asin_lnk
・ヴァイオリン協奏曲/ハイフェッツ&ライナー(1955年)
【チャイコフスキー】
・ヴァイオリン協奏曲/ハイフェッツ&ライナー(1957年)
【ドヴォルザーク】
・交響曲第8番、第9番/セル(1958年、1959年)
・ピアノ五重奏曲/ルイサダ(ピアノ)(1998年)
まったく非本質的な話しながら、このジャケットはとてもかわっている。欧米人はふつうひとまえでは靴を脱がないマナーがあるともいわれるが、外の砂場?(たぶん)で6人の黒装束の男たちがはだしで立っている。腕組みしている者あり、ポケットに手を突っ込んでいる者あり。中央に立つルイサダの口元には微かな薄い笑いがあるように見えるが、これを取り囲むターリヒ四重奏団の面々はなぜか渋面ずらである。あえて、はだしを見せているのは「自然体の構え」を表現したいからかも知れない。
ショパンよりもドヴォルザークにより感じるが、乗りのよいリラックスした雰囲気の演奏である。伸び伸びといかにも楽しそうな邂逅を感じさせる。また、ショパンのピアノ六重奏版の演奏も、いささかパセティックで大袈裟なオケの追走がない分、これはこれでピアノが強調され、すっきりしていて楽しめる。2曲ともに明るい感性がバックにあり、颯爽としている。仏頂面はジャケットだけのパロディかな?
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【ドビュッシー】
・管弦楽作品集/ミュンシュ(1956年、1962年)
全般にテンポがはやく、曖昧さのない歯切れの良いサウンドで、しかもその質量は軽からず重からずの程よさ、ドビュッシーのきらきらと揺らめくような色彩感が幽玄郷にあるごとく示される。こうした至芸はミュンシュの独壇場ともいえるだろう。
【収録情報】は下記のとおり。
・ドビュッシー:交響詩『海』La
Mer(1956年)
・ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲Pr'lude ' l'Apr's-midi d'un faune(1962年)
・ドビュッシー:交響組曲『春』Suite symphonique 'Printemps'(1962年)
・ドビュッシー:夜想曲Nocturnesより(雲Nuages、祭りF'tes)(1962年)
・イベール:交響組曲『寄港地』Ports of Call(1956年)
【ラヴェル】
・管弦楽作品集/ブーレーズ(1970年、1974年)
ラヴェルの音楽は、誇り高き本場フランスのオケで・・・といった先入主も(一部には)あるが、早くから米国などで受容された事実が示すように、本来、現代性、コスモポリタン性に富む。しかし、管弦楽曲に関する限り、超一流のオケであることは必須要件だろう。本盤のニューヨーク・フィルはその点では申し分のない技量である。
また、ラヴェルの魅力は、管と弦の<完全融合>のえもいわれぬ<愉悦感>にあると思うが、ブーレーズは実にブレンダー能力の高いシェフである。音量よりも特有の柔らかなリズムと研ぎ澄まされた絶妙な音質に耳を傾ける1枚だろう。
・ピアノ・ソナタ第2番/ホロヴィッツ(1980年)
・ピアノ協奏曲番3番/ホロヴィッツ&オーマンディ(1978年)
その演奏には背筋にひびくような凄みがある。縦横に拡散し、さんざめくラフマニノフの華麗な音響とふと兆すやるせない哀調をこれほどまでに大きく、深く表現した演奏は稀有だろう。特に第3楽章、ライヴならではの異常なファナティックさは「鬼神、ここに在り」といった風情。
一方、ピアノソナタ第2番はホロヴィッツが伝道師的な役割を果たして、スタンダードにした伝説の曲。はてしなきパッションと強靭な迫力に文字通り圧倒される。
<<その他>>
・カバリエのドニゼッティ、ベッリーニ:アリア集(1965年)
・ジョン・ウィリアムズのアランフェス協奏曲他(1967年、1974年)
・小澤征爾のカルミナ・ブラーナ(1969年)
1969年11月17日、ボストン/シンフォニー・ホールでの録音。小澤征爾、得意の演目であるとともに、本曲での代表的な名演である。約20年後のベルリン・フィルとの成果オルフ:カルミナ・ブラーナもあるが、ボストン盤の潔癖な表現にも独立した価値がある。
一般に、ボストン盤では小澤、若き日の熱情がPRされるが、実は徹底したスコア研究の成果を「楷書」でしめしたような周到な棒さばきで、一部の隙もなく構成される一方、爆発的な迫力も管弦楽の均衡を崩さずに見事に表現している。
カルミナ・ブラーナは、宗教曲ではなく、世俗的な欲望をおおらかに歌ったものだが、ここでの小澤の表現は、むしろ節度をもった、品格ある音楽的なアプローチを感じさせ、この曲の格調の高さを聴衆に訴えているように思う。
・クライバーのニューイヤー・コンサート(抜粋)(1989年)
・ヒルデガルト・フォン・ビンゲン作曲集/セクエンツィアー中世音楽アンサンブル(1994年)
・ローラン・コルシアのラヴェル/ツィガーヌ他(1999年)
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