日曜日, 3月 06, 2022

四季 ~ヴィヴァルディ 注目5点  Vivaldi :Le Quattro Stagioni (The Four Seasons)


 









少しずつ春が近づいてくることを実感するこの季節、散歩をしながら、芽吹いてくる蕾みに目がとまり、思わず耳の奥で響いてくるのがこの曲。ここでは注目盤を5つ選んでみた。ミュンヒンガーは、あまり口の端にあがらなくなったが、イ・ムジチ以前から本曲の良さを知らしめてきた第一人者。いまは、この古典的な典麗さに惹かれる。


イ・ムジチ(ミケルッチ)

ミケルッチの功績 (amazon.co.jp)


アーヨの『四季』がイ・ムジチを世界レーベルに伸し上げた。2代目は難しい。アーヨの天真爛漫にみせて、実は技巧満載の華麗な『四季』、それで十分と思っていたリスナーにミケルッチは、やや筋肉質ですっきりとした造形美でこれを応えた。鷹揚さをもって好みとする向きからは、「やはりアーヨでないとね!」といった批判も囁かれたが、当時アーヨとミケルッチの聴き比べが大きな話題となり、これがさらにイ・ムジチの評価を結果的に高めることとなった。その後、いくどもイ・ムジチは『四季』を再録し、それがいまも聴き継がれるようになったのだから、「創業よりも守勢が難しい」という課題を2代目ミケルッチは見事に克服したことになる。小生は1969 年11月7日ミケルッチの『四季』を東京ライヴで聴いた。聴衆のざわつきにじろりと鋭い目を向けたことを覚えているが、正直、レコードで聴くアーヨとの決定的な違いなどはわからなかった。洗練された印象、厳格な演奏と感じたくらいで、実はイ・ムジチの鍛え抜かれたべースロードはかなり不変のものかも知れないといまは思う次第である。


ビオンディ

新たなヴィヴァルディ像の実在感 (amazon.co.jp)


 ヴィヴァルディのオペラが最近、おおきな話題になっている。多彩な才能の大音楽家として21世紀ヴィヴァルディが復権しつつあるともいえよう。その切っ掛けのひとつをつくったのがファビオ・ビオンディである。日本ではイ・ムジチ合奏団の「四季」ブームが1960年代にあったが、古楽器によるその再評価をなしえたのはビオンディの若き日からの活発な才気とその後の研究にあったからだろう。

流麗で典雅な「四季」が定番であった時代に、ごわごわの手触り感、ゴツゴツとした手による職人芸といった実在感をもって、新たなヴィヴァルディ像を提示したビオンディの演奏は、なによりも面白く多くのスリリングな発見に満ちたものである。
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Europa Galante  にて聴取


ナイジェル・ケネディ

正調とフューチャーが交錯、その意想外のスリリングさが持ち味 (amazon.co.jp)


フェリックス・アーヨ/イ・ムジチ合奏団  ヴィヴァルディ: 協奏曲集 四季  が日本で大きな話題になったのは1960年代。当時ヴィヴァルディのみならずバロック・ブームに火をつけたと言われベストセラーとなった。それから約半世紀をへて、ここまで「四季」の演奏は多様化したのかという典型が本盤。
1990年代、ファビオ・ビオンディ/エウローパ・ガランテは古楽器の手触り感いっぱいに、新鮮な  
ヴィヴァルディ:四季  を描いてみせたが、本盤に比べれば、あくまでも<正統派>に含まれるかも知れない。

この演奏を聴いていると、正調(オリジナルに近い響き)とフューチャー(崩し)が相互に現れ、その意想外のスリリングさが持ち味。後者は原曲を忘れさせるくらい自由で、断片的には全く別の曲を聴いているように感じるだろう。ナイジェル・ケネディは原曲の魅力あるメロディは、前者で最大限生かし、一方彼からみて凡長、退屈と感じる部分は大胆に後者でパラフレーズしているようだ。マッシヴ・アタックのドラマー、デイモン・リースや、トップ・ジャズ・ミュージシャンもメンバーとして参加しているというのだから押して知るべしである。好みはわかれるだろうが、3種類の「四季」を聴き比べてみるのも一興。


ムター

ムター、嫋々たるヴァイオリンの哀愁さをたたえた演奏 (amazon.co.jp)


カラヤンには、1972年の  ヴィヴァルディ:協奏曲集<四季>  があり、またムターにも1999年 ヴィヴァルディ:四季  がある。この録音(1984年)は、ちょうどその中間時点にあり、何種かあるムターとカラヤンの組み合わせの一つだが、なによりウィーン・フィルとの共演であることに話題性があった。

イ・ムジチ合奏団  
ヴィヴァルディ:《四季》《調和の幻想》から  で有名曲の名乗りあげ、ファビオ・ビオンディ  ヴィヴァルディ:四季  で古楽器の新たな解釈で再評価され、さらに、最近のナイジェル・ケネディ  ヴィヴァルディ:新「四季」  にいたって、いまや「なんでもあり」とでもいうべきの演奏の多様性をもつ「四季」。そうした観点からこの録音を聴くと、ある意味でオーケストラによる標準的な演奏という気がする。
カラヤン的な響きのゴージャスさはウィーン・フィルでは控えられ、ムターは線は細いが美しく嫋々たるヴァイオリン本来の哀愁さをたたえ、いまだ元気だったカラヤンは遊び心か、チェンバロの一部を弾くなど、ちょっとエキジビション的な乗りもあるが、全体としては、角ばったところの一切ない、生き生きとした表情をもつ整然たる演奏。これはこれで面白い。

織工Ⅲ: カラヤンとムター Anne-Sophie Mutter (shokkou3.blogspot.com)


ミュンヒンガー

カール・ミュンヒンガー/バロック・レガシー<限定盤> (tower.jp)

名手 カール・ミュンヒンガー&シュトゥットガルト室内管 (amazon.co.jp)

織工Ⅲ: ミュンヒンガー Karl Münchinger, (shokkou3.blogspot.com)


👉 織工Ⅲ: 名盤5点 シリーズ (shokkou3.blogspot.com)


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