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一世を風靡したウィーンの名指揮者エーリッヒ・クライバー(1890ー1956年)はベートーヴェンをこよなく愛し得意としていた。5番&6番のカップリングはいまも歴史的な名盤として記録されている。その子、カルロス・クライバー(1930ー2004年)はベルリン生まれ、ブエノスアイレス育ちで、「親子鷹」ながら父はカルロスが指揮者になることを強く反対したと伝えられる。
カルロスは父の使った総譜を研究し尽くして指揮台に上がったようだが、この5番&7番は、没後約20年後、父もここで名盤を紡いだ同じウィーン・フィルとの宿命の録音(1974、1976年)であり、余人の理解の及ばぬ、父を超克せんとする<格闘技>的な迫力にあふれている。同時期、ベルリン・フィルではその疾走感、音の豊饒さである意味共通するカラヤンの名演もあるが、明解すぎるほどメリハリの利いた解釈とオペラでしばしば聴衆を堪能させた弱音部での蕩けるような表現力ではカラヤンを凌いでいると思う。
父を終生意識しながら、その比較を極端に嫌ったカルロスが、結果的に父と比類したか、あるいは超えたかはリスナーの判断次第だが、この特異な名演が生まれた背景は、エーリッヒとの関係なしには語られないのではないかというのが小生の管見である。
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