ショルティのマーラーの第4番では、キリ・テ・カナワ(ソプラノ)、シカゴ交響楽団を振った1983年のデジタル録音が代表盤と言われるが、これはスタールマン(ソプラノ)、コンセルトヘボウとの1961年の旧盤である。ショルティ、はじめてのマーラー録音とのことだが、その美しい響きに陶然となるような名演である。
コンセルトヘボウは、遡ること20年前の1941年に、ヴィンセント(ソプラノ)で名匠メンゲンベルクと歴史的なライヴ名演を残しているが、マーラーの最良の抒情性が結晶したような4番のメローディアス性がこのオーケストラの音質ととても合っていると感じる。
ショルティという指揮者は、ワーグナーの『指輪』での金字塔のイメージが強すぎダイナミックな演奏の権化のように思われがちだが、その実、こうした絹のような手触りの曲づくりでも抜群の巧さをみせる。
スタールマンの声は端整でけっして出すぎずにオーケストラの音色と溶け込み好印象を与える。最終部の木管楽器との柔らかな掛け合いの部分などは、まだ終わってほしくない、もっと聴いていたいという陶酔感をリスナーに与えずにはおかない。4番の座右の1枚である。
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