日曜日, 8月 29, 2021

カラヤン 帝王の世界戦略 レパートリー分析


 








カラヤンのレパートリーの広さはいわば「世界戦略的」である。足下のドイツ・オーストリアはもとより、北欧でも、ラテン系でも、イギリスでも、ロシアでも、スラヴほかでも・・・その影響力は帝王の名に恥じず、広範におよんだ。

カラヤンの実力 (livedoor.jp)






◆ドイツ・オーストリアの本流

カラヤン 推奨CD  (shokkou3.blogspot.com)

カラヤン Karajan Symphony Edition  (shokkou3.blogspot.com)

カラヤン こうもり 1960年 (shokkou3.blogspot.com)

ニューイヤー・コンサート ベスト10  New Year's Concert  NEUJAHRSKONZERT (shokkou3.blogspot.com)

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◆北欧戦略

フィンランド政府から1966年、最高勲章を授与されたシベリウス!

ベスト・クオリティ盤

カラヤン/ベルリン・フィルによるシベリウスの後期交響曲(4~7番)、ヴァイオリン協奏曲および管弦楽集。録音は主として1960年代後半。再録の多いカラヤンだが、管弦楽集を除き、交響曲は一発勝負、自信の録音だったのだろう。
ヴァイオリン協奏曲は、音色は見事に美しいがやや線が細いといわれたフェラスがピタッとはまっており名盤。管弦楽集はその後、売れ筋の『アダージョ』などに何度も組み込まれた手中の玉。カラヤン嫌いでなければ、CD5枚組+BDオーディオでこの価格はいまだベスト・クオリティ。
<収録情報>
交響曲第4番 1965年2月
交響曲第5番 1965年2月
交響曲第6番 1967年4月
交響曲第7番 1967年9月
ヴァイオリン協奏曲 フェラス(ヴァイオリン) 1964年10月
組曲『ペレアスとメリザンド』1984年2月
交響詩『タピオラ』(1)1964年10月、(2)1984年2月
交響詩『フィンランディア』(1)1964年10月、(2)1984年2月
トゥオネラの白鳥 (1)1965年2月、(2)1984年2月
悲しいワルツ (1)1967年1月、(2)1984年2月

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 カラヤン/フィルハーモニア管の魅力


 1960年フィルハーモニア管弦楽団との録音のシベリウスの2番。その響きの<外延的>なひろがりと<内在的>なものを感じさせる音の奥行き、そこから独特の≪立体感≫がうまれてくる。そうした音楽がある種の威圧感をもって迫ってくる。けっして、よくいわれる表面的で軽いサウンドではない。そう簡単には解析できないし、解析できない以上、たやすく真似もできない。カラヤンの音づくりの典型がこの2番には満ちている。なお、フィルハーモニア管は音質が良くあうシベリウス作品を得意としており、本盤はその典型と思う。

→  
Sibelius: Symphonies Nos. 2, 4, 5, Tapiola, Finlandia  も参照

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「カレリア」序曲賛

カラヤンの厖大な録音のなかで、わずか10分の「カレリア」序曲を取り上げるのは少し勇気がいる。この演奏の突出さをどう表現すべきか。音に色がある。リズムには自然の息吹がある。包み込むような音の奔流には圧倒感よりも名状しがたい心地よさがある。下手な比喩で恐縮だが、ジェット機の高度から、雲海を足下におき、流れゆくあかね雲に見惚れて、その一瞬一瞬をこよなくいとおしく思うような切なさがある。一度、是非聴いてみてください。

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イタリア&フランス戦略

ここはトスカニーニを超える!オペラによる帝王ぶりに特色があるだろう。

カラス(callas)とカラヤン(karajan) (shokkou3.blogspot.com)

イタリア&フランス オペラ ~カラヤン (shokkou3.blogspot.com)

プッチーニ ~カラヤン (shokkou3.blogspot.com)

ヴェルディ ~カラヤン (shokkou3.blogspot.com)

カラヤン ヴェルディ「レクイエム」 (shokkou3.blogspot.com)

オペラ指揮者としてのカラヤン (shokkou3.blogspot.com)


もうひとつ、幻想交響曲はじめメインロードでも存在感

 織工 の選ぶ 幻想交響曲 10選 (fc2.com)

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◆イギリス戦略

ホルストの「惑星」、それをスターダムにのせたのはカラヤンの功績。

カラヤンが取り上げたことでブームをつくった曲は数ある。R.コルサコフ:シェエラザードやスイスの作曲家、オネゲル:交響曲第2番、第3番「典礼風」などもそうだが、ウィーン・フィルとの蜜月時代に録音されたアダン:バレエ「ジゼル」やこの惑星などもその代表例。1961年9月の録音。

ストラヴィンスキー的な激しいリズムの刻み方(火星)、壮麗なメロディアスの魅力(木星)にくわえて「ボリス・ゴドゥノフ」の戴冠式の場を連想させるような眩い管弦楽の饗宴も随所にあり、変化に富んだ曲づくりをここまで見事に、メリハリよく表現しきったカラヤンの実力の面目躍如。このドラマティックで色彩感ある描写はウィーン・フィルの特質を最大限引き出したという意味でも大きな成果だろう。

織工Ⅲ: ホルスト 惑星 (shokkou3.blogspot.com) 

織工Ⅲ: シェエラザード(シェヘラザード)名盤5点  Scheherazade (shokkou3.blogspot.com)

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◆ロシア戦略

チャイコフスキーは手中の玉、上記のR.コルサコフに加えてムソルグスキーも。






チャイコフスキー:弦楽セレナーデ ハ長調作品48

●ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
■録音年月日:1966年10月6日


チャイコフスキー:バレエ《くるみ割り人形》組曲作品71a
●ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
■録音年月日:1966年10月13日、12月26日

■録音場所:イエス・キリスト教会、ダーレム
■録音:ステレオ
■スタッフ:P:オットー・ゲルデス、D:ハンス・ウェーバー、E:ギュンター・ヘルマンス
■原盤所有社:ドイツ・グラモフォン

カラヤン嫌いの人にとってはこのいわゆる「甘美さ」が厭なのだろうが、「甘美」という陳腐な言い方とは異なる音色とメロディづくりをカラヤンは作曲家によって変化させているように感じる。

チャイコフスキーは高校生時代、大枚を叩いてドイツ直輸入のカラヤンの高価な全集を買った。大切にして何度も聴いたけれど、どの曲にも通底し一貫したメランコリイさがある。上記2曲にももちろんある。メランコリイというと「女性的」、いまでは避けるべき用語かもしれないが「女々しく」響くが、そうではない。名状しがたい「憂愁」とでも言うべきか、でもそれは気怠いアンニュイとも違う。「憂国」的な政治的なニュアンスとも異質。時に自己韜晦し、時に雄々しく孤独に耐えようとする「憂愁」かな!?名状しがたい、解析がむずかしい、そういう音をベルリン・フィルから自在に出させるところがカラヤン魔術か。



1955年10月11-12日、56年6月18日の録音。この頃のカラヤンの演奏の切れの良さは、いま聴いてもいささかも古さを感じない。本曲についても後年のベルリン・フィルとの演奏のほうが完成度は高いとは思うけれど、曲想を大胆にイメージさせて、彫琢しすぎぬ、程よいオーケストラ・コントロールの即興的なドライブ感にはぞくぞくとさせるものがある。品位を失わない遊戯感覚(「テュイルリーの庭 - 遊びの後の子供たちの口げんか」)も壮麗な音響空間に佇む感覚(「鶏の足の上に建つ小屋 - バーバ・ヤガー」〜終曲「キエフの大門」)も、カラヤンならではの醍醐味。


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◆スラヴほか全世界に!
圧倒的なレパートリーの広さ、これこそカラヤンの真骨頂。




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