カラヤンには5人のライヴァルがいた。その筆頭はカルロス・クライバー。2人はカール・ベーム、3人目はイーゴリ・マルケヴィッチ、4人目はゲオルグ・ショルティ。そして5人目は??
◆カール・ベーム
☛ブルックナー特集 これが名演 その2
☛きょうはべーム!
◆イーゴリ・マルケヴィッチ
◆ゲオルグ・ショルティ
カラヤンのライヴァル論は甲論乙駁である。フルトヴェングラーやチェリビダッケといった初期の闘争史からのアプローチもあるし、同時代人として、バーンスタイン、ヨゼフ・カイルベルトなどの名も取り沙汰された。しかし、バーンスタインは活動の本拠がアメリカでいわば棲み分け、カイルベルトは田舎に引きこもってしまった。
しかし、カルロス・クライバーは別である。クライバーについては、病弱、神経質、レパートリーの狭さなどのマイナス要素はあるにせよ、オペラを含め、カラヤンのメインの領域での「競合」は強く、かつ、どれも発売されればベスト盤の評価。コンサートでも人気は沸騰。しかも、自分が一時明け渡した頃のウィーン・フィルを振っての名演だから、余計に帝王カラヤンとしては気に障る存在だったことだろう。
演奏スタイルでも「競合」はあり、両者ともに曲によって軽快な疾走感では共通し、ダイナミズムのレンジの広さを大きくとり、大向こうを唸らせる技法も似ている。聴き比べると、ときには、カラヤンが生真面目に聞こえ、クライバーの方が奔放なテンポ取り、蕩けるようなメロディの響かせ方などで凌駕することもある。
なによりも、クライバーの録音は、大家にしては極端に少なく、再録もしないから希少価値性があるが、カラヤンは彼の価値観上の「最高」を求めて、飽くなき録音、録画を繰り返し結果的に、いまとなっては厖大な音源がダンピング対象になっていることも大きな違いだ。
ドイツ・オーストリー系のメインロードではベームも強力なライヴァル。でも、こちらは音楽づくりが違うので、まあ、お互いを立てつつといった風情もある。
☛”流麗”のカラヤン VS ”構築”のベーム
マルケヴィッチも大変な逸材だったが、作曲家かつ現代音楽にも食指といった点で、彼の内にカラヤンと被る分野と独自の分野が共存している。オケと録音に必ずしも恵まれず、プロの世界は別として、一般リスナーからみれば正面からの敵ではなかったかも知れない。
ショルティは『指輪』はじめワーグナー録音で不滅の金字塔を打ち立てたのだから、強烈なライヴァルであったろうし、コツコツと積み上げた交響曲の全曲録音でも拮抗する存在。しかもその質量の凄さは折り紙付き。でも人気では彼我の差は大きく、賢い彼は、慎重に気を配り、あえてカラヤンの邪魔はしなかったようにも見受けられる。
さて、では5人目のライヴァルは?1970年代以降、帝王の名を欲しいままにしたカラヤンにとって、深夜、ひそかに一人LPに針を落とし、その清新溌剌さ、思い切った斬新なアプローチ、そしてなによりも覇気ある録音記録について、ライヴァルであったのは1950年代、60年代の過去のカラヤン自身、その人ではなかったかとふと思う。
☛初期 カラヤンを聴く
☛カラヤン Karajan Symphony Edition
☛100 Best Karajan
0 件のコメント:
コメントを投稿