日曜日, 6月 30, 2013

アーベントロート ブルックナー






















アーベントロートについて過去にこう書いた。

 

このボックス・セットも興味深い。



今回、注目されるこれが出た。

▼以下はHMVからの引用

ブルックナー交響曲第4・5・7・8・9番
ヘルマン・アーベントロート
往年のドイツの巨匠ヘルマン・アーベントロート[1883-1956]は、ブルックナーの弟子であったワーグナー指揮者、フェリックス・モットル[1856-1911]門下だったこともあってか、その経歴の最初期、1905年からブルックナーを積極的に取り上げており、ブルックナー作品の普及に大きな役割を果たしたことでも知られています。
 その芸風は個性的な味わいに富むもので、多彩をきわめた緩急と強弱のコントロールにより、白熱する劇的な効果から憂いに満ちた優しさに至るまで幅広い表現を追求、ブルックナーでもそうした手法で一貫、ユニークな魅力を作品から引き出しています。
 アーベントロートはモノラル時代に活躍した指揮者だったため、当セットに収められた音源もすべてモノラルですが、レーベルによると、これまで不正確なことも多々あったピッチなども修正され、聴きやすいものになっているということです。(HMV)

【収録情報】
アントン・ブルックナー
交響曲第4番変ホ長調 WAB.104

 ライプツィヒ放送交響楽団
 録音:1949年11月

交響曲第5番変ロ長調 WAB.105

 ライプツィヒ放送交響楽団
 録音:1949年5月27日

交響曲第7番ホ長調 WAB.107

 ベルリン放送交響楽団
 録音:1956年2月

交響曲第8番ハ短調 WAB.108

 ライプツィヒ放送交響楽団
 録音:1949年9月

交響曲第9番ニ短調 WAB.109

 ライプツィヒ放送交響楽団
 録音:1951年10月

 ヘルマン・アーベントロート(指揮)

日曜日, 6月 23, 2013

ショスタコーヴィチ 交響曲 を聴く

Shostakovich Complete Symphonies

http://www.amazon.co.jp/Shostakovich-Complete-Symphonies-Philharmonic-Orchestra/dp/B000G6BJS0/ref=sr_1_1?s=music&ie=UTF8&qid=1371974265&sr=1-1&keywords=Shostakovich%E3%80%80Jansons+%EF%BC%95 


古い音楽ファンなので1970年、レニングラード・フィルの初来日で父アルヴィド・ヤンソンスのショスタコーヴィチの5番の熱演も聴いた。その子マリス・ヤンソンスも当年古希(ゲルギエフの10才上)。父の時代は、ムラヴィンスキー全盛期で一糸乱れぬといった厳しい軍律の支配するような演奏が中心だったが、マリス・ヤンソンスの演奏は全体構成もオーケストラの操舵も柔軟であり、響きの深みと美しさをより強調している。練られた演奏であり周到に準備された録音である。

10CDの構成(プログラム・ビルディング)も巧み。CD1で交響曲1番&15番をパッケージし、いわば「始め」と「終わり」を結合して、全体を通観するような仕掛けとなっている。

オーケストラの<競演>といった視点からは、手兵だったバイエルン放送響、オスロ・フィル以外では、1番(ベルリン・フィル)、5番(ウィーン・フィル)、7番(サンクト・ペテルブルグ・フィル)、8番(ピッツバーグ響)、1011番(フィラデルフィア管)、15番(ロンドン・フィル)と多彩、かつ人気・主力の番数での有力オケの起用はヤンソンスの実力を余すところなく示している。

 

(収録情報)

◆交響曲

・第1番へ短調 Op.10 ベルリン・フィル(19946月)

・第2番ロ短調 Op.1410月革命に捧ぐ』※
20046月)

・第3番変ホ長調 Op.20『メーデー』 ※(20051月)

・第4番ハ短調 Op.43 ※ (20042月)

・第5番二短調 Op.47 ウィーン・フィル(19971月)

・第6番ロ短調 Op.54 オスロ・フィル(19911月)

・第7番ハ長調 Op.60『レニングラード』
サンクト・ペテルブルグ・フィル(19884月)

・第8番ハ短調 Op.65 ピッツバーグ交響楽団
20012月)―リハーサル付

・第9番変ホ長調 Op.70 オスロ・フィル(19911月)

・第10番ホ短調 Op.93 フィラデルフィア管弦楽団
19943月)

・第11番ト短調 Op.1031905年』 
フィラデルフィア管弦楽団(199612月)

・第12番ニ短調 Op.1121917年』 ※(20046月)

・第13番変ロ短調 Op.113  
セルゲイ・アレクサーシキン(バス) ※(20051月)

・交響曲第14番ト短調 Op.135『死者の歌』 
ラリッサ・ゴゴレウスカヤ(ソプラノ)、セルゲイ・
アレクサーシキン(バス) ※ (20051011月)

・交響曲第15番イ長調 Op.141 ロンドン・フィル
19974月)
 

◆その他

・映画音楽『馬あぶ』からの組曲 Op.97a(ロマンス、定期市) ロンドン・フィル(19974月)

・ジャズ組曲第1番、第2番~ワルツ第2番、タヒチ・トロット Op.16 フィラデルフィア管弦楽団(199612月)

 

※はバイエルン放送響(&バイエルン放送合唱団)
 
Shostakovich;Symphony No.1
 
 


ショスタコーヴィチ19歳、1924年から1925年にかけてレニングラード音楽院の卒業制作として作曲された前衛的な作品。スリリングな魅力があり、多くの録音があるが小生は、オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団(1959年11月)を評価している。 Shostakovich: Symphony No.1, Cello Concerto No. 1 
 ヤンソンス/ベルリン・フィルの演奏(1994年6月)は、音のウェーブが自然で美しく、躍動するピアノのトリッキィな響きと見事にマッチして素晴らしい作品に仕上がっている。
 
ショスタコーヴィチ:交響曲第15番
 
 
  1971年、ショスタコーヴィッチ最後の交響曲。最後の交響曲と言うと、ベートーヴェン、ブラームスのように「完成度」を示すか、ドボルザーク、マーラーのように「詠嘆的」終結か、ブルックナーように「未完」に終わるか・・・と想像がふくらむが、ショスタコーヴィッチの場合、ウイッティな明るい作品で、本人は一通過点にすぎず、これ以降も作曲意欲があったことだろう。
 Shostakovich: Symphony No.15 / Mussorgsky: Songs and Dances of Death が名演ながら、ヤンソンス(1997年4月)も負けずの巧みな演奏で、実によく考えているなと思う。ロッシーニ、ハイドン、ワーグナーなどからの引用、ストラヴィンスキー的な援用部分は、これと明確にわかるようにちょっと強調して提示している。飽きさせず大いに楽しめる工夫満載の演奏。
 
(以前の記述)

 
 

日曜日, 6月 16, 2013

クレンペラーのブルックナー

Otto Klemperer Conducts Beethoven,Brahms,Bruckner
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B005DCMVOI/ref=cm_cr_thx_view

http://shokkou3.blogspot.jp/2012/01/blog-post_21.html

オットー・クレンペラー
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%AA%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%A9%E3%83%BC-Anton-Bruckner/dp/B000OZ6YQ0/ref=cm_cr-mr-title

http://shokkou3.blogspot.jp/2012/01/blog-post.html

ブルックナー:交響曲第5番
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%8A%E3%83%BC-%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC5%E7%95%AA-%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%A9%E3%83%BC-%E3%82%AA%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BC/dp/B000CSUWQW/ref=sr_1_69?s=music&ie=UTF8&qid=1371395182&sr=1-69&keywords=klemperer+bruckner

ブルックナー:交響曲第6番 ハース版 【HQCD】
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%8A%E3%83%BC-%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC6%E7%95%AA-%E3%80%90HQCD%E3%80%91-%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%A9%E3%83%BC-%E3%82%AA%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BC/dp/B002WQ7HRE/ref=sr_1_44?s=music&ie=UTF8&qid=1371400655&sr=1-44&keywords=klemperer+bruckner

Symphony No.7
http://www.amazon.co.jp/Symphony-No-7-A-Bruckner/dp/B004DIL21Q/ref=sr_1_5?s=music&ie=UTF8&qid=1371401483&sr=1-5&keywords=klemperer+%EF%BD%82%EF%BD%92%EF%BD%95%EF%BD%83%EF%BD%8B%EF%BD%8E%EF%BD%85%EF%BD%92%E3%80%80%EF%BC%97

http://shokkou3.blogspot.jp/2012/01/blog-post_20.html

ブルックナー8
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%8A%E3%83%BC8-Anton-Bruckner/dp/B0012DACAW/ref=pd_sxp_grid_i_1_0

http://shokkou3.blogspot.jp/2010/12/blog-post_19.html

http://shokkou.blog53.fc2.com/blog-entry-24.html

http://shokkou.blog53.fc2.com/blog-entry-25.html

http://freizeit-jiyuu.blogspot.jp/2006/08/blog-post_09.html



 

ブロムシュテットのブルックナー

















へルベルト ブロムシュテットは現代最高のブルックナー指揮者であろう。最近、ゲヴァントハウスと以下のブルックナーの交響曲全集をリリースしたが、現役指揮者中随一の成果である。
 
<収録情報>

ブルックナー:

・交響曲第1番ハ短調 WAB.101
 [リンツ稿/ノヴァーク版]

・交響曲第2番ハ短調 WAB.102
[1872年稿、キャラガン校訂版]

・交響曲第3番ニ短調 WAB.103 [1873年第1稿]

・交響曲第4番変ホ長調 WAB.104 [ハース版]

・交響曲第5番変ロ長調 WAB.105 [ノヴァーク版]

・交響曲第6番イ長調 WAB.106 [ノヴァーク版]

・交響曲第7番ホ長調 WAB.107 [ハース版]

・交響曲第8番ハ短調 WAB.108 [ハース版]

・交響曲第9番ハ短調 WAB.109 [コールス校訂版]

 
 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

 ヘルベルト・ブロムシュテット(指揮)
 

 録音時期:20052012

 録音場所:ライプツィヒ、ゲヴァントハウス

 録音方式:ステレオ(デジタル/ライヴ)

 SACD Hybrid CD STEREO/ SACD STEREO/ SACD SURROUND

 
スウェーデン生まれながら若き日から才能を評価され、イーゴル・マルケヴィッチやレナード バーンスタインや泰斗にも師事。20世紀大指揮者の方法論を受け継ぐ。

1954 2 ストックホルム フィルでデビューし、まずは地元スカンジナビアにおいて、 オスロ フィル、スウェーデン放送響などで地歩を固め、その後、米国サンフランシスコ交響楽団、ハンブルクの NDR 交響楽団ほか欧米の有名オーケストラの音楽監督を務める一方、エジンバラ、ザルツブルグ、ミュンヘン、ルツェルンを含めヨーロッパの主要音楽祭で活躍。1998 年から 2005 ゲヴァントハウスで楽長(その後名誉指揮者)を努め、この全集をその成果として世に問うた。

近時は、上記ゲヴァントハウス管弦楽団ほかとの関係に加えて、従来から親しいN響、バンベルク響、バイエルン放送響、ロイヤル コンセルトヘボウ管弦楽団、パリ管弦楽団、イスラエル フィル、モントリオール、ボストン、シカゴ交響楽団、クリーヴランド管弦楽団、ピッツバーグ交響楽団、ニューヨーク・フィル、ロサンゼルス・フィルに加えて、ベルリン・フィル、2011 年からはウィーン フィルとも蜜月の関係にある。



(以下はHMV レビューからの引用)

2005年録音の第8番に始まり、2012年の第1番で完成したブロムシュテット指揮ゲヴァントハウス管弦楽団による全集は、実際のコンサートでの演奏をライヴ録音したもので、曲により多少のムラはあるものの、ライヴという条件を考慮すると、全体の水準は十分に高いレベルに達していると考えられます。
 肝心の演奏は、近年のブロムシュテットの好調ぶりを伝える見事なもので、どの作品でも細部まで丁寧に誠実にリハーサルしたと思われる着実なアプローチを土台に、作品それぞれの個性がきちんと伝わってくるのが嬉しいところです。


【ゲヴァントハウス管との強い絆】
1998年、クルト・マズアの後任として音楽監督に就任し、2005年の任期満了までその厳しいトレーニングで機能性と音色にさらに磨きをかけ、引き締まった力強いサウンドにゲヴァントハウス管を鍛えなおしたブロムシュテット。コンヴィチュニー時代の再来を思わせる第2ヴァイオリン右側の対向配置も効果的で、シャイーの音楽監督就任後は、名誉指揮者として同オケに深く関わっています。

【ブロムシュテットのブルックナー録音】
ブロムシュテットはかつてシュターツカペレ・ドレスデンを指揮して第4(1981/DENON)と第7(1980/DENON)をレコーディングしており、それらは現在にいたるまで息長い人気を保持しています。その後、サンフランシスコ響と録音した第6(1990/DECCA)、第4(1993/DECCA)、ゲヴァントハウス管と録音した第9(1995/DECCA)、第3(1998/QUERSTAND)では、よりパワフルで構築的な魅力が示されるようになり、ブロムシュテットのブルックナー観が色濃く投影された緻密な演奏に仕上がっていたことが思い出されます。

 その後、7年を経て開始された今回のシリーズでは、ブロムシュテットの円熟の境地と、ドイツ経済の繁栄と共に実力もレベル・アップしたかのようなゲヴァントハウス管弦楽団の充実した演奏を楽しむことができます。(HMV)
 
 
(参考) 小生の愛聴盤です。
 
ブルックナー:交響曲第4番<ロマンティック>

ブロムシュテット流の「確信」の演奏 (amazon.co.jp)


ブルックナー:交響曲第7番

ブロムシュテット 7番必中の名盤 (amazon.co.jp)

日曜日, 6月 02, 2013

幻想交響曲

ベルリオーズ:幻想交響曲、他

http://www.amazon.co.jp/%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%BA-%E5%B9%BB%E6%83%B3%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E3%80%81%E4%BB%96-%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%A5%E3%82%A4%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%82%B9-%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%AC/dp/B003VPMEJQ/ref=sr_1_4?s=music&ie=UTF8&qid=1370157295&sr=1-4&keywords=%EF%BD%83%EF%BD%8C%EF%BD%95%EF%BD%99%EF%BD%94%EF%BD%85%EF%BD%8E%EF%BD%93%E3%80%80Berlioz


 ジャケットとともに小生のお気に入りである。195811月の古い音源ながら、いまだにその価値がいささかも減じない名演。第2、3楽章のメロディの美しさには思わず絶句するが、音楽が一瞬たりとも淀むことなく透明感をもって清々と流れていく快感がたまらない。また、管弦楽の各パートのバランスが絶妙で、(第4楽章の冒頭のティンパニーなど一部を除き)特定の楽器が過度に自己を主張することがなく、全体の「音束」が均一に整序されている。

 多くの「幻想」の名盤があるが、腺病質的な部分が抑制され仄かな明るい基調に支配されていること、純音楽的に磨かれた美しさこそが本盤の最大の特色だろう。一方、リズムは可変的に刻まれ弛みがないようにきっちりとコントロールされており、「こけおどし」的大音量などはなくとも内燃的な迫力は十分。知的で抜群のセンスのよさでは他の追随をいまも許していない。

マルケヴィッチ指揮RIAS交響楽団=ベルリン放送交響楽団(旧西) ベルリオーズ:幻想交響曲

マルケヴィッチ指揮RIAS交響楽団=ベルリン放送交響楽団(旧西) ベルリオーズ:幻想交響曲

http://www.amazon.co.jp/%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%B1%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%83%E3%83%81%E6%8C%87%E6%8F%AERIAS%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%A5%BD%E5%9B%A3-%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%AA%E3%83%B3%E6%94%BE%E9%80%81%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%A5%BD%E5%9B%A3-%E6%97%A7%E8%A5%BF-%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%BA-%E5%B9%BB%E6%83%B3%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2/dp/B0038J408S/ref=sr_1_1?s=music&ie=UTF8&qid=1370175363&sr=1-1&keywords=%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%B1%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%83%E3%83%81%E3%80%80%E5%B9%BB%E6%83%B3

ベルリオーズ:幻想交響曲

http://www.amazon.co.jp/%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%BA-%E5%B9%BB%E6%83%B3%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2-%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%B1%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%83%E3%83%81-%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%82%B4%E3%83%AB/dp/B000GALEG8/ref=cm_cr-mr-title


   半世紀近くも前だが上野の東京文化会館のブースで、本演奏をリクエストし一人聴きいり、はじめて「幻想」という曲の凄さを知った気がした。195311月、残響豊かなベルリン・イエスキリスト教会でのモノラル録音。当時としては音の解析がクリアで、いま聴いても変わらぬ名演としての一種の<威容>がある。マルケヴィッチは作曲家としても、オーケストラ・ビルダーとしても高い能力をもっていたようだが、鬼才ベルリオーズの斬新な作風、特異の感受性をベルリン・フィルから見事に引き出しここに横溢させているように思う。 

 激しいパッショネイトな後半の「断頭台への行進」や「サバトの夜の夢」は誰が振っても相応な感動があるはずだが、マルケヴィッチの鋭い解析力がはっと実感できるのは、むしろ前半の「夢、情熱」や「野の風景」の緩やかな微音部分かも知れない。1度だけ実演に接したこともあるが、痩躯な横顔と長い指揮棒がマッチし指揮棒の先の震えるような動きが印象に残っている。録音のよい「幻想」のディスクはあまたあるが、鋭き解釈において後世の指揮者にこのマルケヴィッチ盤(ラムルー響の新盤とも)のあたえた影響は蓋し大きかったろう。誉れ高き、先駆的な名盤である。

 なお、同コンビによる代表的な成果としてハイドン:オラトリオ「天地創造」も推奨。


ベルリオーズ:幻想交響曲

http://www.amazon.co.jp/%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%BA-%E5%B9%BB%E6%83%B3%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2-%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%B1%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%83%E3%83%81-%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%82%B4%E3%83%AB/dp/B00005FIEW/ref=sr_1_8?s=music&ie=UTF8&qid=1370175363&sr=1-8&keywords=%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%B1%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%83%E3%83%81%E3%80%80%E5%B9%BB%E6%83%B3
 
 マルケヴィッチは以上3種類ともに聴いた。RIAS交響楽団=ベルリン放送交響楽団(旧西) ベルリオーズ:幻想交響曲 1952918日ライヴ盤は、咳が耳につき音もやせ気味だが、ライヴでも解釈、演奏スタイルが一切ぶれていないことがわかる。もともと、早熟な音楽家かつ鋭敏な作曲家でもあったわけだから、そう出来に差ができるはずはないのかも知れないが、1962年にラムルー管弦楽団を振ったステレオ盤までの3種はいずれも感覚鋭い名演である。


ベルリオーズ:幻想交響曲

内容紹介(引用)

1967年、フランス文化相アンドレ・マルローの提唱により創設されたパリ管弦楽団は「諸外国にパリおよびフランスの音楽的威信を輝かすこと」を使命とされた、まさにフランスが世界に誇ることを目指したオーケストラでした。その初代音楽監督に選ばれたのが、70歳を越えたフランスを代表する指揮者、シャルル・ミュンシュ。この『幻想交響曲』はミュンシュが最も得意とした曲のひとつであり、パリ管弦楽団の記念すべき最初の演奏会での演目。熱のこもった力溢れる名演です。110年の歴史を持つEMIレーベルの中でも名盤の誉れ高い1作で、100枚の名盤が集結するこのシリーズの冒頭を飾るに相応しい20世紀の記録といえるでしょう。
●レコード芸術推薦盤。68年度レコード・アカデミー賞受賞。
●録音:1967-10


 

 当時、アンドレ・マルローの威令はゆきとどき、小生もご多聞にもれず流行していた彼の小説を何冊か読んだ(いまはほとんど内容を忘れているが、人の顔の抉るような描写のうまさに感心したことだけは覚えている)。
 マルロー閣下主導、鳴り物入りのパリ管だったが、結果的にミュンシュは無理がたたり命を縮めてしまったような気がする。1967年の「幻想」はまさにパリ管への悲しき置き土産となった。

 クリュイタンスとは肌合いのことなる演奏で、けっして「美しく」はない。むしろ、ベルリオーズのもつおどろおどろしさも垣間見えるし、腺病質的な危うさもときに顔をだす。「幻想」のもつ複雑な心理描写をトータルとしてもっとも的確に表現しているように思う。
 ボストン時代から手中の演目だが、ミュンシュは録音にあたって吟味し直し考えぬき、表現しつくしてやろうとの気概のようなものを感じる。

 なお、パリ管への管弦楽の統制は緩めで、パート演奏がややデフォルメされる傾向もある。ここを次に音楽監督についたカラヤンは気にいらず鍛えなおしたエピソードは有名。
 
   ベルリオーズ:幻想交響曲
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%BA-%E5%B9%BB%E6%83%B3%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2-%E3%83%87%E3%83%A5%E3%83%88%E3%83%AF-%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AB%E3%83%AB/dp/B000CBNYMS/ref=cm_lmf_tit_6

 19845月、モントリオールでの録音。シャルル・デュトワは一時期、アルゲリッチと結婚し一女をもうけていたと思うが、その情報バイアスが強すぎてか、小生にはどうも艶福家のイメージが消えない。それは裏をかえせば、酸いも甘いも心得た大人の風貌ともいえ、この「幻想」は現実を生き抜く恋多き若者のパッションをストレートに表現しているような印象がある。思い切りのよいドライブの利いた好演である。


ベルリオーズ:幻想交響曲

ベルリオーズ:幻想交響曲[1945年録音]~モントゥー&サンフランシスコ響名演集

内容(「CDジャーナル」データベースより引用)

35年に音楽監督に就任以来、SFSOを全米のメジャーに引き上げたモントゥーの、もっとも充実していた時期の名演。特に「幻想」は2度目のもので、後年の演奏とは違い、メリハリのきいた、実に気迫のこもった演奏だ。ほかも94年のボックスで初めて世に出たという録音。
 
 
 ジャン・ルスロ (), 横山 一雄 (翻訳)『小説ベルリオーズ』 (1975年 音楽之友社)を読んでいると「幻想」での悲恋はその後、紆余曲折をえて実り、ベルリオーズは憧れのハリエット・スミスソンと結ばれる。しかし、実はここからが新たな男女の縺れのはじまりであり、 ベルリオーズは社会的な名声をえる一方でスミスソン、そして若い愛人との婚姻、恋愛関係では一生悩むことになる。つまり、「幻想」はその後現実に雲散霧消したのではなく終生、ベルリオーズにメフィストのように纏わりつくのである。 彼は死の床で第5章を反芻していたかも知れない。

 さて、ピエール・モントゥの戦前・戦中の記録も有名である。音はさすがに割れていて聴きづらいが、充実した演奏が偲ばれる。


ベルリオーズ:幻想交響曲

最後に「幻想」の先駆性にはいつも驚く。ベートーヴェンと一部同時代に生きていたのだが、第2楽章ではベートーヴェン初期交響曲を、第3楽章は6番を、第4楽章は7番の強烈なリズム感を連想させる。その一方、循環動機、先進的な管弦楽法(彼は近代作曲家として初の理論書も書いている)と大胆なオーケストラの起用では、パガニーニ、リスト、ワーグナーらに与えた影響は絶大である。

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Symphonie Fantastique:幻想交響曲
 
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