土曜日, 3月 31, 2007

シューリヒト ブルックナー3番

 意外な想い。この演奏が悪かろうはずはない!。シューリヒト/ウイーンPOで録音は12/1965, Great Hall, Musikverein, Vienna, Austria [Studio] でありEMIの音はほかのシューリヒト盤とくらべても良好なはず・・・?!。
 だが、一言でいえばなにか物足りない演奏。シューリヒトはいつもの彼であり、3番に限ってけっして不出来ということはない。というよりも期待が大きすぎて勝手に落差を感じているだけかも知れないが、自分のもっている3番の分裂症的な心理のボラティリティがこの演奏では少なすぎる気がする。
 何度も聴いているとこの曲が当初、ウイーンの「目利き」の連中に受け入れられなかったことも理解できるような気がする。古典的な作曲ルールをけっして踏み外さないブラームスを堪能していたウイーン子が、はじめてライヴで聴く恐ろしく長くとても「異質の音楽」がこの3番ではなかったかなと思う。
 アーノンクールやシノーポリは「やり手」でこの曲のポレミークさ(論争性)を結構うまく使って、当時においてはおそらく感じたであろうブルックナーの「不思議な変調」(現代人のブルックナー・ファンにとっては実は堪らぬ魅力の源泉だが・・・)を強調しているような気がするが、シューリヒトは平常どおり奇を衒わず淡々とこなしているように感じる。3番は良くも悪しくもブルックナーの「地金」が強烈にでている曲であり、そこをどう表現するかどうかのアクセントの違いかも知れないが、ここはアクの強い演奏のほうに惹かれる。そうしたリスナーはシューリヒト・ファンからはお叱りを受けそうだが・・・。 

金曜日, 3月 30, 2007

アーベントロート ブルックナー4番

 最近、聴いているのはこの「頑固そうなおっさん」ヘルマン・アーベントロート(Hermann Abentroth:1883ー1956年) のブルックナー4番。ライプツイヒ放送交響楽団の演奏。録音は1949年11月16日の同地コングレスハーレ。これがなかなか良い。音楽の仕切というか所作というかがはっきりとしており、ちょっと我が儘な大指揮者が「さあ、やるぞ!」といった壇上の気迫に、弦は力強く反応し、金管も存分に咆哮するなど交響楽団が一所懸命に頑張っている感じ・・・。
 ライナーノート(大木正純氏)によれば、「人徳すこぶる豊かにして謙虚、しかも思いやりのある温かい心の持主」とのことで、1956年5月29日に逝去したときには何千人もの市民がお墓まで見送ったとのことだから、一見強面そうな外見や演奏から受ける印象とはすこぶる異なる。
 ライプツイヒでは1934年以降ワルターの後任、その後東西ドイツの分断で東独で活動することになるのでその演奏が知られる機会は乏しかったが、曖昧さのない自信に満ちたブルックナー像を構築しており、これ1曲では即断はできないけれど、ほぼ同時代のシューリヒト(1880ー1967年)、クレンペラー(1885ー1973年)、フルトヴェングラー(1886ー1954年)、クナッパーツブッシュ(1888ー1965年)らのなかにあっても独自の地歩を築いていた名匠と言えるのかも知れない。悪い癖で、例によってほかの番も聴いてみたい欲求にかられている。

日曜日, 3月 25, 2007

ヴァント ブルックナー4番

 1976年12月10日ケルンで地元のケルン放送交響楽団を振っての録音。この当時、日本でヴァントのブルックナーに注目する人はほとんどいなかった。また、当時、ブルックナー自身、広く聴かれる作曲家ではなかった。ヴァントは1968年に来日し読売日本交響楽団を指揮しているから、76年の時点で日本では、けっして無名ということはなかったろうが、よもや晩年、その演奏がかくも熱狂的に迎えられることを予測した向きは多くはなかったはずである。
 CD附属のライナー・ノートによればケルン放送交響楽団は1947年に創設、ケルンと縁の深いヴァントは当初からこのオケと演奏をともにしてきた。録音時点でヴァントは既に64才になっており、オケも放送響として30年近い実績を有していた。その意味では相性の良いコンビによる得意の演目の録音であったといえよう。
 感情を抑制しつつもその実、熱っぽく、一方でしっかりとツボを押さえた抑揚のきいた佳演である。良く「練られた演奏」とでもいうべきだろう。ヴァントはその後、晩年のシューリヒトがそうであったように年とともに著名度をあげ、大家と目されるようになる。ベルリン・フィルやミュンへン・フィルなどとも同番の名演を残しており、それとの比較では本演奏はいわゆる「旧盤」といえようが、その解釈は一定でどのオケを振ってもそうブレは感じない。じっくりと作品に沈潜して、内在する音楽を見事に引き出すことに関しては、プロとしての安定性ある練達の技能者である。これは4番に限らないが、いま聴き返して、ブルックナーの荘厳な世界を見事に表現している技倆に改めて驚き、また敬慕する気持ちを抱く。

土曜日, 3月 17, 2007

トスカニーニ BOXセット


トスカニーニのBOXセットを本日中古で購入。早速、ベートーヴェンから聴いている。全体は以下のとおり。

Ludwig van Beethoven (1770 - 1827)
Symphony no 1 in C major, Op. 21
• 演奏者 : • 指揮者 : Toscanini, Arturo• 楽団 : NBC Symphony Orchestra
録音場所: 1939年 ニューヨーク

Ludwig van Beethoven (1770 - 1827)
Symphony no 2 in D major, Op. 36
• 演奏者 : • 指揮者 : Toscanini, Arturo• 楽団 : NBC Symphony Orchestra
録音場所: ,1939年 ニューヨーク

Ludwig van Beethoven (1770 - 1827)
Symphony no 3 in E flat major, Op. 55 "Eroica"
• 演奏者 : • 指揮者 : Toscanini, Arturo• 楽団 : NBC Symphony Orchestra
録音場所: 1939年10月28日 ニューヨーク

Ludwig van Beethoven (1770 - 1827)
Symphony no 5 in C minor, Op. 67
• 演奏者 : • 指揮者 : Toscanini, Arturo• 楽団 : NBC Symphony Orchestra
録音場所: 1939年11月11日 ニューヨーク

Ludwig van Beethoven (1770 - 1827)
Leonore Overture no 3 in C major, Op. 72a
• 演奏者 : • 指揮者 : Toscanini, Arturo• 楽団 : NBC Symphony Orchestra
録音場所: 1939年 ニューヨーク

Giuseppe Martucci (1856 - 1909)
Symphony no 1 in D minor, Op. 75
• 演奏者 : • 指揮者 : Toscanini, Arturo• 楽団 : NBC Symphony Orchestra
作曲/編集場所: 1888-1895, Italy
録音場所: 1938年11月26日 ライヴ ニューヨーク

Giuseppe Martucci (1856 - 1909)
Noveletta, Op. 82 no 2
• 演奏者 : • 指揮者 : Toscanini, Arturo• 楽団 : NBC Symphony Orchestra
作曲/編集場所: 1905, Italy
録音場所: 同上

Ottorino Respighi (1879 - 1936)
Pines of Rome
• 演奏者 : • 指揮者 : Toscanini, Arturo• 楽団 : New York Philharmonic
作曲/編集場所: 1923-1924, Rome, Italy
録音場所: 1945年1月13日 ライヴ ニューヨーク

Jean Sibelius (1865 - 1957)
Symphony no 2 in D major, Op. 43
• 演奏者 : • 指揮者 : Toscanini, Arturo• 楽団 : New York Philharmonic
作曲/編集場所: 1901-1902, Finland
録音場所: 1938年6月10日 ライヴ ロンドン

Paul Dukas (1865 - 1935)
Ariane et Barbe-bleue: Suite
• 演奏者 : • 指揮者 : Toscanini, Arturo• 楽団 : NBC Symphony Orchestra, NBC Symphony Chorus
作曲/編集場所: 1899-1906, France
録音場所: 1947年3月2日 ニューヨーク

Giuseppe Verdi (1813 - 1901)
Requiem Mass
• 演奏者 : Milanov, Zinka (Soprano), Castagna, Bruna (Mezzo Soprano), Bjorling, Jussi (Tenor), Moscona, Nicola (Bass)• 指揮者 : Toscanini, Arturo• 楽団 : NBC Symphony Orchestra, Westminster Choir
作曲/編集場所: 1874, Italy
録音場所: 1940年11月23日 ニューヨーク

Giuseppe Verdi (1813 - 1901)
Quattro pezzi sacri: Te Deum
• 演奏者 : Milanov, Zinka (Soprano), Castagna, Bruna (Mezzo Soprano), Bjorling, Jussi (Tenor), Moscona, Nicola (Bass)• 指揮者 : Toscanini, Arturo• 楽団 : NBC Symphony Orchestra, Westminster Choir
作曲/編集場所: 1895-1896, Italy
録音場所: 同上

Johannes Brahms (1833 - 1897)
Symphony no 1 in C minor, Op. 68
• 演奏者 : ・ 指揮者 : Toscanini, Arturo• 楽団 : NBC Symphony Orchestra
録音場所: 1937年12月25日 ライヴ ニューヨーク

Johannes Brahms (1833 - 1897)
Symphony no 2 in D major, Op. 73
• 演奏者 : • 指揮者 : Toscanini, Arturo• 楽団 : BBC Symphony Orchestra
録音場所: 1938年6月10日 ライヴ ニューヨーク

Johannes Brahms (1833 - 1897)
Concerto for Piano no 2 in B flat major, Op. 83
• 演奏者 : Horowitz, Vladimir (Piano)• 指揮者 : Toscanini, Arturo• 楽団 : NBC Symphony Orchestra
録音場所: 1940年5月9日 ライヴ ニューヨーク

Johannes Brahms (1833 - 1897)
Tragic Overture, Op. 81
• 演奏者 : Horowitz, Vladimir (Piano)• 指揮者 : Toscanini, Arturo• 楽団 : BBC Symphony Orchestra
録音場所: 1937年10月25日 ロンドン

Modest Mussorgsky (1839 - 1881)
Pictures at an exhibition
• 演奏者 : Horowitz, Vladimir (Piano)• 指揮者 : Toscanini, Arturo• 楽団 : NBC Symphony Orchestra
録音場所: 1938年1月29日 (ニューヨーク)

Peter Ilyich Tchaikovsky (1840 - 1893)
Symphony no 6 in B minor, Op. 74 "Pathetique"
• 演奏者 : • 指揮者 : Toscanini, Arturo• 楽団 : NBC Symphony Orchestra
録音場所: 1947年2月17日 (ニューヨーク)

Cesar Franck (1822 - 1890)
Symphony in D minor, M 48
• 演奏者 :・ 指揮者 : Toscanini, Arturo• 楽団 : NBC Symphony Orchestra
録音場所: 1946年3月24日 (ニューヨーク)

Sir Edward Elgar (1857 - 1934)
Variations on an Original Theme, Op. 36 "Enigma"
• 演奏者 : • 指揮者 : Toscanini, Arturo• 楽団 : BBC Symphony Orchestra
作曲/編集場所: 1898-1899, England
録音場所: 1935年6月3日 ライヴ ロンドン

日曜日, 3月 11, 2007

セル シベリウス2番

  いまから約37年前に東京でおこなわれたセル/クリーヴランド管弦楽団によるライヴ録音のCDである。この日、このコンサートを東京文化会館で聴いていた。その時の感動が正確に甦ってくる。セルがこの時に重篤な病気であったことはコンサート会場では知るよしもなかったし、70年大阪万博の記念コンサートが東京でも目白押しで、多くの注目は同時期に来日していたカラヤン/ベルリン・フィルに寄せられていた。セルはもちろん「著名中の著名」な指揮者ではあったが、それでもあまりに多くの巨匠の来日ラッシュのなか正直地味な印象はぬぐえなかった。  しかしその「魂魄の演奏」は、はじめての日本でのライヴで、私ならずとも聴衆の驚きは大きかった。セル/クリーヴランド管弦楽団の演奏は「冷たい」とか「クールな精密機械」といった評論家のイメージが強かったが、実際の演奏はそれとはまったく異質な熱気あふれるものであり、オケから紡ぎだされる音楽は「血のかよった暖かく表情豊かな音色ながら完全なアンサンブルはけっして乱れない」といったものだった。前半の「オベロン」序曲、モーツアルトの40番も素晴らしいものだったが、後半のシベリウスの2番は文字通り白熱の名演だった。当時、シベリウスはいまほど演奏される機会がなく、このプログラム・ビルディングでもクリーヴランド・サウンドに合う曲を選んだのかなと感じたが、のちにセルがこの曲をもっとも得意としていたことを知り十八番で勝負といった演目であったのだろう。   織工Ⅱでも書いたが、ハンガリアン・ファミリーのなかでも若き日から彗星のごとく登場したセルの晩年の集大成をこの日聴いたことを事後的に知ることになる。忘れえぬ思い出である。