日曜日, 3月 25, 2007

ヴァント ブルックナー4番

 1976年12月10日ケルンで地元のケルン放送交響楽団を振っての録音。この当時、日本でヴァントのブルックナーに注目する人はほとんどいなかった。また、当時、ブルックナー自身、広く聴かれる作曲家ではなかった。ヴァントは1968年に来日し読売日本交響楽団を指揮しているから、76年の時点で日本では、けっして無名ということはなかったろうが、よもや晩年、その演奏がかくも熱狂的に迎えられることを予測した向きは多くはなかったはずである。
 CD附属のライナー・ノートによればケルン放送交響楽団は1947年に創設、ケルンと縁の深いヴァントは当初からこのオケと演奏をともにしてきた。録音時点でヴァントは既に64才になっており、オケも放送響として30年近い実績を有していた。その意味では相性の良いコンビによる得意の演目の録音であったといえよう。
 感情を抑制しつつもその実、熱っぽく、一方でしっかりとツボを押さえた抑揚のきいた佳演である。良く「練られた演奏」とでもいうべきだろう。ヴァントはその後、晩年のシューリヒトがそうであったように年とともに著名度をあげ、大家と目されるようになる。ベルリン・フィルやミュンへン・フィルなどとも同番の名演を残しており、それとの比較では本演奏はいわゆる「旧盤」といえようが、その解釈は一定でどのオケを振ってもそうブレは感じない。じっくりと作品に沈潜して、内在する音楽を見事に引き出すことに関しては、プロとしての安定性ある練達の技能者である。これは4番に限らないが、いま聴き返して、ブルックナーの荘厳な世界を見事に表現している技倆に改めて驚き、また敬慕する気持ちを抱く。

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