月曜日, 1月 31, 2022

カルミナ・ブラーナ 名盤5点  Carmina Burana


 








小澤征爾

節度をもった、品格あるアプローチ (amazon.co.jp)

1969年11月17日、ボストン/シンフォニー・ホールでの録音。小澤征爾、得意の演目であるとともに、本曲での代表的な名演である。約20年後のベルリン・フィルとの成果もあるが、ボストン盤の潔癖な表現にも独立した価値がある。
一般に、ボストン盤では小澤、若き日の熱情がPRされるが、実は徹底したスコア研究の成果を「楷書」でしめしたような周到な棒さばきで、一部の隙もなく構成される一方、爆発的な迫力も管弦楽の均衡を崩さずに見事に表現している。
 カルミナ・ブラーナは、宗教曲ではなく、世俗的な欲望をおおらかに歌ったものだが、ここでの小澤の表現は、むしろ節度をもった、品格ある音楽的なアプローチを感じさせ、この曲の格調の高さを聴衆に訴えているように思う。


オーマンディ

オーマンディ・トーンの美意識 (amazon.co.jp)

ヨッフム盤(1952年、1967年  オルフ:カルミナ・ブラーナ  )が有名だが、オーマンディの本盤も見事な演奏。どこか懐かしく郷愁をそそられるメロディ、切れがよく躍動的なリズム、あたかも掌をきちんと重ねるような合唱と合奏の隙間なき一体感、そして世俗的な言霊がもつ原初的なエネルギー、それらが統一感をもって表現されている。1960年の録音とは思えない解像度の録音。爆発的なパワー、激情型の演奏が好みだと大人しい演奏と思われるかも知れない。ヨッフム盤にくらべると合唱がやや後景に引いて聴こえるが、この生き生きとした表情付けと絶妙なるバランス感覚こそがオーマンディ・トーンの美意識なのだろう。
➡  
Eugene Ormandy Conducts 20th Century Classics  にて聴取


ティ-レマン

ティーレマン、恐れ入り (amazon.co.jp)

「カルミナ・ブラーナ」は世俗的なエネルギー、欲望を開放するような力強さが身上。この曲を世に広く知らしめたヨッフム盤 オルフ:カルミナ・ブラーナ (1967年)が有名だが、ティーレマンは、20年余をへた1998年にヨッフムと同じベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団&合唱団を振って大きな話題になったもの。ヨッフム盤での独唱は、ヤノヴィッツ、シュトルツェ、F.ディースカウと当時の最強のメンバーを結集したが、本盤では、クリスティアーネ・エルツェ(ソプラノ)、デイヴィッド・キューブラー(テノール)、サイモン・キーンリーサイド(バリトン)という手堅い布陣。
 ティーレマンは、当時まだ39才。ベルリン生まれでドイツ楽壇の期待を一身に背負ったキャリア形成の途上ながら、ぶ厚い合唱をビシッと統制し、見事な構成力を示している。本曲は演奏会式オペラのような特色があるが、ドイツオペラを得意とするティーレマンには相性がよいのだろう。終曲O Fortuna (おお、運命の女神よ)を聴き終えたあとの感動は「ティーレマン、恐れ入り」といった感じ。


プレヴィン











この人は本当に才人である。かつて、デュッセルドルフでライヴも聴いたが、その時は指揮姿には見惚れたが、肝心の演奏については鮮烈な印象はなかった。ドイツ人なのにフランス名をかかげ、アメリカに渡りその後欧州でも地位を築いたが、作曲家、指揮者、ピアニストのうち、もしも一芸に専心したらもっと頂点を極めたかも知れない。一方で、私生活をふくめ、こうしたマルチの活動こそが真骨頂だったのかも、とも思う。カルミナ・ブラーナほか以下のラインナップをみても、レパートリーの広さとウィーン・フィルはじめオーケストラとの多彩な共演、そしてその質の高さに改めて注目する。

織工Ⅲ: プレヴィン André George Previn (shokkou3.blogspot.com)

アンドレ・プレヴィン/カール・オルフ:世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」 (tower.jp)

アンドレ・プレヴィン/オルフ:カルミナ・ブラーナ<生産限定盤> (tower.jp)


ヨッフム










小生のライブでの海外オーケストラとの出会いは、1968年、ヨッフム/コンセルトヘボウから始まった。カルミナ・ブラーナの素晴らしさをはじめて教えてくれたのもヨッフム盤を通じてであった。そして、いまも本曲NO.1の評価は揺るがないと思う。

織工Ⅲ 拾遺集 クラシック音楽聴きはじめ3:ヨッフム (fc2.com)

織工Ⅲ: ヨッフム Eugen Jochum (shokkou3.blogspot.com)

オイゲン・ヨッフム/オルフ:カルミナ・ブラーナ (tower.jp)


(参考)

ブラームス:チェロソナタ 名盤5点 


 
















カザルス

第2番:P.カザルス(Vc)、M.ホルショフスキー(P) 1936年

パブロ・カザルス/ブラームス:チェロ・ソナタ第2番、ハイド (tower.jp)

パブロ・カザルス/Pable Casals - The Great Cello Player (tower.jp)


(参考)カザルスについて

原点としてのカザルス (amazon.co.jp)

織工Ⅲ: バッハ 無伴奏という選択 (shokkou3.blogspot.com)












フルニエ

ヴィルヘルム・バックハウス/ ブラームス:チェロ・ソナタ第1・2番 (tower.jp)

ピエール・フルニエ/ブラームス: チェロ・ソナタ第1番, 第2番 (tower.jp)


(参考)フルニエについて

フルニエの旧録音 上質な演奏スタイル (amazon.co.jp)











ロストロポーヴィチ

ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ/ブラームス:チェロ・ソナタ第1番・第2番 (tower.jp)


(参考)ロストロポーヴィチについて

織工Ⅲ: ロストロポーヴィチ/レジェンダリー・レコーディングス  Mstislav Rostropovich - Legendary Recordings (shokkou3.blogspot.com)











デュ・プレ

ジャクリーヌ・デュ・プレ/ブラームス:チェロ・ソナタ 第1番&第2番 (tower.jp)


(参考)デュ・プレについて

織工Ⅲ: デュ・プレ Jacqueline Du Pre (shokkou3.blogspot.com)


















ヨーヨー・マ
ヨーヨー・マ/ブラームス:チェロ・ソナタ集(tower.jp)

ヨーヨー・マ/Brahms: The Complete Piano Trios (tower.jp)


👉 織工Ⅲ: 名盤5点 シリーズ (shokkou3.blogspot.com)

土曜日, 1月 29, 2022

ヴェルディ:レクイエム 名盤5点



















 世に、3大レクイエム(モーツァルト、フォーレ、ヴェルディの他、ブラームス「ドイツ・レクイエム」などとの入れ替えの場合も)の一つとされる名曲。
以下に掲げる5点は、どれも名だたるもの。但し、多くの指揮者は再録を行っており、どれを選ぶかはリスナーの判断如何。小生は、新しい録音の”鮮度”よりも、各人、初回録音の”乾坤一擲”の緊張感を好むが、ドラマティックな曲ゆえ新録音で味わうほうが良いかも。

演奏スタイルの路線を引いたのはトスカニーニであり、カラヤンはこれを踏襲しつつ、次第に独自色を強くし多くの録音を行った。ムーティはヴェルディの歌劇を得意とし、レクイエムでも名声を博したが、同じイタリア系ではアバドも有力な選択肢。ショルティも若き日より、ヴェルディについて積極的に取り組んでいる。こうしたオペラ指揮者系とは異なるのがリヒター。純粋に宗教曲としてのレクイエムに向き合った1回限りの貴重な音源。


トスカニーニ


トスカニーニ ヴェルディ レクイエム 渾身の一撃 (amazon.co.jp)

トスカニーニによるヴェルディ「レクイエム」の録音は5種類あるようだが、一般的なのは1950年盤  ヴェルディ:レクイエム&テ・デウム  であろう。本演奏は録音状況ははるかに劣る1940年盤である。

しかし、この籠りに籠もって、それが放出される寸前のエネルギーの圧力はなんとも凄い。それを解き放つような「渾身の一撃」をここに加えるといった激しき演奏で、また、マイク・セッティングのためだろうが、独唱が前面にですぎるぐらいに強調される。さらに、その表現ぶりはオペラばりに抑揚がついており濃厚な詠唱である。テンポは可変的だが、全体はキリリと引き締まっており、最後の一音の「追い込み」まで一切の弛緩がない。美しきメロディが蠱惑的に現世をたたえる一方で、神の世界への敬虔な架け橋のような神々しき響きも折々に交差する。聴きおわる頃には録音の悪い痩せた音は気にならなくなり、純正な音楽空間をそこに意識させるような神聖な気持ちに導いてくれる。

 ・ヴェルディ:「レクィエム」「テ・デウム」

 ジンカ・ミラノフ  (ソプラノ)
 ブルーナ・カスターニャ  (メゾ・ソプラノ)
 ユッシ・ビョルリング (テノール)
 ニコラ・モスコーナ  (バス)
 ウェストミンスター合唱団 
 NBC交響楽団 
 録音時期:1940年11月23日
 録音場所:ニューヨーク、カーネギー・ホール
 録音方式:モノラル(ライヴ)
 

織工Ⅲ 拾遺集 トスカニーニの名演12   ヴェルディ:レクイエム (fc2.com)


カラヤン









ヴェルディ:レクイエム、カラヤンの初録音盤 (amazon.co.jp)

カラヤンは、ヴエルディ:レクイエムを晩年まで好んで取り上げたが、これはウィーン・フィルとの記念すべき1949年第1回ライヴ盤。規範たる1940年のトスカニーニ盤 ヴェルディレクイエム  を彷彿とさせる裂帛の演奏。

カラヤンは、怒りの日では、切り立った崖のようなスペクタクルな交響美を見事に表現している。その一方、詠嘆的なソプラノのヒルデ・ザデク、バスのボリス・クリストフの独唱パートは実に深き詠唱。そのコントラストの妙味が聴きもの。録音は古いが、カラヤンの本曲”原型”を知るうえでも興味深い音源である。

<収録情報>
・ヴェルディ:レクイエム
 ヒルデ・ザデク(S)
 マルガレーテ・クローゼ(C)
 ヘルゲ・ロスヴァンゲ(T)
 ボリス・クリストフ(B)
 ウィーン楽友協会合唱団
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 録音:1949年8月14日、ザルツブルク 祝祭歌劇場[ライヴ]


ヘルベルト・フォン・カラヤン/ヴェルディ: レクイエム (tower.jp)

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ヴェルディ: レクイエム (tower.jp)

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ヴェルディ: レクイエム (tower.jp)

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ヴェルディ:レクイエム (tower.jp)

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ヴェルディ: レクイエム (tower.jp)

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ヴェルディ:レクイエム (tower.jp)

織工Ⅲ: カラヤン ヴェルディ「レクイエム」 (shokkou3.blogspot.com)


ムーティ



 









ムーティの録音も数多いが、以下は1979年盤について。

・ヴェルディ:レクイエム

 レナータ・スコット

アグネス・バルツァについて

ヴェリアーノ・ルケッティ

エフゲニー・ネステレンコ

アンブロジアン合唱団

フィルハーモニア管弦楽団

 録音時期:19796

録音場所:ロンドン、キングズウェイ・ホール

録音方式:ステレオ(アナログ/セッション)


リッカルド・ムーティ/Verdi: Requiem, Quattro Pezzi Sacri (tower.jp)

リッカルド・ムーティ/ヴェルディ: レクイエム (tower.jp)

リッカルド・ムーティ/ヴェルディ: レクィエム (tower.jp)

リッカルド・ムーティ/ヴェルディ:レクイエム (tower.jp)

織工Ⅲ 拾遺集 ムーティ ヴェルディ Muti Verdi (fc2.com)


ショルティ









ショルティについても2種の録音が知られている。以下は旧盤。
・ヴェルディ:レクイエム
ジョン・サザーランド(S)
マリリン・ホーン(Ms)
ルチアーノ・パヴァロッティ(T)
マルッティ・タルヴェラ(Bs)
ウィーン国立歌劇場合唱団
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1967年10月 ウィーン


リヒター













リヒターはバッハ演奏の泰斗、その彼がヴェルディを取り上げた異色の演奏。
・ヴェルディ:レクイエム
イングリット・ビョーナー(Sp)
ヘルタ・テッパー(Ms)
ヴァルデマール・クメント(Tn)
ゴットリープ・フリック(Bs)
ミュンヘン・バッハ合唱団
ミュンヘン・フィル
録音:1969年2月28日 ミュンヘンドイツ博物館コングレスザール (ライヴ)


(備考)
たまたま深夜、以下を聴く。9.11メモリアルゆえか熱演であった。
1月30日(日) 午後11時20分~午前4時15分

◇メトロポリタン歌劇場 9.11コンサート  ヴェルディ レクイエム【5.1サラウンド】(午前0時54分~2時29分30秒) <曲目>   レクイエム ヴェルディ 作曲 【出演】   ソプラノ:アイリーン・ペレス   メゾ・ソプラノ:ミシェル・デ・ヤング   テノール:マシュー・ポレンザーニ   バス・バリトン:エリック・オーウェンズ   合唱:メトロポリタン歌劇場合唱団   管弦楽:メトロポリタン歌劇場管弦楽団   指揮:ヤニック・ネゼ・セガン

収録:2021年9月11日    メトロポリタン歌劇場(ニューヨーク)


👉 織工Ⅲ: 名盤5点 シリーズ (shokkou3.blogspot.com)

ホルスト:惑星 名盤5点  The Planets



 

カラヤン/ホルスト: 組曲《惑星》 (tower.jp)


ストコフスキー


ストコフスキーの先駆性は、やはり端倪すべからざるものである。1956年にロサンジェルス・フィルを振っての録音は、本国イギリスを除けば、メジャーな演奏として実に早い。かつ、初期ステレオの収録は、いかにも音響工学に感度の高かった彼らしいともいえる。

 

・ホルスト:組曲惑星Op.32

 ストコフスキー/ロサンジェルス・フィル

 ロジェ・ワーグナー合唱団

 録音時期:19569

 録音方式:ステレオ

織工Ⅲ 拾遺集 ストコフスキー 選集 (fc2.com)

「異端」の巨匠、秀でた業績を聴く (amazon.co.jp)


オーマンディ










オーマンディ/フィラデルフィア管の演奏は1975年。フィラデルフィア・サウンドで本曲を聴きたいというニーズは強かったから、満を持しての収録であったろう。もちろん、先達としてのストコフスキー盤は意識はしていただろうが、自らのスタイルを完成させていたオーマンディは、実に恬淡とこの曲の良さを引き出していると感じる。

 

・ホルスト:組曲「惑星」 Op.32 女性合唱:フィラデルフィア・メンデルスゾーン・クラブDecember 18, 1975


オーマンディ 堂々たる名演 (amazon.co.jp)

織工Ⅲ 拾遺集 オーマンディの先駆性 (fc2.com)

織工Ⅲ: オーマンディ Eugene Ormandy (shokkou3.blogspot.com)


小澤征爾

















小澤征爾の代表盤ともいえる快演。師カラヤンの飛びきりの名盤がある本曲をとりあげた理由の一つは、ボストン響のプレイヤーの至芸をアピールしたかったからではないか。ボストン響では、先行して巧匠スタインバーグ盤(1970年)もあるが、録音の良さだけではなくこれを上まわる出来映え。カラヤン/ウィーン・フィル盤の宏大なるスケール感は意識しつつ、ディテールをより丹念に描いたような演奏。カラヤンは、これに触発されたか?のように、ベルリン・フィルとの1982年の再録で、さらなる緻密さをもって呼応している。 

 

・ホルスト:組曲惑星Op.32

小澤征爾/ボストン響  ニュー・イングランド音楽院合唱団

(録音)197912月 ボストン


小澤征爾/ホルスト:組曲≪惑星≫ (tower.jp)

織工Ⅲ: ボストン交響楽団 ドイツ・グラモフォン録音全集(57CD)The Complete Recordings on Deutsche Grammophon Box set, CD, Import (shokkou3.blogspot.com)

Amazon | ホルスト:組曲「惑星」 スタインバーグ,ボストン交響楽団, ニュー・イングランド音楽院合唱団


コリン・デーヴィス











本国イギリス出身の指揮者の録音ではコリン・デーヴィスを。カラヤンが去ったあと、“お家芸”のホルストを引っさげてのベルリン・フィルとの共演は話題性も十分であったろう。その実力からすれば、もっと注目されていい指揮者だが、名盤といってよいと思う。 

・組曲『惑星』 op.321988年デジタル)ベルリン放送合唱団、ベルリン・フィル


C.デイヴィス、ツボを押さえたオーソドックスな解釈 (amazon.co.jp)

織工Ⅲ 拾遺集 サー・コリン・デイヴィス (fc2.com)

織工Ⅲ: いいですよ、コリン・デイヴィス (shokkou3.blogspot.com)


カラヤン








本曲普及へのカラヤンの貢献 (amazon.co.jp)

カラヤンが取り上げたことでブームをつくった曲は数ある。R.コルサコフ:シェエラザードやオネゲル:交響曲第2番、第3番「典礼風」などもそうだが、ウィーン・フィルとの蜜月時代に録音されたアダン:バレエ「ジゼル」やこの惑星などもその代表例。1961年9月の録音。


ストラヴィンスキー的な激しいリズムの刻み方(火星)、壮麗なメロディアスの魅力(木星)にくわえて「ボリス・ゴドゥノフ」の戴冠式の場を連想させるような眩い管弦楽の饗宴も随所にあり、変化に富んだ曲づくりをここまで見事に、メリハリよく表現しきったカラヤンの実力の面目躍如。このドラマティックで色彩感ある描写はウィーン・フィルの特質を最大限引き出したという意味でも大きな成果だろう。

金曜日, 1月 28, 2022

シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 名盤5点

 

”名ヴァイオリニストの数だけ名演あり”、といったいわばメイン・ロード作品ゆえに、ハイフェッツでもフランチェスカッティでも推薦盤は星の数ほどある。

ハイフェッツの至芸 (amazon.co.jp)

往年の名手ー心地よき表現力の自然さ (amazon.co.jp)

しかし、ここでは女性ヴァイオリン奏者に絞って、かつ年代的な多様性も考えて、以下5枚を選んでみた。


ヌヴー

ジネット・ヌヴーは、ブラームスのコンチェルトが有名だが、シベリウスでも天才肌の煌めきをみせる。録音は古く1945年11月21日、ロンドンにて。

シベリウスのヴァイオリン協奏曲ニ短調 op.47を聴く。ワルター・ジュスキント(指揮)フィルハーモニア管との協演で、1945年ロンドンにてスタジオ収録。こちらは、音がか細いせいもあるかも知れないが、細やかな表情をみせておりチャーミングな印象。男性的ともいえるブラームスに対して、繊細な表現力でも感性豊かに聴かせる好対照である。

ジネット・ヌヴー/ブラームス&シベリウス: ヴァイオリン協奏曲 (tower.jp)

織工Ⅲ: ジネット・ヌヴー Ginette Neveu (shokkou3.blogspot.com)











イダ・ヘンデル

イダ・ヘンデルも、最近、とみに再評価されている。1枚は北欧テイストから選びたかったので、本盤を掲げた。1984年12月7日ベルワルドにてライヴ盤。

イダ・ヘンデル/イダ・ヘンデル、ストックホルム協奏曲ライヴ録音集 (tower.jp)

織工Ⅲ: 若きクーベリックを聴こう! (shokkou3.blogspot.com)



















ムローヴァ

ここではムローヴァを掲げた。ムターにするかどうか悩んだが、ムターはすでにブラームスのヴァイオリン・ソナタで取り上げたので、むしろ、ポスト・ムターの呼び声もあるヴィルデ・フラングを参考に記載した。



















キョンファ

本曲は、どこかアジアン・テイストとの親和性があるように思う。東洋人の感性が合う曲ともいえる。そんな御託を並べなくともキョンファは名盤。彼女はその後の新盤もあるが、名実ともに本曲の第一人者であろう。
















諏訪内晶子

日本人演奏家も多くの佳演を残している。上記は、その代表盤だが、ほかにも庄司紗矢香も素晴らしい。どちらを掲げるべきかは悩んだが、フロンティアとしての活動に敬意を表して、ここでは諏訪内盤とした。

諏訪内晶子/シベリウス&ウォルトン:ヴァイオリン協奏曲 (tower.jp)

織工Ⅲ: 諏訪内晶子 ブラームス (shokkou3.blogspot.com)


(参考)今後の注目株






































ヴィルデ・フラング/Vilde Frang - Debut!: Prokofiev & Sibelius (tower.jp)

ブラームス ヴァイオリン・ソナタ 名盤5点



















ブラームスのヴァイオリン・ソナタ

Op.    曲名                                                   作曲年

8            ヴァイオリンソナタ第1番 ト長調『雨の歌』1878-79    vn,pf     

98          交響曲第4番 ホ短調                  1885      Orch(参考)

100        ヴァイオリンソナタ第2番 イ長調      1886      vn,pf     

108        ヴァイオリンソナタ第3番 ニ短調      1886      vn,pf

 

ハイフェッツ

ブラームス:ヴァイオリン協奏曲では大家の指揮者といくども録音し、また、多彩な室内楽も好んで取り上げたハイフェッツだが、ソナタの音源はあまり知られていない。むしろ、アンコール用にも使えるハンガリアン舞曲などのほうが多い。しかし、第3番はさすが円熟の名演。

 【収録情報】

・第1番ト長調Op.78「雨の歌」

 ヤッシャ・ハイフェッツ(Vn)エマニュエル・ベイ(P)

 (1936213)

・第2番イ長調Op.100

 ヤッシャ・ハイフェッツ(Vn)エマニュエル・ベイ(P)

 (1936131日ニューヨークRCAスタジオ3)

・第3番ニ短調Op.108

 ヤッシャ・ハイフェッツ(Vn)ウィリアム・カペル(P

 (19501129&30日ハリウッド、RCAスタジオ)

 ヤッシャ・ハイフェッツ/Jascha Heifetz Plays Sonatas for Violin(tower.jp)


シゲティ

 シゲティ&ホルショフスキの第1番、第3番。技巧の冴えよりも解釈の“深さ”で定評のあったシゲティらしい演奏。バッハやベートーヴェンへの探求で世に知られたシゲティらしい落ち着きのある響きは歴史的成果の名に恥じない。 

【収録情報】

・第1番ト長調op.78『雨の歌』(録音時期:1951420日)

・第3番ニ短調op.108195623日)

 ヨゼフ・シゲティ(ヴァイオリン)

 ミエチスラフ・ホルショフスキ(ピアノ)

 録音方式:モノラル(セッション)

 織工Ⅲ 拾遺集 シゲティ (fc2.com)


シェリング

シェリングの至芸、抑制がきいた抜群の安定感 (amazon.co.jp)

 小生が中学生のとき、小遣いをためて初めて買ったレコードは、ルービンシュタインのショパン:ポロネーズであり、次にブラームスを聴きたくて手にしたのが高価な本盤であった。半世紀以上も前になる。その後、多くの良き録音がリリースされるなか、いまだ現役盤であり、かつ秀逸なソナタ集として聴き継がれていることが感慨深い。 

いま聴いても、第1(op.8)の初々しさと切なさが魅力、そして第3番も過度に暗く、重くないのが良い。ルービンシュタインの陽性の気質が隠し味となっている気がする。そしてシェリングの至芸は、抑制がきき、力強さと抒情性のバランスが終始一貫していることにあると思う。その抜群の安定感あればこそ、本曲に真に親しむリスナーにとっては、得がたきものとなるのだろう。 

【収録情報】

・第1番ト長調 作品78「雨の歌」(19601228日)

・第2番イ長調 作品100 (19601230日&196113日)

・第3番ニ短調 作品108 (19601230日) 

ヘンリク・シェリング(ヴァイオリン)

アルトゥール・ルービンシュタイン(ピアノ)

ニューヨーク、アメリカ芸術文化アカデミー

 ヘンリク・シェリング/ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ全集 (tower.jp)


パールマン

 パールマン&アシュケナージが油ののりきった時期に、ヴァイオリン・ソナタ3曲だけでは飽き足りず、スケルツォ、ハンガリー舞曲第1, 2, 7, 9番まで一気に録音したもの。演奏の質も文句なし、録音も優秀。現在、入手するならば最も一般に受け入れられるものといえよう。 

【収録情報】

ヴァイオリン・ソナタ1番ト短調Op.78「雨の歌」、同第2番イ長調Op.100、同第3番ニ短調Op.108、スケルツォ ハ短調(F-A-Eソナタより)、ハンガリー舞曲第1, 2, 7, 9(ヨアヒム編) 

イツァーク・パールマン(ヴァイオリン),ウラディーミル・アシュケナージ(ピアノ) 

(録音)1983:デジタル

 Amazon | ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ全集 | パールマン, アシュケナージ 


ムター

 ムターは2度、ブラームスのソナタ集を取り上げている。俗に言われるカラヤン・ファミリー時代にワイセンベルクと、そして、27年後の円熟の境地を示す演奏をランバート・オーキスと。どちらも素晴らしい出来映えで、あとはリスナーの好み如何。

アンネ=ゾフィー・ムター/ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ全集 (tower.jp)

👉ムターは女王だろうか?  Anne-Sophie Mutter


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