火曜日, 8月 14, 2007

カラヤン ベートーヴェン3番(1)

◆ 交響曲第3番変ホ長調 op.55『英雄』 
フィルハーモニア管弦楽団 
録音年月日:1952年11月20~22日、12月1日
録音場所:キングズウェイ・ホール、ロンドン
録音:モノラル
スタッフ:P:ウォルター・レッグ、E:ダグラス・ラーター
原盤所有社:イギリス・コロンビア
マトリックス番号:XAX264、5
タイミング:I:14:33、II:16:26、III:5:47、IV:11:47

 もしもこれ以降のカラヤンの演奏を知らずに、そして目隠しで一般のリスナーにこの演奏を聴いてもらったとする。原盤はモノーラル録音だから、そこは如何とも隠しようがないが、この壮年期のカラヤンの「エロイカ」には、たぶん現代の若者も唸り、感動し、惜しみなく賛辞を送るだろう。それくらい、この「上出来ぶり」は大変なものだ。1952年の頃のカラヤンは、その実力に比して不遇な時代。イギリスでシュワルツコップの旦那さんのウォルター・レッグにお世話になっていた時代である。

 フルトヴェングラーはドイツでなお王者として君臨し、カラヤンのベルリン復帰を決して許さなかった。それをおそらく強烈に自覚しつつも、カラヤン、この時代のフィルハーモニア管弦楽団との演奏は生気に溢れ素晴らしいものが多い。清新さ、溌剌さの一方、音の陰影のつけ方も巧みである。暗い音の「深み」には特有の凄さすらがある。テンポは全般に早い。時に自在に動かす場合もあるが恣意的な感じは与えない。リズミックさは抜群で切れ味の鋭さこそカラヤンの身上。

 再度!もしも、これしかカラヤンのエロイカの録音がなかったとしたら、多くのリスナーはもっとこの演奏に注目するかも知れない。しかし、カラヤンはこの後、幾度も録音をくり返し、そのディスコグラフィを書き換えていく。だが、本盤がこの時代にここまで完成された形で残されている意味は覚えておいて良い。数多の名演に対していまだ、その「
拮抗力」は十分である。

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