土曜日, 8月 23, 2014

アルバン・ベルク四重奏団 やはり超一級



アルバン・ベルク四重奏団(ABQ)による5枚組の選集。この順番に沿って5枚を聴き個々の感想を→に記した。全体の構成としては、ベートーヴェンの50分を越える大曲<CD1>、民族色豊かなヤナーチェク<CD2>、ブラームス晩年の2曲<CD3>、転じて、異色とも思えるピアソラ・タンゴ集<CD4>、そして最後は、四重奏曲の花、シューベルトの名曲2曲で締めくくっている。
好悪、他の名演もあろうが、どれひとつとってもABQにとってゆるがせにできない名盤である。

【収録情報】
<CD1 ベートーヴェン1982年(デジタル)>
・弦楽四重奏曲第13番変ロ長調 Op.130
・大フーガ 変ロ長調 Op.133(13番終楽章前に演奏)
→ ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第13番「大フーガ」 

<CD2 ヤナーチェク1993、94年(デジタル)ほか>
・ヤナーチェク:弦楽四重奏曲第1番『クロイツェル・ソナタ』、第2番『内緒の手紙』
・ドヴォルザーク:ピアノ五重奏曲第2番イ長調 Op.81より第2楽章
 エリーザベト・レオンスカヤ(ピアノ)<録音:1987年(デジタル)>
→ ヤナ-チエク

<CD3 ブラームス1998年(デジタル)>
・クラリネット五重奏曲ロ短調 ザビーネ・マイヤー(クラリネット)
・弦楽五重奏曲第2番ト長調 ハリオルフ・シュリヒティヒ(ヴィオラ)
 → ブラームス:クラリネット五重奏曲、他
  
<CD4 ピアソラ・タンゴ集 2003年(デジタル)>
・ピアソラ:タンゴ・センセーションズ
・アローラス:エル・マルネ-サロンのグラン・タンゴ
・コビアン/ピアソラ編:私の隠れ家-流行のグラン・タンゴ
・カロ他編:ラ・ラジュエラ-ミロンガのグラン・タンゴ
・シュヴェルツィク:アデュー・サティ op.86
・ピアソラ/ジョナー編:AA印の悲しみ
 ペル・アルネ・グロルヴィゲン(バンドネオン)
 アロイス・ポッシュ(コントラバス)
 → Tango Sensations

<CD5 シューベルト 1984年(デジタル)>
・弦楽四重奏曲第14番ニ短調 D.810『死と乙女』
・弦楽四重奏曲第13番イ短調 D.804『ロザムンデ』
→ シューベルト:弦楽四重奏曲《死と乙女》、《ロザムンデ》≪クラシック・マスターズ≫

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アルバン・ベルク四重奏団(ABQ)による1982年の録音。
弦楽四重奏曲第13番(Op.130)はそれ自体が大曲だが、ABQは、当初一体であったがその後別の作品として独立した「大フーガ」(Op.133)を第5章と終楽章の間におき、全7楽章構成として演奏するスタイルをとっている。
よって演奏時間は52分を超える。ベートーヴェンでは第9番を除き、交響曲よりも長い本曲を、緩急自在に操り、まったく飽きさせずに一気に聴かせるABQの技量にまずは感心する。

また、いささか重く暗い大フーガに対して、これをはさむ両楽章は比較的明るい色調を帯びていることから、聴き終わった後にABQらしい躍動的な残響が耳にのこる。その充実感が心地よい。

→ Alban Berg Quartet: 5 Classic Albums にて聴取



アルバン・ベルク四重奏団(ABQ)による1993年、1994年の録音。
晩年に作曲されたヤナーチェクの2曲の弦楽四重奏曲は、民族色が濃厚で哀切の響きをたたえ、それでいてふいに、おどけたような表情も垣間見せるといった趣きで聴いていて楽しめるが演奏は至難だろう。

ABQは余裕の技量で、演奏の難度などは少しも感じさせず、「クロイツェル・ソナタ」、「ないしょの手紙」といったいわくありげな表題にあまりとらわれず、また一見、変幻自在で複雑な表面の「音」(ときに蚊が飛び交うようでもあり、ノコギリを引くようでもあり実に多様で面白いけれど・・・)ではなく、ひたすらにその奥にかくされた芯の部分(晩節の人生のあり方についての作曲家の懊悩か)に迫ろうとするアプローチであるように感じる。

→ Alban Berg Quartet: 5 Classic Albums にて聴取



アルバン・ベルク四重奏団(ABQ)による1998年のライヴ録音。
クラリネットにザビーネ・マイヤー、ヴィオラにハリオルフ・シュリヒティヒを迎えてのクラリネット五重奏曲、弦楽五重奏曲第2番ともにブラームスの晩年の作品。

安寧で落ち着いた基調のなかで、キュッと空気を締めるような劇的なシーンを入れたり、逆に思いきり精神を弛緩させて甘美なメロディに包みこんだりと、酸いも甘いも知りつくしたブラームスの完成度の高い作品に、ABQはひたと寄り添うように緊張感をもって臨場している。マイヤーのクラリネットの上手さが前面にでて、「協奏曲」的ともいえる五重奏曲よりも、一体のアンサンブルがより際立つ弦楽五重奏曲のほうにより好感がもてるが、ABQの安定度と音質は抜群。

→ Alban Berg Quartet: 5 Classic Albums にて聴取



アルバン・ベルク四重奏団(ABQ)による2003年ライヴ録音。
バンドネオンはペル・アルネ・グロルヴィゲン。この人はギドン・クレーメルとの共演「ピアソラへのオマージュ」[ピアソラ没後20年] クレーメル・プレイズ・ピアソラ・ボックス などもある。コントラバスはアロイス・ポッシュ。曲目は以下のとおり。小生、「タンゴ・センセーションズ」以外は、はじめて聴く曲ながら、ABQによる合奏の魅力を大いに楽しめた。

タンゴは普段聴かないので、かえって新鮮に感じる。タンゴというと、もう少し汗臭くギラギラしている印象もあるが、ここでは現代音楽としてのメロディ、リズムの魅力を最大限披露するといった装いで、ABQにしてはいつになく熱中型の取り組みながら、ライヴコンサートの節度は超えていない。本演奏会用に委嘱されたという「アデュー・サティ」に心動いた。

<収録情報>[作曲、編曲年]
1.アストル・ピアソラ[1989年]/タンゴ・センセイションズ(弦楽四重奏とバンドネオンのために)〜眠り、不安、目覚め、恐れ
2.エドゥアルド・アローラス/エル・マルネ (サロンのグラン・タンゴ)(ソロ・バンドネオンのために) ”El Marne”
3.フアン・カルロス・コビアン/私の隠れ家 (流行のグラン・タンゴ) ”Mi Refugio”
4.カロ、フェデリコ、リペスケル編/ラ・ラジュエラ (ミロンガのグラン・タンゴ)(ソロ・バンドネオンのために) ”La Rayuela”
5.クルト・シュヴェルツィク[2002年、本演奏会用に委嘱]/アデュー・サティ Op.86(弦楽四重奏とバンドネオンのための五重奏曲) 〜「パラード とても控えめに、やや素っ気なく」、「休暇中のダリウス 安らかに、くつろぐように」、「雄鶏とアルルカン 迷わずに、やや速めのテンポで」、「ジムノペディ とてもスローなワルツ」、「軽業の道化 非常に速いテンポで」
6.アストル・ピアソラ/AA印の悲しみ(弦楽四重奏、バンドネオンとベースのために)”Tristezas para un AA”

→ Alban Berg Quartet: 5 Classic Albums にて聴取



アルバン・ベルク四重奏団(ABQ)による1984年の録音。

『死と乙女』冒頭の激烈ともいえる開始から、常ならぬ緊張感のもとで、磨きに磨きこまれたABQサウンドに浸れる。一般には死を予感した暗いイメージの曲(全楽章短調。3つの主題もニ短調、ヘ短調、イ短調)なのだが、響きには強さとともに耀きがあり抑制された感情表現。そこから本曲聴かせどころの第2楽章でもシューベルト本来の前向きな明るさがちらちらと顔をだす。終楽章も力感に満ちている。

一方、瞑想的な出だしの『ロザムンデ』では、ABQのフレーズの処理の巧みさに引き込まれる。音楽のうねりに不自然な誇張がなく、あくまでも研ぎ澄まされた感性がすべての音に結実しているかのようだ。第2楽章の優しい響きには癒されるリスナーも多いだろう。

→ Alban Berg Quartet: 5 Classic Albums にて聴取



アルバン・ベルクの名を冠した弦楽四重奏団による作曲者自身の作品を取り上げた名盤。1991ー92年録音の新盤である。弦楽四重奏曲は2楽章から、抒情組曲は6楽章からなる。12音階、無調といった作曲技法は、あまり意識せずに素直に耳を傾けることができる演奏である。むしろ、4つの楽器がその個性を存分に発揮したときに、どういった音楽的な挑戦ができるのかをスリリングに体験する1枚とも言える。

 アルバン・ベルク弦楽四重奏団の命名が象徴的だが、同団は従来の第1ヴァイオリンを中心とする室内楽のイメージを一変し、ウイーンの代表的な作曲家名を採用し、4つの楽器を相対的に位置づけ、その協調的、競争的な演奏によって新風を吹き込んだと言われる。そうした特色は本盤から顕著に感じることができる。その一方、抒情組曲の全編に流れるエロティシズムの表現ぶりは感性に強く訴えてくる。さらに解説を読みながら聴けば、音階のパズルを解くような面白さもある。

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【ベルクの弦楽四重奏曲&抒情組曲】
http://freizeit-jiyuu.blogspot.jp/2006/06/blog-post_115053222440027100.html

弦楽四重奏曲】
http://shokkou.blog53.fc2.com/blog-category-4.html
 
 
アルバン・ベルク四重奏団は、その名前のとおり新ウイーン学派演奏の旗手として登場した。しかし、たとえばベートーヴェンの弦楽四重奏曲集を聴いて、その完璧な構成力に魅了されたリスナーも多かろう。

本集は「フランスもの」が中心のプログラムだが、弦楽四重奏曲に関して、ドイツ的とか、ウイーン風とか、プロ・フランスといった区分自体、あまり意味がないようにも思える。この演奏を聴いていると、いわゆる分析的な演奏であり、あらゆるフレーズの<有意>な意味をあまねく表現しうる方法論を彼らが希求しているのではないかと感じる。

秀でた音楽家が、楽曲を分析し最高の「ひとつの響き」に昇華するために徹底して統一感を追究するといった場をここに実感する。ドビュッシーやラヴェルの見事な楽曲構成やメロディの華やぎに驚くことからはじまり、それを紡ぎ出す本団の深い解釈と技術に脱帽する。それは、真のユニバーサルさの模索と言っても良いように思う。
 
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