Saturday, July 30, 2016

展覧会の絵


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デュトワ盤を耳にして、これまで随分、この曲は聴いてきたなあと思った。父がクラシック音楽ファンで、小学生の頃からソノシートという赤いペラペラの盤で名曲に接したが、そのなかに本曲の一部があり、父はラロのスペイン交響曲とともに特に好きだった。しかし、ここではまずは、ピアノ版から。

展覧会の絵~ライヴ・イン・ソフ
ソフィア・リサイタル

「展覧会の絵」について The Russian Masters of Great Emotions in Music にて聴取。

録音は1958年と古く、ライヴの収録環境もよくない(冬場特有の咳も前半は気になる)。リヒテルらしからぬミスタッチの多さでも有名な音源。しかし、鬼気迫る歴史的「凄演」の魅力は、それに余りある。以下、若干のコメントを。

あまりにもそっけなく投げやりな感もある「第1プロムナード」。なにも期待しないでふらりと展覧会にきたといった風情からこの演奏は始まる。「プロムナード」については、聴きすすむうちに第3曲、第5曲、第8曲、第11曲と5回の繰り返しでどんどん集中力が高まっていくことがわかる(以下、曲番はトラックにそって記載)。

第2曲「小人(グノーム)」は一転、濃厚な表現、第4曲「古城」の静かで深い哀切感、第6曲「テュイルリーの庭 - 遊びの後の子供たちの口げんか」は物語を楽しく(ロ長調)想像させ、第7曲「ビドロ(牛車)」は高音部の打鍵が強調され悲鳴ににたり、とここまでは多彩な表現ぶりに特徴。

中盤の第9曲「卵の殻をつけた雛の踊り」、第10曲「サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ」、第11曲「リモージュの市場」ではリヒテル快速に飛ばし、ここでは抜群のテクニックを誇示する。

さて、本演奏の本領は 第13曲「カタコンベ - ローマ時代の墓」以降であり雰囲気ががらりと変わり、第14曲「死せる言葉による死者への呼びかけ」に連続して不気味なデモーニッシュさが支配し、第15曲「鶏の足の上に建つ小屋 - バーバ・ヤガー」で頂点に達する。そして終曲「キエフの大門」では、巨大な構えと緩急の自在、ハンマーを振り上げ叩きつけるような大音量で聴衆を圧倒する。金縛り状況から解放された聴衆の大拍手が当夜の感動を印象づけている。


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リヒテルのピアノ版は、ムソルグスキーの原典重視。その後の規範となった有名なもの。さて、オーケストラ版では、どれがオーソドックスかなと考え、ここではオーマンディを次に取り上げる。

展覧会の絵&ボレロ~ラヴェル名演集

展覧会の絵について。細密画を描くがごとく緻密で、各曲別に性格づけを考えぬいたような周到な演奏。強力なフィラデルフィア・サウンドを前面に立てての華麗な演奏といったイメージとはちょっと違いを感じる。むしろ、どちらかといえば地味な印象で、かつ通常であればリスナーを無条件に魅了する「明るき音響美」よりも、少し型にはまった形式美を追求しているようにも感じる。

オーマンディは、パートでもフィラデルフィア全団でも自在にスクランブルして見事な音楽を奏する。「手兵」フィラデルフィア管にとって、親和性の強い本曲には大いに自信をもっていたことだろう。しかし、そのレヴェルにとどまらず、さらにより高き目標にオーケストラを引っ張っていこうという意欲があったのかも知れない。

その試みは、半分は成功しており、オーケストラに一層の緊張感をあたえ、慎重な運行はより各パートの至芸を際立たせている。その一方、天才的(ないし狂気の)パッションが横溢するようなこの曲の破天荒さに比して、やや常識的すぎる解釈が透けて見えてしまった気もする。規範的な良き演奏ながら、あえて言えば小生が本曲に好む惑乱するような激しき情熱が抑制されているようにも感じた。


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「展覧会の絵」でトスカニーニを取り上げないわけにはいかない。上記のオーマンディ盤にも少なからず影響を与えているだろう。以下ではライヴ盤を。

Pictures At An Exhibition

The Great Conductors の1枚(CD29所収)。1951年4月23日カーネギーホールにおけるライヴ。録音の良否は「まだら」で弱音部は比較的クリアに録れているが、強奏ではかなり音が混濁しているところがある。
さて、演奏はスケールが大きく、彫りが深く気迫十分。NBC響の各パートの巧さも光る。全般にトスカニーニらしい快速な運行だが、とくに怪奇的でおどろおどろしい、まがまがしい部分は、ここまでイメージをつかみ迫真的に表現できるのかという驚きがある。 終盤の盛り上がりも看取はできるが、もっと録音が良ければより腹の底にズシンとくるものがあったろう。

なお、展覧会の絵&くるみ割り人形 ~華麗なるオーケストラ名曲集 (セッション録音)も参照


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小生が本曲ではじめて買ったレコードはカラヤン/ベルリン・フィルの60年代の録音だった。いまでもベスト盤の一角をしめていると思う。しかし、その後、フィルハーモニーとの旧盤も聴いて、こちらも得難い魅力があることを知った。


Mussorgsky, Ravel: Tableaux d'une exposition (Stereo Version)

「展覧会の絵」について The Russian Masters of Great Emotions in Music にて聴取。

1955年10月11-12日、56年6月18日の録音。この頃のカラヤンの演奏の切れの良さは、いま聴いてもいささかも古さを感じない。本曲についても後年のベルリン・フィルとの演奏のほうが完成度は高いとは思うけれど、曲想を大胆にイメージさせて、彫琢しすぎぬ、程よいオーケストラ・コントロールの即興的なドライブ感にはぞくぞくとさせるものがある。品位を失わない遊戯感覚(「テュイルリーの庭 - 遊びの後の子供たちの口げんか」)も壮麗な音響空間に佇む感覚(「鶏の足の上に建つ小屋 - バーバ・ヤガー」〜終曲「キエフの大門」)も、カラヤンならではの醍醐味。

 
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他にも沢山の名盤がある。以下では演奏評はまだ書いていないが、いつも手にとる2つのBOXを参考まで。

Russian Heart
Russian Heart

ゲルギエフの30代後半から40才台を中心とする17枚の廉価盤BOX。師カラヤンの同じ年頃(1950年代)での活動は、フィルハーモニー管との膨大な録音を残す一方、ウィーン・フィルと親交、その後ベルリン・フィルの常任を掴んだ文字通りの昇竜期だった。その師を見習うが如き、ゲルギエフ怒涛の録音記録である(この他にも多くの音源がある。一部重複もあるが、12枚組の廉価盤集 [[ASIN:B00975F09K Art of Valery Gergiev]]も参照)。
ゲルギエフはウィーン・フィルとも良好な関係を保っており([[ASIN:B011MDK5LM Valery Gergiev/ Vienna Recordings]])、その点でもカラヤンの背中を追っているようなところもある。
一方、録音に関しては、ゲルギエフはその主力分野を故国ロシアものに絞っており、そこはムラヴィンスキーの跡目を継ぐような慎重な対応である。
ゲルギエフの音楽には独特の大局観があり、曲ごとでしっかりと見通しが効いている。そのうえで思い切りの良い演奏スタイルで、シャキッとした音作りが身上。ある意味で1970年代のメータ/ロサンゼルス・フィルの演奏を彷彿とさせるものがある。
そのゲルギエフも還暦を越えて円熟期に入る。カラヤンのようにさらなる高みに到達するか、メータのように若き日に比べてやや色褪せるか、今後の活動を占ううえでも注目のマエストロの記録である。
<収録情報>(録音年代順)
・ムソルグスキー:展覧会の絵、チャイコフスキー:フランチェスカ・ダ・リミニ(1989年7月)L
・ボロディン:交響曲第1番、第2番(1989年10月)R
・プロコフィエフ:ロメオとジュリエット(抜粋)(1990年8月)L
・チャイコフスキー:『眠りの森の美女』抜粋(1992年2月)M
・ラフマニノフ:交響曲第2番(1993年1月)M
・1812年~ロシア管弦楽名曲集(1993年4月、5月)M
・ショスタコーヴィチ:交響曲第8番(1994年9月)M
・ストラヴィンスキー:火の鳥(1995年4月)M
・プロコフィエフ:オラトリオ「イワン雷帝」全曲(1996年9月)R
・チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」、ロメオとジュリエット(1997年7月)M
・スクリャービン:プロメテウス(1997年7月)M
・ストラヴィンスキー:春の祭典、スクリャービン:法悦の詩(1999年7月)M
・ショスタコーヴィチ:交響曲第7番「レニングラード」(2001年9月)M,R
・ショスタコーヴィチ:交響曲第4番(2001年11月)M
・ショスタコーヴィチ:交響曲第9番(2002年5月)M
・ショスタコーヴィチ:交響曲第5番(2002年6月)M
・プロコフィエフ:スキタイ組曲、アレクサンドル・ネフスキー(2002年7月)M
・プロコフィエフ:交響曲第1番、第3番、第5番(2004年5月)L
――――――
(摘要)
L:ロンドン・フィル
M:マリインスキー劇場管弦楽団
R :ロッテルダム・フィル

Art of Giuseppe Sinopoli
ベートーヴェンから自作まで17名の作曲家による交響曲、管弦楽曲集(16CD)。オーケストラも多彩でシュターツカペレ・ドレスデン、フィルハーモニア管弦楽団、ニューヨーク・フィル、ウィーン・フィル、チェコ・フィルなど、いかにもシノーポリらしいレパートリーおよび活動の広さが本集の最たる特色です。

シノーポリは、存命していれば21世紀のクラシック音楽界の風景を大きく変えたであろう逸材です。戦後の1946年イタリアのヴェネチア生まれ。ユダヤ系移民と言われますが、天才肌の音楽家です。

 ヴェネチア音楽院で音楽を、パドヴァ大学で精神医学と人類学を、ドイツのダルムシュタットでマデルナ、シュトックハウゼンから現代音楽を学び、1972年弱冠26歳にして母校のヴェネチア音楽院で現代音楽・電子音楽の教授に就任します。同年、ウィーンでハンス・スワロフスキーから指揮法を学び、31歳でパリ音楽院で指揮を教えるようになります。

 翌1978年ヴェネチアでアイーダを振ってヴェルディ指揮者として本格デビューします(なお、2001年4月20日、ベルリン・ドイツオペラで同じアイーダを演奏中、第3幕で心筋梗塞で倒れ不帰の人となりました)。
 1980年にはマクベス(ベルリン・ドイツ・オペラ)、アイーダ(ハンブルク国立歌劇場)、アッティラ(ウイーン国立歌劇場)のヴェルディの3オペラを、83年マノン・レスコー(コベントガーデン王立歌劇場)、85年タンホイザー(バイロイト音楽祭)を指揮しますが未だ39歳でした。同時期に作曲家として、1981年自作「ルー・サロメ」をバイエルン国立歌劇場で初演しています。

 オーケストラ指揮者としては、1984年にフィルハーモニア管弦楽団、1992年からはドレスデン国立管弦楽団の首席を務めたほか、当代一流のオケと組んだ多彩な名演を送り出しました。本集でも多くの演奏があるフィルハーモニー管弦楽団は、カラヤン、クレンペラーらが手塩にかけた時代を経て、前任ムーティエの後を継いでの就任です。

 シノーポリは小生の好きな指揮者です。とくにブルックナー、マーラーにくわえて古典から現代音楽についても幅広く分析力ある名演を紡ぎ、同じ曲でもこんなにも音が多重的に耳にとどくのかと驚かされることもあります。ときに分析癖がつよく出すぎてパッションが抑制されていると感じることもありますが、慣れればその魅力はほかの指揮者には代えがたいものです。本選集はそうしたシノーポリの良さを味わうには実に好適なものです。

<収録情報>(括弧内は録音年)

◆ベートーヴェン:交響曲 第9番(1996年9月3日) シュターツカペレ・ドレスデン
→【参考】 ベートーヴェン:交響曲第9番
◆シューベルト:交響曲 第8番「未完成」、第9番「グレイト」(1992年)シュターツカペレ・ドレスデン
◆シューマン:交響曲 第2番(1983年)ウィーン・フィル
→【参考】 シューマン:交響曲第2番
◆メンデルスゾーン:交響曲 第4番(1983年)フィルハーモニア管弦楽団
→【参考】 Symphony 4 Italian
◆ブラームス:ドイツ・レクイエム(1983年) チェコ・フィル&プラハ・フィル合唱団
◆ブルックナー:交響曲 第4番(1987年)、第7番(1991年)シュターツカペレ・ドレスデン
→【参考】  Bruckner: Symphony No.4 "Romantic"、 ブルックナー:交響曲第7番

◆チャイコフスキー:交響曲 第6番、ロミオとジュリエット序曲(1989年)フィルハーモニア管弦楽団
◆マーラー:交響曲 第5番(1985年)フィルハーモニア管弦楽団
→【参考】 マーラー:交響曲第5番

ムソルグスキー:展覧会の絵、はげ山の一夜(1989年)ニューヨーク・フィル
◆ラヴェル:ボレロ、ダフニスとクロエ 第2組曲(1988年)フィルハーモニア管弦楽団、高雅にして感傷的なワルツ(1989年)ニューヨーク・フィル
◆ドビュッシー:交響詩「海」(1988年)フィルハーモニア管弦楽団
◆レスピーギ:ローマ三部作(1991年)ニューヨーク・フィル
→【参考】 レスピーギ:交響詩「ローマの松」「ローマの噴水」「ローマの祭り」
◆シェーンベルク:ペレアスとメリザンド、浄夜(1991年)フィルハーモニア管弦楽団
◆R.シュトラウス:ツァラトゥストラはかく語りき(1988年)ニューヨーク・フィル、7つのヴェールの踊り(1990年)ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団、ドン・ファン(1991年)シュターツカペレ・ドレスデン
→【参考】 Virtuoso-R. Strauss: Also Sprach Zarathustra
◆エルガー:エニグマ変奏曲、弦楽のためのセレナード Op.20、南国にて Op.50(1987、1989年)フィルハーモニア管弦楽団
◆マデルナ:クァドリヴィウム、アウラ、ビオグランマ(1979年)北ドイツ放送交響楽団
クァドリビウム

◆シノーポリ:組曲「ルー・サロメ」(1987年)シュトゥットガルト放送交響楽団
シノーポリ:ルー・サロメ

ムソルグスキー:組曲《展覧会の絵》、リムスキー=コルサコフ:《ロシアの復活祭》序曲、他
ムソルグスキー:組曲《展覧会の絵》、リムスキー=コルサコフ:《ロシアの復活祭》序曲、他

ムソルグスキーの天才的な発想とロシア土着のバーバリスムが横溢する本曲ながら、ラヴェルの管弦楽曲化の妙技によって今日、人気の演目となった。演奏スタイルとしてはムソルギスキーの原曲のエネルギーを存分に表出するか、ラヴェルのオーケストレーションの魅力を強調するか、あるいはその双方か。
デュトワ盤は、【ラヴェル・テイスト】を前面にたてた名演であると感じる。
トスカニーニ盤 Pictures At An Exhibition のような強烈さはないし、名ブレンダーの如く、双方の良さを縦横に紡いでみせるカラヤン盤 ロシア名曲集 とも異なり、デュトワの表現は円みをもっており、怪奇的な表現も一歩手前で意図的に「寸止め」をする抑制のきいた演奏。しかし、それゆえに管弦楽の粋を尽くした名曲の相貌がくっきりと浮かび上がってくる。
機知に富みセンスの良さの光る解釈はとても聴きやすく楽しめる。ここぞという迫力にも過不足はない。録音の良さを加味しても、ラヴェル・テイストでは一頭群をぬく名演と思う。
→ Various: Charles Dutoit も参照

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