木曜日, 11月 24, 2016

オーマンディ Eugene Ormandy




小生がクラシック音楽を聴きはじめた1960年代の終わり頃、アメリカで実演に接したなどの経験をもつ一部の評論家は、オーマンディ/フィラデルフィア管について(今日からみて)正当なる評価をしていたが、当時は、フルトヴェングラーが神格化され、カラヤンですら大衆的な人気はあるが音楽の深さではフルトヴェングラーにはるかに及ばないといった論陣をはる評論家が多く、その伝では、オーマンディはさらに通俗的といった、意味なき階序論が横行していたように思う。

少し時代が下るが、1970年代、カラヤン本格台頭期、あいつぐ新譜は高価で、それに比べてオーマンディなどの5060年代の録音は相対的に結構、安く手に入る時期がきて、曲目によってはオーマンディを聴くようになり、フィラデルフィア・サウンドなるものに本格的に接してその魅力に驚いた。

さらに後年、たまたまベートーヴェンの6番のシンフォニーをオーマンディで聴いて、その周到なる配意のもと、大らかにして気品ある名演に感嘆した。
 
 

ベートーヴェン:交響曲第5番・第6番

ベートーヴェン:交響曲第5番・第6番

1995
 
オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団のベートーヴェンの5番(録音:1966214日)、6番(録音:1966126日)。1899年ブタペスト生まれのオーマンディはヴァイオリンの神童で5歳でブタペスト音楽学校に入学、その後17歳で教授資格を取得。後に米国にわたりミネアポリス交響楽団からストコフスキーの後任としてフィラデルフィア管弦楽団の指揮者となるが、当時ストコフスキーの米国での人気は凄かったから、オーマンディはその大いなる実力を評価されて後継者となったと言えるだろう。レパートリーの広さも有名で古典のみならず現代音楽への造詣も深い。
 
 5番は音響もいまひとつでオーマンディとしてはやや平板な印象だが6番は素晴らしい。この時代のフィラデルフィア・サウンドは全般に明るく、ほんのりと暖かみがあり、なによりも柔らかな音色に特色がある。肌合い艶やかなその音響を聴いていると快感が内から湧きあがってくる。美しく長閑な印象に酔える、得難い体験のできる「田園」である。
 
Eugene Ormandy Conducts 20th Century Classics

Eugene Ormandy Conducts 20th Century Classics

2012
 
 
「異端」の巨匠、ストコフスキーLeopold Stokowski-the Columbia Stereoの跡目を継いで、フィラデルフィア管弦楽団の首席指揮者・音楽監督を19381980年の永きにわたって努めたオーマンディは、その主要な活動時期がカラヤン、バーンスタインの2大スターと重なり、かつアメリカでもミュンシュ、ライナー、セルらの強力なライヴァルの存在もあって埋没しがちであったが、その驚異的なレパートリーの広さと楽団の彫琢した美音とともに「異能」の名匠であった。 
小生はかつてベートーヴェン:交響曲第6番を聴いてえも言われぬ感動を覚えたが、改めて下記の【協奏曲等】のラインナップをみて、アイザック・スターンからヨーヨー・マまでの豪華・多彩な共演による名演だけでも本集は十分に元がとれる。
さらに、ほぼ年代順に【交響曲、管弦楽曲】を並べてみると、選曲の妙もあってこの名匠の優れた足跡を追体験するには心憎い選集であることがわかる。
 
【協奏曲等】
◇プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番/スターン(1963年)
➡ オーマンディ・コンダクツ・プロコフィエフ
◇ロドリーゴ:アランフェス協奏曲/ジョン・ウィリアムズ(1965年)
◇ガーシュイン:ラプソディー・イン・ブルー/アントルモン(1967年)
◇ファリャ:スペインの夏の夜/ルービンシュタイン(1971年)
◇ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番/アシュケナージ(1975年)、同:パガニーニの主題による狂詩曲/クライバーン(1970年)
◇ショスタコーヴィチ:チェロ協奏曲第1番/ヨーヨー・マ(1982年) 
   
【交響曲、管弦楽曲】
・ストラヴィンスキー:『春の祭典』(1955年)、『ペトルーシュカ』組曲(1964年)
➡ Stravinsky: Le Sacre Du Printemps
・プロコフィエフ:交響曲第1番『古典交響曲』(1961年)
➡ オーマンディ・コンダクツ・プロコフィエフ
・ラヴェル:『ダフニスとクロエ』第2組曲(1971年)、スペイン狂詩曲(1963年)、ボレロ(1973年)
・ドビュッシー:交響詩『海』(1972年)
➡ ボレロ〜ラヴェル&ドビュッシー..
・ハチャトゥリアン:剣の舞、バラの娘たちの踊り(1964、1966年)
・カバレフスキー:道化師のギャロップ(1972年)
➡ はげ山の一夜~ロシア管弦楽曲名演集
・ブリテン:青少年のための管弦楽入門(1974年)
➡ ピーターと狼(紙ジャケット仕様)
・ホルスト:組曲『惑星』(1975年)
Holst: the Planets
・ショスタコーヴィチ:交響曲第5番(1975年)
➡ Shostakovich: Symphony No.5, Age of Gold - Polka, Prokofiev: The Love for Three Oranges
・バーバー:弦楽のためのアダージョ(1957年)
➡ ザ・ロマンティック・フィラデルフィア・ストリングス
・ムソルグスキー/ラヴェル編:組曲『展覧会の絵』(1973年)
➡ 展覧会の絵&ボレロ~ラヴェル名演集
・バルトーク:管弦楽のための協奏曲(1979年)
・コダーイ:『ハーリ・ヤーノシュ』組曲(1975年)
➡ バルトーク&コダーイ名演集
・オルフ:カルミナ・ブラーナ(1960年)
➡ オルフ:カルミナ・ブラーナ&カトゥーリ・カルミナ
・スクリャービン:交響曲第4番『法悦の詩』(1971年)
➡ ラフマニノフ:交響曲第2番、合唱曲「鐘」&スクリャービン:法悦の詩、プロメテウス
・マーラー:『大地の歌』/リチャード・ルイス(1966年)
➡ マーラー:大地の歌&交響曲第10番(クック版)
・エネスコ:ルーマニア狂詩曲第1番イ長調(1972年)
・アルヴェーン:スウェーデン狂詩曲第1番『夏至の徹夜祭』 (1968年)
➡ リスト:ハンガリー狂詩曲第1番・第2番&エネスコ:ルーマニア狂詩曲第1番・第2番他
・アイヴズ:交響曲第2番(1973年)、ニュー・イングランドの3つの場所(1974年)
➡ アイヴズ:交響曲「アメリカの祭日」&ニュー・イングランドの3つの場所
・R.シュトラウス:『ばらの騎士』組曲(1964年)
➡ R.シュトラウス:英雄の生涯、町人貴族&「ばらの騎士」組曲 他
・シベリウス:悲しきワルツ(1973年)、『フィンランディア』 (1968年)
➡ オーマンディ・コンダクツ・シベリウス
・コープランド:アパラチアの春(1969年)
➡ コープランド:アパラチアの春&「ビリー・ザ・キッド」組曲

・ヒンデミット:交響曲『画家マティス』(1962年)
・エルガー:行進曲『威風堂々』第1番(1963年)
・ヴェーベルン:管弦楽のための牧歌『夏風の中で』(1963年)
・リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲(1965年)

➡ オーマンディには初期の作品集 Eugene Ormandy Conducts Various Composers もありますが、フィラデルフィア・サウンドの肌理細やかさを味わううえでは録音の良い本集から手にとるのが良いと思います。
 
 
 



  





 

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