金曜日, 1月 01, 2021

シノーポリ ル・サロメ を聴く

 


シノーポリ 『ルー・サロメ』
[1]組曲第1番〔1/導入,2/あなたを愛してあげることができたのに〕
[2]組曲第2番1/導入,2/サン ピエトロ大寺院,3/ワルツ,4/速く不安げに,5/レントラー,6/歌〕
(演奏)シノーポリ/ シュトゥットガルト放送so [1]-2,[2]-6/ルチア・ポップ(S) [1]-2/ホセ・カレーラス(T)
録音:[1]1983, [2]87年/収録時間:47分

WEDNESDAY, MAY 06, 2015


書いたのはもう5年前になる。主人公の個性が上記のとおり、あまりに強烈なので、どうも関心はそちらの方に向かいがちで、シノーポリの作品そのものに集中しにくい。今回、聴き直す。

まず第1に、音楽の構成としては、オペラからの組曲ということなので、かなり具象的であり、シノーポリの作曲上の師といわれるマデルナやシュトックハウゼンよりもはるかに聴きやすいだろう。

第2に、華麗なオーケストレーションや不協和音の部分など、折々に両師譲りの現代音楽的な手法はおそらく駆使されているが、音楽の基調は19世紀的、ウィーン学派的、かつその折衷様式といった感じをうける。R.シュトラウスの表題音楽的な部分(『ツァラトウストラ・・・』)もあれば、マーラー的な長く詠嘆的な美調もあり、良い意味で乾いたウィーン学派的な無調も混在している。才能あふれたシノーポリの流儀なのだろうが、こうした音楽的な素材が次々に繰り出されるので飽きないで聴くことができるだろう。

第3に、ポップ、カレーラスの声楽起用は作曲家シノーポリの好みなのだろうが、女声には主人公の来歴との関係では、蠱惑的な部分はあまりなく、男声はむしろ生真面目ですらある。掛け合いの場は一種の「心理戦」を切り取ったような感じをうける。

オペラの全曲を聴いて(観て)みないと魅力の本質はわからないが、組曲を聴く限りにおいては、作品としての完成度が高いとは思えない。才気煥発なオーケストレーションの断片集といった感じをもった。

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