ぼくは、コンヴィチュニーでは8番はよく聴くが、今日は最近入手した5番をかける。どっしりとした厚みある音響が満ちていく。テンポは第3楽章を除き、全般に鷹揚としており、ゲヴァントハウスの弦楽器のとても自然で滑らかなれど、どことなく淡くくすんだ音色が実に魅力的である。管楽器の音色も8番とは違ってけっして出すぎず、刺激的でなく安定しており、そして両者の融合は見事である。
全体に、8番同様、意外性のないオーソドックスな解釈で、誰が演奏しているかを当てることは難しいような運行なのだが、個々の響きが重畳的に厚みをもって、徐々に迫ってきてだんだん感動へのエネルギーにこれが変換されていくように感じる。音楽の進行とともに、思わず引きこまれていく不思議な感興が湧いてくる。
コンヴィチュニーのほかの演奏をあまり聴いていないので、その「流儀」について触れることはできないが、ことブルックナーに関する限り、(ほかの人の優れた演奏でも書いてきたとおり)「原曲のもつ良さを作為なく、あくまで自然に表現さえすれば、感動は自ずと随伴する」という確信に満ちているような演奏。そして、それを可能ならしめているのは、質量ともに「名器」と言うべき、歴史と伝統に培われた固有の音響をもったこの古きオーケストラを守り、育ててきた指揮者自らの強い自信があるからなのだろう。
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