シャイーはブルックナーの全集を録音している。
■第0番 ニ短調(1869年ノヴァーク版) ベルリン放送交響楽団 1988年2月 15:15+13:47+06:47+10:35=46:24
■第1番 ハ短調(1891年ウィーン版) ベルリン放送交響楽団 1987年2月 13:13+13:45+09:11+18:05=54:14
■第2番 ハ短調(1877年ハース版) コンセルトヘボウ管弦楽団 1991年10月 19:39+18:13+09:42+19:39=67:13
■第3番 ニ短調(1889年ノヴァーク版) ベルリン放送交響楽団 1985年5月 20:41+15:49+07:01+12:20=55:51
■第4番 変ホ長調(1886年ノヴァーク版) コンセルトヘボウ管弦楽団 1988年12月 18:43+15:05+10:20+21:56=66:14
■第5番 変ロ長調(1878年原典版) コンセルトヘボウ管弦楽団 1991年6月 20:24+18:07+13:07+23:31=75:29
■第6番 イ長調(1881年原典版) コンセルトヘボウ管弦楽団 1997年2月7:05+16:44+08:58:14.27=57:30
■第7番 ホ長調(1885年ノヴァーク版) ベルリン放送交響楽団 1984年6月22:46+22:48+09:58+13:21=69:08
■第8番 ハ短調(1890年ノヴァーク版) コンセルトヘボウ管弦楽団 1999年5月 16:05+14:59+25:29+22:06=79:01
■第9番 ニ短調(1894年ノヴァーク版) コンセルトヘボウ管弦楽団 1996年6月 24:44+10:41+27:22=62:47
しかし、一気呵成にではない。7番の1984年から8番の1999年まで、なんと15年をかけてのじっくりと構えた録音であり、ベルリン放送交響楽団(7、3、1、0番)に続けて、コンセルトヘボウ管弦楽団(4、5、2、9,6,8番)にバトンタッチしての録音。版もノヴァークを基軸としつつも、曲によっては、原典、ハース、ウイーンを採用するなど独自の解釈を覗かせている。
今日は9番をかける。<波動>が伝わってくる。大きな波動、小さな波動、強い波動、ゆるい波動、そして見事な合成ーそのうねりがひたひたと迫ってくる。その目には見えない<波動>が心に浸潤してくるような演奏。第一楽章冒頭から「巧いなあ」と思う。いわゆる音楽への「没入型」ではなく、指揮者はあくまでも、どこか醒めた感覚は維持しながら、その見事な<波動>をつくっていく技倆は抜群である。
次にこうなってほしい、こういう音を聞きたいとリスナーに期待させる実に巧みな誘導ののちに、それを凌駕するテクスチャーを次々に繰り出していくような感じ。意図的に嵌めていく、と言えば「えぐい」だろうが、<波動>がとても美しく、力強く連続していく快感のほうが先にきて、技法の妙は隠して意識させない。こんな演奏をできる指揮者はそうざらにいない。ブルックナーの聴かせどころ、ツボを研究し尽くしているからこそできる技だろうが、だからといってけっしてリスナーには安易に迎合はしていない。
たいしたものです。
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