木曜日, 4月 08, 2010

ブルックナー vs フルトヴェングラー 交響曲第9番

・交響曲第9番 ベルリン・フィル(1944年10月7日)

録音:1944年10月7日、ベルリン(放送用録音、モノラル)http://www.hmv.co.jp/product/detail/1422264

 ブルックナーは、本人の思想とかかわりなく、のちにナチス、ヒットラーの寵愛をうけることになる。ヒトラーがワーグナーとともにブルックナーを好んだことは有名で、リンツはブルックナーの聖地として、そのオーケストラは「帝国」の冠をかざすことになる。そうした、生臭いナチスとブルックナーの関係は、フルトヴェングラーの活動にとっても大きな影を落とすことになる。フルトヴェングラーにとって、ワーグナーやブルックナーを演奏することは、本人の心象風景とは全く別に、ナチスとの関係では一種の音楽による「貢献」活動であったかも知れない。
 1944年10月。すでにドイツの敗色は誰の目からみても明らかになっており、未遂に終わったが、ヒトラー暗殺計画があったのが7月である。フルトヴェングラーはどういう気持ちでブルテに上がり、ブルックナーの最後の交響曲を演奏したことだろう。
 普通、そうしたことは音楽と関係して語るべきではないのかも知れない。しかし、フルトヴェングラーが本当に嫌っていたカラヤンは同じベルリンでこの年の9月、交響曲第8番の史上初のステレオ録音を行っていた(下記、Tuesday, March 30, 2010 「ブルックナーvsカラヤン 交響曲第8番(1944年)」を参照)。
 フルトヴェングラーによるブルックナー9番ー現状知られるこの唯一の演奏を聴いていると、霞がかった録音とともに、どうしてもそうした時代性を感じてしまう。第1楽章の乾いた無音階的な響き、続く魂を鷲づかみするような異様な深みあるフレーズ、第3楽章最後の消えゆく最後の金管の独奏は、一呼吸の限界まで引き摺る意図的、示唆的な処理。演奏評以前に、これは何を意味しているのか?を否応なく考えさせる音楽である。

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