金曜日, 1月 03, 2014

ルービンシュタイン 1 ショパン「24の前奏曲」




ルービンシュタイン(Arthur Rubinstein 1887128日~19821220日)は、はやくから米国で名声と最高の栄誉をえた。ポーランド出身のユダヤ人であり、激動の第二次大戦前後、欧州で生死の危険にさらされ、あくせくと気をつかってしているよりも、米国移住は肉体的にも精神衛生上もはるかに良かったかも知れない。長寿をまっとうした幸せな人であるように思うが、それでいて芸域は晩年まで高みを維持、より解釈に深みをましていった。

普通、安穏とした生活に甘んじていると、上昇する感性がにぶるものだが、ルービンシュタインは、結婚後数年間のブランク期間をのぞき、終始仕事に没頭し、晩年まで過密なスケジュールを超人的にこなし、むしろこれを楽しんだ。仕事が最良の健康の秘訣であり、日々のクスリであった。もうひとつ、彼のテンションを維持させたのはライヴァルの存在であったろう。米国にはもう一人の巨人ホロヴィッツ(Vladimir Horowitz 1903101日~1989115日)がいた。二人は、たがいの芸術を批判的にとらえ、自らのスーペリオリティ(superiority、優位性)を誇示するために一生涯、切磋琢磨した。リスナーからすれば嬉しいことで、いまも両巨頭のステレオ録音の成果を手にすることができる。

知識よりも認識力の練磨、技巧よりも解釈の深み、他者への意識よりも自己に対する責任感―年をとってからは前者から後者へのシフトが、すなわち人間としての熟成がいるのだろうが、言うはやすく行うは難し。ルービンシュタインは、その偉大なる実践者であったと思う。
 
 ショパン弾きの異名をとったルービンシュタインながら、苦手な演目もあったようだ。以下はNaxosからの引用。
 

ショパン:ピアノ・ソナタ第2番/24の前奏曲/3つの新しいエチュード/子守歌/舟歌(ルービンシュタイン)(1946-1958)

20世紀最大のショパン(1860-1849)弾きとして知られるルービンシュタインですが、「24の前奏曲」については、78回転の時代に1回したこの録音のみで、その後再録音されることはありませんでした。自身が「あまり出来が良くない」と語ったり、また批評家たちも「第3番のテンポが速すぎて杜撰だ」と評したりで、すっかり自信を失くしてしまったのかもしれません。とはいえ、ここで聴く演奏は、音は古いとは言え、躍動感たっぷりで、ルービンシュタインお得意のテンポ・ルバートもたっぷり。とても聴きごたえのあるものです。練習曲集も彼がほとんど演奏しなかった事で有名ですが、この「新練習曲」だけは別だったようで、楽しんで弾いている様子が伝わってきます。
録音 ニューヨーク RCA 第2スタジオ1946年3月11.18.19日…1-4, 1946年6月10.11.20日…5-28/ニューヨークマンハッタン・センター1958年4月21日…29-32/フランス1957年…33 マーク・オーバート=ソーン復刻(2011/08/17 発売)
http://naxos.jp/search/?p=2&keyword=%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%93%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%B3


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