ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」
ホルンの慎重なソロに、霧のように忍び寄る低弦という出だしから、大切に本曲を再現しようとするスイットナーの真摯なる姿勢が伝わってくる。テンポを崩さず曲をすすめるうちに、楽器の各パートの響きが見事にブレンドされていく。第2楽章もさほど暗くない。色調の統一感にも周到な配意がある。こうした“絶妙なバランス感覚”こそ、この老練な指揮者の持ち味なのだろう。弦と木管をうまくコントロールしながら音を重くしない技法はシューリヒトに共通するようだ。滔々とまろやかに流れるブルックナー・サウンドには快感がある。後半2楽章においても、必要なアッチェレランドは躊躇なくかけるが、激烈な音は残響の長いホールのなかで分散処理されて一切の刺々しさがない。
こうした演奏スタイルを評価するファンには、滋味あふれる良き演奏だが、ときに苛烈さも求めたい向きには、やや平板な印象をもつかも知れない。
小生はこうした節度ある、なによりも原曲の良さをどこまでも素直に表現しようとするスイットナーの安定感ある解釈、好ましく思う。
1987年5月12-15日 ベルリン・キリスト教会 合計収録時間 | 00:49:08
・交響曲 第2番 ハ短調(ノヴァーク版)
NHK交響楽団 1971年12月6日 東京文化会館
・交響曲 第3番 ニ短調(エーザー版)合計収録時間 | 00:57:21
NHK交響楽団 1974年12月17日 NHKホール
・交響曲 第4番 変ホ長調《ロマンティック》(ノヴァーク版)
NHK交響楽団 1980年11月27日 NHK ホール 合計収録時間 | 01:04:36
・交響曲 第4番 変ホ長調「ロマンティック」(ノヴァーク版)
1988年10月 ベルリン・キリスト教会 合計収録時間 | 01:05:00
・交響曲 第5番 変ロ長調(原典版)
1990年1月 ベルリン・キリスト教会 合計収録時間 | 01:09:31
・交響曲 第7番 ホ長調(ノヴァーク版)
1989年1月23-27日 ベルリン・キリスト教会 合計収録時間 | 01:03:07
・交響曲 第8番 ハ短調(ハース版)
1986年8月22-29日 ベルリン・キリスト教会 合計収録時間 | 01:20:20【演奏】シュターツカペレ・ベルリン
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