金曜日, 5月 13, 2016

テンシュテット  Klaus Tennstedt

クラウス・テンシュテット、グレートEMIレコーディングス ベルリン・フィル、ロンドン・フィル、シカゴ交響楽団(14CD限定盤)

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クラウス・テンシュテットは東独の指揮者(1926年メルセベルク生まれ)だったので、早くから頭角はあらわしつつも冷戦下「西側」へのデビューが遅れました。しかし、豊穣なボリューム感をもった音楽性には独自の良さがあります。

 

当初は、フルトヴェングラー、クレンペラーに続く古式ゆかしい指揮者と思っていましたが、聴き込むうちになんとも素晴らしい音づくりは彼独自のものと感じるようになりました。音の流れ方が自然で、解釈に押しつけがましさや「けれんみ」が全くありません。その一方で時に、柔らかく、なんとも豊かな音の奔流が聴衆を大きく包み込みます。そのカタルシスには形容しがたい魅力があります。

 

 

 

 

【収録情報】

CD1
・ベートーヴェン:交響曲第3番変ホ長調 op.55『英雄』
録音時期:1991年9月26日、10月3日
録音場所:ロンドン、ロイヤル・フェスティヴァル・ホール
録音方式:デジタル(ライヴ)
 
・ベートーヴェン:『プロメテウスの創造物』op.43~序曲
・ベートーヴェン:序曲『コリオラン』op.62
・ベートーヴェン:『エグモント』op.84~序曲
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
録音時期:1984年5月11-12日
録音場所:ロンドン、アビー・ロード第1スタジオ
録音方式:デジタル(セッション)
 
CD2
・ベートーヴェン:交響曲第6番ヘ長調 op.68『田園』
・ベートーヴェン:交響曲第8番ヘ長調 op.93
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
録音時期:1985年9月15,16,19日、1986年3月27日
録音場所:ロンドン、アビー・ロード第1スタジオ
録音方式:デジタル(セッション)
 
・ベートーヴェン:『フィデリオ』序曲 op.72b
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
録音時期:1984年5月11-12日
録音場所:ロンドン、アビー・ロード第1スタジオ
録音方式:デジタル(セッション)

 

Symphony Nos 3 6 7 8 Overtures

 

Symphony Nos 3 6 7 8 Overtures

 

(参考)ウィーン・フィルとの共演盤

ベートーヴェン:交響曲第3番 「英雄」、マーラー:交響曲第10番より アダージョ (Klaus Tennstedt / Beethoven : Symphonie Nr.3, Mahler : Sym. Nr.10 - ''Adagio'' / Wiener Philharmoniker 1982 Live) [2CD] [日本語解説付]



ベートーヴェン:交響曲第3番 「英雄」、マーラー:交響曲第10番より アダージョ (Klaus Tennstedt / Beethoven : Symphonie Nr.3, Mahler : Sym. Nr.10 -...



 

 

 

テンシュテット ブラームス 交響曲 第1番 第3番

 

 

ブラームス:ドイツ・レクイエム(ポップ/アレン/ロンドン・フィル/テンシュテット)(1984)

 

 

ブラームス:ドイツ・レクイエム(ポップ/アレン/ロンドン・フィル/テンシュテット)(1984)

 

最近聴いているテンシュテット

テンシュテット3

 

カラヤンが帝王としてベルリンに君臨していた時代にもかかわらず、テンシュテットは同時期に比較的多くの録音をベルリン・フィルと残している。ライヴェルの存在には人一倍厳しかったと言われるカラヤンがなぜそれを許容したのか、という疑問は残るが、東独出身でおそらくは自分とは全く違うタイプの演奏家であり、覇を競う相手とは考えていなかったのかも知れない。 

 

 

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テンシュテットのブルックナー交響曲第8番

 

いまは全くご無沙汰ながら、かってはNHKのFMで海外の音楽祭のエアー・チェックを楽しみにしていた。その最後が198184年頃で九州へ転勤し、当時は東京に比べてライブでのコンサートが聴きにくくなったため、FMに一時回帰していたと思う。いまはライブにも全く出かけないし、FMも聴かない。もっぱらCDか過去に収録したテープをまわしている。

さて、過去カセットにとったテンシュテット/ベルリン・フィルのブルックナーの8番を聴いている(1981年11月21日ベルリンでのライブ)。遅い遅い演奏で、特に第3楽章のアダージョ後半の第2主題を奏するヴァイオリンの引っぱり方などは限界に挑んでいるかのような緩慢さである。しかし、そこに籠められるのはとても深い豊かな響きである。フルトヴェングラー、クナッパーツブッシュ、そしてチェリビダッケなどにも共通するが、遅いテンポの持続は、その少しの変化でも微妙な表情づけを可能とする。第4楽章も同様。速くなく(nicht schnell)どころではなく第3楽章の長い延長線が続く。フィナーレもコラール風の句の前後で若干、テンポが上がるが最後までほぼ巡航速度は維持される。フルトヴェングラーのようなアゴーギグにともなうクレッシェンドやディミニュエンドの多用はなく、使われる場合はかなり抑制的に(しかし、それゆえ効果的に)発動される。聴き終わってー深い感動。テンシュテットはやはり凄い。

 


CD8
・シューマン:交響曲第3番変ホ長調 op.97『ライン』
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音時期:1978年10月17-18日
録音場所:ベルリン、フィルハーモニー
録音方式:ステレオ(セッション)

・シューマン:交響曲第4番ニ短調 op.120
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音時期:1980年4月18-20,22日
録音場所:ベルリン、フィルハーモニー
録音方式:デジタル(セッション)

CD9
・R.シュトラウス:交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』op.作品30
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
録音時期:1989年3月
録音場所:ロンドン、ワトフォード・タウン・ホール
録音方式:デジタル(セッション)

・R.シュトラウス:交響詩『ドン・ファン』op.20
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
録音時期:1986年9月
録音場所:ロンドン、ウォルサムストウ・アセンブリー・ルームズ
録音方式:デジタル(セッション)

・R.シュトラウス:交響詩『死と変容』op.24
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
録音時期:1982年3月28,29日
録音場所:ロンドン、アビー・ロード第1スタジオ、
録音方式:デジタル(セッション)

R.シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」OP.30

 

このアルバムは象徴的である。「ツァラトゥストラ・・・」は不思議な曲、難解な曲と言われ、「埋葬の歌」や「病から回復に向かう者」といった表題をもった部分もある。テンシュテットは録音時点の1989年3月、重篤な病気闘病中であり、なぜこの曲の録音を行なったのか、いかなる心象で臨んだのかといった関心は否が応にも高まる。

しかし、そんなことは付随的とも思わせる素晴らしいスケール感の、これは名演である。オルガンのぶ厚く低いイントロ、低音のトレロモ、トランペットの輝かしい閃光的な登場といった有名な序奏から終曲「さすらい人の夜の歌」まで一気に駆け抜けるような集中力ある演奏で、とても病気を押して演奏しているような風情はない。気迫にあふれ、バランス感絶妙の本演奏を接して、これほど気宇浩然の魅力的な曲だったのかと驚くリスナーも多かろう。1986年3月録音の「ドン・ファン」も同様な印象。テンシュテットがいかにR.シュトラウスを得意にしていたかを知る格好な1枚である。

Great EMI Recordingsでの購入も一案

 

 

CD10
・ワーグナー:『ワルキューレ』~「ワルキューレの騎行」
・ワーグナー:『神々の黄昏』~「夜明けとジークフリートのラインの旅」
・ワーグナー:『神々の黄昏』~「ジークフリートの死と葬送行進曲」
・ワーグナー:『ラインの黄金』~「ワルハラへの神々の入場」
・ワーグナー:『ジークフリート』~「森のささやき」
・ワーグナー:『ワルキューレ』~「ヴォータンの別れと魔の炎の音楽」
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音時期:1980年10月6,8,9日
録音場所:ベルリン、フィルハーモニー
録音方式:デジタル(セッション)

CD11
・ワーグナー:『タンホイザー』序曲
・ワーグナー:『リエンツィ』序曲
・ワーグナー:『ローエングリン』第1幕への前奏曲
・ワーグナー:『ローエングリン』第3幕への前奏曲
・ワーグナー:『ニュルンベルクのマイスタージンガー』第1幕への前奏曲
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音時期:1982年12月15日、1983年4月16,17日
録音場所:ベルリン、フィルハーモニー
録音方式:デジタル(セッション)

CD12
・メンデルスゾーン:交響曲第4番イ長調 op.90『イタリア』
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音時期:1980年4月18-20,22日
録音場所:ベルリン、フィルハーモニー
録音方式:デジタル(セッション)

・シューベルト:交響曲第9番ハ長調 D.944『グレート』
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音時期:1983年4月21-22日
録音場所:ベルリン、フィルハーモニー
録音方式:デジタル(セッション)
 

シューベルト:交響曲第9番「ザ・グレート」

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堅牢な構成力にすぐれつつも、ときに統制を緩めたような音の奔流が魅力のテンシュテットらしさが良くでた1枚ではないかと思う。のちのブルックナーの交響曲へと通じるシューベルトの「遺作」をもっとも感じさせる演奏である。ベルリン・フィルの本曲演奏ではカラヤン盤(1978年)も迫力に満ちた代表盤だが、その5年後のテンシュテット盤には、もう少し素朴で、一切の技巧のない自然体の雰囲気がある。たとえば第4楽章の音の大きなうねりのあと、意想外にスッと引くようなしなやかなエンディングは、強烈なカラヤン盤とは異なるが、かえってなんとも嫋嫋たる余韻が残る。こうしたところにこそ、いかにもテンシュテットらしい爽快感があると思う。





CD13
・ムソルグスキー:交響詩『禿山の一夜』(リムスキー=コルサコフ編)
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
録音時期:1990年5月10日
録音場所:ロンドン、アビー・ロード第1スタジオ
録音方式:デジタル(セッション)

・コダーイ:組曲『ハーリ・ヤーノシュ』
・プロコフィエフ:組曲『キージェ中尉』
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
録音時期:1983年9月22,23,26日
録音場所:ロンドン、アビー・ロード第1スタジオ
録音方式:デジタル(セッション)

CD14
・ベートーヴェン:『レオノーレ』序曲第3番 op.72a
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
録音時期:1984年5月11-12日
録音場所:ロンドン、アビー・ロード第1スタジオ
録音方式:デジタル(セッション)

・シューマン:4本のホルンのためのコンチェルトシュトゥック ヘ長調 op.86
ノルベルト・ハウプトマン、マンフレート・クリア、クリストファー・コーラー、ゲルト・ザイフェルト(ホルン)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音時期:1978年10月17-18日
録音場所:ベルリン、フィルハーモニー
録音方式:ステレオ(セッション)

・ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ長調 op.95『新世界より』
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音時期:1984年3月14,15日
録音場所:ベルリン、フィルハーモニー
録音方式:デジタル(セッション)
クラウス・テンシュテット(指揮)

 
ドヴォルザーク:交響曲第9番

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たしかに完璧な構成力を誇るカラヤン/ベルリン・フィルとは趣きのことなった「新世界」である。ベルリン・フィルはとても伸び伸びと演じているように聞こえる。テンシュテットらしくオケの自由度の幅を大きくとり、全体に鷹揚とした構えながら、要所要所では鋭角的なリズミックさを強調しつつ、メロディの丹念な彫琢もキチンと行っていく。木訥とした泥臭さをどこか遠くに感じさせながら、ベルリン・フィルのアンサンブルは申し分ない。弦と木管が前面にでて、全体に自然でしなやかな感じをよくだしている。小生好みのノイマン/チェコ・フィルの演奏にも通じるものがある。聴いて飽きのこない佳演。

 

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