月曜日, 7月 25, 2022

ブロムシュテット ドキュメンタリー  Herbert Blomstedt









深夜に以下の再放送をみた。ドキュメンタリーがとくに面白かった。

特集 ブロムシュテット - クラシック音楽館 - NHK

御年95才ながら矍鑠(かくしゃく)としている。音楽を語っているときは青年のような純粋さと熱情を垣間見せる。ブロムシュテットを見て「年令とはなんなのだろう」と素朴な感想をもつのは老若男女を問わないのではないか。

大指揮者ニキシュは、芸術的には偉大な指導者であったが団員とはフランクな付き合いで敬慕された。その後任のフルトヴェングラーは感情の起伏が大きく、はじめ団員はとまとったが、次第に愛されるようになった。フルトヴェングラーとトスカニーニはお互い仲が悪く反目していたが、トスカニーニはより現代的なスタイルの指揮者であった。ワルターは人間に対して透徹とした理解をもっていた。ベームのレーグナー(モーツァルト変奏曲)を聴いて本当に感動した。カラヤンの発言エピソード(「ベルリンで仕事に就かなかったらここに来ていただろう」)が東独で働くきっかけになったこと。78才で常任を辞した心境。マズア、シャイーについての高い評価。自身については才能に乏しく必死で努力したとの一貫した謙虚な姿勢。聖トマス教会のパイプオルガンを独習し、バッハを系統的に演奏した経験、ロ短調ミサ(合唱18部、独唱9部)の質量の圧倒的な高さなどバッハへの畏敬の念。ブルックナー音楽への若き日からの深い理解と愛(第4番、第6番を口ずさむ)、その一方、マーラーについては当初は通俗的と見ていた時期があること(第1番の演奏風景)。マーラー・ブームの到来に対しては、あえてブルックナーを取り上げてバランスを取りたかったとの思いがけない発言。

17年前に先立たれた愛妻家の墓前での寂しそうな顔、還暦をこえた二人の娘さん(医師)の音楽的な才能を高く評価する家族愛。あいかわらずの菜食主義者の食卓。自然のなかでの芸術的な直観の大切さ。非常な読書家と膨大なライヴラリー。弛まぬ読譜の努力。団員を大切にする非常なる気配り。日常での笑顔と指揮台での真剣な表情のコントラスト。そして精錬にして清浄なる響きの秘密。凜として立ち、衰えぬ正確な指揮ぶり。

(参考1)

ブロムシュテットのブルックナー (shokkou3.blogspot.com)

ブルックナー ライプチッヒとドレスデンの響き Bruckner Leipzig Dresden (shokkou3.blogspot.com)

ブルックナー ゲヴァントハウスの響き (shokkou3.blogspot.com)

ブルックナー シュターツカペレ・ドレスデンの響き (shokkou3.blogspot.com)

(参考2)

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第1&2番 ~アルゲリッチで聴く 名盤5点  Martha Argerich (shokkou3.blogspot.com)

アルゲリッチとは、あまり相性が良さそうには見えなかった。というよりも78才のアルゲリッチが、もっと93才のブロムシュテットをリスペクトすべきではないか、などと思いながら見てしまったが、あまり彼女の体調(ないし気分)がすぐれなかったのかも知れない。アンコールのシューマン(子供の情景)を隣で立って聴いているブロムシュテットの姿には、ちょっと申し訳ないような、気の毒な気がした。


 

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