日曜日, 6月 19, 2022

ショスタコーヴィチ   Shostakovich 










ショスタコーヴィチの多彩な風貌 (amazon.co.jp)


選曲、演奏陣とも充実したセット。交響曲では、ミトロプーロス  Dimitri Mitropoulos (1896-1960) Conductor  がショスタコーヴィチ  交響曲第5番&第10番  などをニューヨーク・フィルで積極的に取り上げたのが下敷きとなって、バーンスタイン  交響曲第5番  の名盤が生まれたのではと思った。一方、ベルリン・フィルでは、カラヤンが録音で取り上げたのは10番  Shostakovich: Symphony No.10 In Eminor, Op. 93  のみで、チェリビダッケの古い音源(7,9番)には希少価値がある。

本セットの魅力は、ショパンコンクールにも出場した「名ピアニスト」としてのショスタコーヴィチを知ることができることで、ピアノ協奏曲第1番、第2番(バックは、クリュイタンス/フランス国立放送管弦楽団で文句なし)、ピアノ三重奏曲第2番、2台のピアノのためのコンチェルティーノなどが所収されている。

また、オイストラフのヴァイオリン協奏曲第1番、ギレリスの24の前奏曲とフーガなど旧ソ連の名演奏家の秀演やハイフェッツの前奏曲なども聴きもの。
弦楽四重奏曲や交響曲第10番を除き、全般の録音は古く音質の悪さは否めないが、この価格である。ショスタコーヴィチの多彩な風貌を知る上では有益なセット。

(収録情報、カッコ内録音時点)

【交響曲】
・交響曲第5番(1952年):ミトロプーロス/ニューヨーク・フィル
・交響曲第7番『レニングラード』(1946年):チェリビダッケ/ベルリン・フィル
・交響曲第9番(1947年):チェリビダッケ/ベルリン・フィル
・交響曲第10番(1995年):フランク・シップウェイ/ロイヤル・フィル

【管弦楽曲】
・組曲『馬あぶ』抜粋(1995年):ジョナサン・カーネイ(ヴァイオリン)
 フランク・シップウェイ/ロイヤル・フィル
・祝典序曲(1994年):マッケラス/ロイヤル・フィル

【協奏曲】
・ピアノ協奏曲第1番、第2番(1958年):ドミトリー・ショスタコーヴィチ(ピアノ)
 クリュイタンス/フランス国立放送管弦楽団
・ヴァイオリン協奏曲第1番(1956年):オイストラフ(ヴァイオリン)、ミトロプーロス/ニューヨーク・フィル

 
【室内楽曲】
・ピアノ五重奏曲ト短調 op.57(1952年):ヴィクター・アラー(ピアノ)、ハリウッド弦楽四重奏団
・ピアノ三重奏曲第2番(1945年):ドミトリー・ショスタコーヴィチ(ピアノ)
 ディミトリ・ツィガノフ(ヴァイオリン)、セルゲイ・シリンスキー(チェロ)
・弦楽四重奏曲第2番、第8番(1995年):ザポルスキー四重奏団
・弦楽四重奏曲第3番(1998年):カイリン四重奏団

【ヴァイオリン曲】
・前奏曲嬰ハ短調 op.34-10、前奏曲変ニ長調 op.34-15(ツィガノフ編、マガニーニ編)(1945年):ハイフェッツ(ヴァイオリン)、エマニュエル・ベイ(ピアノ)

 
【ピアノ曲】
・2台のピアノのためのコンチェルティーノ(1956年):マキシム&ドミトリー・ショスタコーヴィチ(ピアノ)
・24の前奏曲とフーガより第1番、第5番、第24番(1954/1955年):ギレリス(ピアノ)
・同第1番、第4番、第5番、第8番、第22番、第23番、第24番、3つの幻想的舞曲、子供のノート(1946/1958年):ドミトリー・ショスタコーヴィチ(ピアノ)


お家芸を誇る一流の指揮者の競演 (amazon.co.jp)


全15曲のうち、初演指揮者がその後、録音した音源が、4、6、8、13、14、15番の6曲ある。一方で、5、6、8、9、10、12番の6曲を初演したムラヴィンスキーの収録分は2曲にとどまり、コンドラシンが、2、3、4、12、13番の5曲(全体の1/3)を振っている。

様々な制約があるのかも知れないが、ユニークさを出すのであれば、極力、初演指揮者による編集という手もあったのではないかとも思う。とはいえ、お家芸を誇る一流の指揮者の競演であり演奏に定評があることに変わりはない。

一方で、ショスタコーヴィチでは録音の鮮度にこだわりのある向きもあろう。その点では、本集はいまや録音時点がやや古く、色褪せてみえるかも知れない。同一指揮者による全集で、録音も新しく廉価盤としては、
 Shostakovich Complete Symphonies  などの選択肢もあろう。

<収録情報:(→では初演について記載)。*は初演指揮者>
第1番:ロジェストヴェンスキー/ソ連国立文化省響(1984年)
(→1926年、ニコライ・マルコ/レニングラード・フィル)

第2番:コンドラシン/モスクワ・フィル、ソ連国立アカデミー合唱団(1972年)
(→1927年、マルコ/レニングラード・フィル、レニングラード国立アカデミー・ア・カペラ合唱団)

第3番:コンドラシン/モスクワ・フィル、ソ連国立アカデミー合唱団(1972年)
(→1930年、アレクサンドル・ガウク/レニングラード・フィル)

第4番:*コンドラシン/モスクワ・フィル(1966年)
(→1961年、コンドラシン/モスクワ・フィル)

第5番:スヴェトラーノフ/ソ連国立響(1977年)
(→1937年、ムラヴィンスキー/レニングラード・フィル)

第6番:*ムラヴィンスキー/レニングラード・フィル(1972年)
(→1939年、ムラヴィンスキー/レニングラード・フィル)

第7番:スヴェトラーノフ/ソ連国立響(1968年)
(→1942年、サムイル・サモスード/ボリショイ劇場管弦楽団)

第8番:*ムラヴィンスキー/レニングラード・フィル(1961年)
(→1943年、ムラヴィンスキー/ソヴィエト響)

第9番:ロジェストヴェンスキー/ソ連国立文化省響(1983年)
(→1945年、ムラヴィンスキー/レニングラード・フィル)

第10番:テミルカーノフ/レニングラード・フィル(1973年)
(→1953年、ムラヴィンスキー/レニングラード・フィル)

第11番 : コンスタンティン・イワノフ/ソ連国立響(1965年)
(→1957年、ナタン・ラフリン/ソヴィエト国立響)

第12番 : コンドラシン/モスクワ・フィル(1972年)
(→1961年、ムラヴィンスキー/レニングラード・フィル)

第13番:*コンドラシン/モスクワ・フィル、ソ連国立アカデミー合唱団、ゥール・エイゼン(バス)(1967年)
(→1962年、コンドラシン/モスクワ・フィル、ロシア共和国合唱団&グネーシン音楽大学合唱団、バス独唱ヴィタリー・グロマツキー)

第14番:*ルドルフ・バルシャイ/モスクワ室内管、(ソプラノ)ガリーナ・ヴィシネフスカヤ、(バス)マルク・レシェーチン(1969年)
(→1969年、バルシャイ/モスクワ室内管、(ソプラノ)マルガリータ・ミロシニコワ、(バス)エフゲニー・ウラジミロフ)

第15番:*マキシム・ショスタコーヴィチ/モスクワ放送響(1972年)
(→同上)


オーマンディ ショスタコーヴィッチ演奏の先駆 (amazon.co.jp)


オーマンディは米国にあって、実はショスタコーヴィッチ演奏の先駆者である。残念ながら、その音源はあまり有名ではないが、本集(交響曲第1番、第4番、第5番、第10番、チェロ協奏曲第1番、組曲「黄金時代」作品22a‾第3曲:ポルカ)に加えて、第13番~第15番ほか以下の分売が出ている。

◆交響曲第1番&チェロ協奏曲第1番 
➡ 
 Shostakovich: Symphony No.1, Cello Concerto No. 1 (このジャケット写真の両雄の表情は実によい)
◆交響曲第4番、第10番
➡ 
 Symphonies 4 & 10  
◆交響曲第13番 「バービイ・ヤール」
➡ 
 ショスタコーヴィチ:交響曲第13番「バービイ・ヤール」
◆交響曲第14番 「死者の歌」 
➡ 
 ショスタコーヴィチ:交響曲第14番「死者の歌」 / ブリテン:「ピーター・グライムズ」〜4つの海の間奏曲、パッサカリア
◆交響曲第15番 
➡ 
 Symphony 15 in a Major / Piano Sonata 2

以下は代表的な第5番について。本曲はバーンスタイン盤とかぶるので、レコード会社の方針もあってか、バーンスタインの5番+オーマンディのチェロ協奏曲第1番(ヨー・ヨー・マ)のカップリングが主力で、オーマンディの5番の存在の影はうすい。しかし、これはこれで素晴らしいものである。フィラデルフィア・サウンドを強調するあまり、各楽器を際立たせた録音になっており、その分全体の構成力が見えにくいが、よく耳を研ぎ澄ませば、全体のバランスもよく、熱情型とは異なるテンポの安定した冷静で分析的な演奏であることがわかる。曖昧さのない明解で、かつクリアなサウンドは、作曲家自身が高く評価したとおりショスタコーヴィッチの優れたオーケストレーションをよく描ききっていると思う。

➡ 
 Eugene Ormandy Conducts 20th Century Classics  も参照


ヤンソンスの美学ー響きの深みと美しさ (amazon.co.jp)


 古い音楽ファンなので1970年、レニングラード・フィルの初来日で父アルヴィド・ヤンソンスのショスタコーヴィチの5番の熱演も聴いた。その子マリス・ヤンソンスも当年古希(ゲルギエフのちょうど10才上)。父の時代は、ムラヴィンスキー全盛期で一糸乱れぬといった厳しい軍律の支配するような演奏が中心だったが、マリス・ヤンソンスの演奏は全体構成もオーケストラの操舵も柔軟であり、響きの深みと美しさをより強調している。練られた演奏であり周到に準備された録音である。

  全10CDの構成(プログラム・ビルディング)も巧み。CD1で交響曲1番&15番をパッケージし、いわば「始め」と「終わり」を結合して、全体を通観するような仕掛けとなっている(ゲルギエフ盤なども同様。相性の良い組み合わせである)。

  オーケストラの<競演>といった視点からは、手兵だったバイエルン放送響、オスロ・フィル以外では、1番(ベルリン・フィル)、5番(ウィーン・フィル)、7番(サンクト・ペテルブルグ・フィル)、8番(ピッツバーグ響)、10、11番(フィラデルフィア管)、15番(ロンドン・フィル)と多彩、かつ人気・主力の番数での有力オケの起用はヤンソンスの実力を余すところなく示している。

<収録情報>
◆交響曲
・第1番へ短調 Op.10  ベルリン・フィル(1994年6月)
・第2番ロ短調 Op.14『10月革命に捧ぐ』※ (2004年6月)
・第3番変ホ長調 Op.20『メーデー』 ※ (2005年1月)
・第4番ハ短調 Op.43 ※ (2004年2月)
・第5番二短調 Op.47 ウィーン・フィル(1997年1月)
・第6番ロ短調 Op.54 オスロ・フィル(1991年1月)
・第7番ハ長調 Op.60『レニングラード』サンクト・ペテルブルグ・フィル(1988年4月)
・第8番ハ短調 Op.65 ピッツバーグ交響楽団(2001年2月)―リハーサル付
・第9番変ホ長調 Op.70 オスロ・フィル(1991年1月)
・第10番ホ短調 Op.93 フィラデルフィア管弦楽団(1994年3月)
・第11番ト短調 Op.103『1905年』 フィラデルフィア管弦楽団(1996年12月)
・第12番ニ短調 Op.112『1917年』 ※(2004年6月)
・第13番変ロ短調 Op.113  セルゲイ・アレクサーシキン(バス) ※(2005年1月)
・交響曲第14番ト短調 Op.135『死者の歌』 ラリッサ・ゴゴレウスカヤ(ソプラノ)、セルゲイ・アレクサーシキン(バス) ※ (2005年10〜11月)
・交響曲第15番イ長調 Op.141 ロンドン・フィル(1997年4月)

◆その他
・映画音楽『馬あぶ』からの組曲 Op.97a(ロマンス、定期市) ロンドン・フィル(1997年4月)
・ジャズ組曲第1番、第2番〜ワルツ第2番、タヒチ・トロット Op.16 フィラデルフィア管弦楽団(1996年12月)
 
※はバイエルン放送響(&バイエルン放送合唱団)


ショスタコーヴィチ (shokkou3.blogspot.com)

ショスタコーヴィチ 交響曲〔全〕集 名盤5点 

 革命 ~バーンスタイン 名盤5点  Shostakovich: Symphony No.5

ショスタコーヴィチ 交響曲 第5番  ちょっと変わった<私的5選> 

 

0 件のコメント: