土曜日, 4月 21, 2018

チャイコフスキー ~交響曲、ピアノ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲、バレエ音楽、歌劇 名盤5点

チャイコフスキー:交響曲第4-6番

交響曲

比類なき名盤 (amazon.co.jp)

ムラヴィンスキーは旧ソビエト連邦時代、全ソビエト指揮者コンクールで優勝、直ちに当時同国最高のレニングラード・フィル(現在のサンクトペテルブルク)の常任となる。1938年、時に35才の俊英であった。
 本盤所収の録音は、4番(1960年9月14〜15日、ロンドン、ウェンブリー・タウンホール)、5番(同年11月7〜9日、ウィーン、ムジークフェラインザール)、6番(同年11月9〜10日、5番と同じ)であり、この「幻の」指揮者とオケの実質、西欧デビュー盤である。
 これぞチャイコフスキー本国の正統的な解釈の演奏というのが当時のふれこみであったろうが、実際は、そんな生易しいものではなく、冷戦時代の旧ソ連邦の実力を強烈に印象づける最高度の名演である。
 日本にはEXPO’70で来演したが、残念ながらこの時はヤンソンスの代演となった。しかし、それですら、レニングラード・フィルの衝撃には言葉を失った鮮烈な記憶がある。オケのメンバーはステージ上、誰も無駄話などしない。皆がソリストのような緊張感にあふれ、彼らの合奏は、よく訓練された軍隊の一糸乱れぬ閲兵式を彷彿とさせるものであった。
 十八番の名演といった表面的なことでなく、この時代、このメンバーでしかなしえない、極度の緊張感と強力な合奏力を背景とした、比類なきチャイコフスキー演奏といってよいだろう。4、5、6番ともに通底する一貫した解釈と各番の性格の違いの明確な浮き彫りにこそ、本盤の特色がある。
 録音は半世紀前であり、いまのレヴェルでは物足りないだろうが、それを上回る往時の覇気がある。歴史的名盤である。



1962年9月ウィーンでの録音。リヒテルの西側デビューが1960年で、「幻の巨匠」の噂は西欧を走ったが、2年後、その評価を決定づけたのが本盤。カラヤンのバックで、いわばキラー・コンテンツのチャイコフスキーの1番を引っさげての登場だったので話題性は十分。付随的に、カラヤンは当時、ウィーン・フィルとの関係が冷えており、(実はかつてから相性のよい)ウィーン響を使っての演奏。これも「意外性」があって一層注目度を上げた。

個人的な思い出だが、中・高校の昼休みに毎日、このレコードがかかる。幾度も耳にした演奏だが、いま聴き直すとライヴ的なぶつかりあい感、「即興性の妙」よりも、リヒテルの強烈な個性と巨大な構築力を、周到に考えぬきカラヤンが追走している姿が思い浮かぶ。カラヤンはEMI時代から、協奏曲でもギーゼキングなどとの共演で抜群の巧さをみせるが、特に本盤での阿吽の呼吸は、ピアニストと共同して音楽の最高の地点に登攀していくような臨場感がある。けっして出すぎず、しかし背後の存在感は巨大といった感じ。だからこそ、リヒテルという稀代の才能の「衝撃」に聴衆の照準はぴたりと合う。これぞ協奏曲演奏の模範とでも言えようか。



メンデルスゾーン&チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ほか

ヴァイオリン協奏曲

抜群の演奏 (amazon.co.jp)

チャイコフスキーは、古くはバルビローリ/ロンドン・フィル盤(1937年3月25日ロンドン、アビー・ロード・スタジオ)やヴァルター・ジュスキント/フィルハーモニア管盤(1950年6月19&20日 ロンドン、アビー・ロード・スタジオ)もあるが、この満を持してのライナー/シカゴ響(1957年4月19日 シカゴ・シンフォニーホール)が決定盤との評価が一般的である。
作曲時、超絶技巧ゆえに演奏不可能といわしめた難曲ながら、ハイフェッツは苦もなく楽々と弾ききっているように感じる。どこにも淀みも軋みもなく音楽が滔々と流れていく。ライナーの解釈もあってか全体に劇的で張り詰めた緊張感がつづくが、ハイフェッツは己が流儀をかえず強音よりも表現力の充実に神経を集中している。この時代の録音の特色でオーケストラ・パートがデフォルメされて被さってくるので、今日の録音になれた耳ではやや気に障るかも知れないが、ハイフェッツの至芸を知るうえでは問題はないだろう。



チャイコフスキー:3大バレエ

バレエ音楽

「3大バレエ組曲」、エクセレンスな逸品 (amazon.co.jp)

3大バレエ組曲(白鳥の湖、くるみ割り人形、眠りの森の美女)。カラヤンはフィルハーモニー(1952年)、ウィーン・フィル(本盤、1961、1965年)、ベルリン・フィル(1966、1971年)の3種ほかの録音を残している。基本的にどれも見事にシンフォニックで一貫した解釈だが、快速&ダイナミズム感の強いフィルハーモニー盤、完璧な音響空間に身をおきたければベルリン・フィル盤といった感じか。小生は従来からこのウィーン・フィル盤こそ、上記カラヤンの3種中のベストとともに、3組曲での最右翼の名盤ではないかと思っている(全曲、組曲ともアンセルメも秀逸)。

 カラヤンは若き日からチャイコフスキーを得意(特に「悲愴」)としており、ベルリン・フィルとの交響曲全集はいまも燦然と輝く。「大曲」勝負の交響曲にくらべて、カラヤンはここでは、堂々たるシンフォニックな構えとともに、ときに洒脱で切なく、ときに軽妙でウイッティな表情も自在に表現してみせる。そして、ウィーン・フィルの音は瑞々しく柔らかく、その一方、強音部では躍動的で美しい。その抜群の融合がエクセレンスな名演を生んだ。本盤に限らずこの時代のカラヤン/ウィーン・フィルの音源はどれも秀逸(Legendary Decca Recordingsを参照)。



チャイコフスキー:歌劇「エウゲニ・オネーギン」 (2CD)  (Tschaikowsky, Pjotr Iljitsch: Eugen Onegin)



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