土曜日, 9月 11, 2021

カルロス・クライバー 魔弾の射手


 










2021年9月3日

1973年1~2月、ドレスデンのルカ教会で収録されたカルロス・クライバーの代表作。クライバーの名前を一気に高めた伝説の録音でもある。日本ではあまり取り上げられないが、ドイツでは人気の演目。ワーグナー楽劇の“祖型”をここにみることもできるウエーバーの最高傑作である。小生はかつてヨッフム/ベルリン・ドイツオペラの来日公演(日生劇場)で聴いたがいまもその一部の場面は鮮明の思い出すことができる。ストーリーがわかりやすく、ドイツの深い森への連想が自然に誘われる。そこは共通しつつ、なによりもクライバーの思い切りの良さ、音楽の推進力に圧倒される。ここまで揃えるかというほど、豪華な歌手の布陣。それらをものともせず縦横に操舵するクライバーの凄演。それは、歌手の能力を最大限引き出し、見事にオケと融合させるテクニックに裏打ちされている。ときにカラヤン以上の大胆さ、巧さを感じさせるクライバーの個性が光る。
<演奏者>
・ベルント・ヴァイクル(Br:オットカール)
・ジークフリート・フォーゲル(Bs:クーノ)
・グンドゥラ・ヤノヴィッツ(S:アガーテ)
・エディト・マティス(S:エンヒェン)
・テオ・アダム(Bs:カスパール)
・ペーター・シュライアー(T:マックス)
・フランツ・クラス(Bs:隠者)
・ギュンター・ライプ(Br:キリアン)
・ゲルハルト・パウル(語り:ザミエル)
シュターツカペレ・ドレスデン、ライプツィヒ放送合唱団(合唱指揮:ホルスト・ノイマン)

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2019年1月6日

カルロス・クライバー(1930年7月3日〜2004年7月13日)は、ドイツグラモフォン・レーベルでカラヤン、ベームにつづく次の世代の輝かしい旗手であった。緻密ながら迫力ある演奏スタイルが世を驚かせ、独特のカリスマ性をもっていた。
 クライバーは、レコード・CD全盛期の指揮者だが、その盛名に比し録音は極端に少ない。だが、録音すれば向かうところ敵なし、圧巻の名演を紡ぎ出した。少ないレパートリーに磨きに磨きをかけ、他の追従を許さないといった専門家、職人気質があった。
 本ボックスセットは、そのレパートリーの相当な部分をカヴァーしており、彼の全体像を知るうえで有効である。気難しい練習魔で、常任向きではないが、その天才的な音づくりには貴族的とも言える美学もあり、クライマックスでは迸るような迫力もある。名演群が押し寄せてくるといった衝撃があろう。「トリスタン」、「こうもり」の硬軟異質の2種はいまもベスト盤と思うが、その聞き比べも楽しい。いままでクライバーにあまり親しんでいない愛好家がBlu-ray Audioを含め一挙に揃えるには好適。但し、CDだけならより廉価盤もあります。

<収録一覧:録音時期>
【CD1】ウィーン・フィル/ベートーヴェン第5番&第7番:1974年3&4月、1975年11月、1976年1月
【CD2】ウィーン・フィル/ブラームス第4番:1980年3月
【CD3】ウィーン・フィル/シューベルト第3番&第8番:1978年9月
【CD4〜5】バイエルン国立歌劇場/J.シュトラウス『こうもり』全曲:1975年10月
【CD6〜7】バイエルン国立歌劇場/ヴェルディ『椿姫』全曲:1976年5月、1977年5、6月
【CD8〜10】シュターツカペレ・ドレスデン/ワーグナー『トリスタンとイゾルデ』全曲:1980年8&10月、1981年2&4月、1982年2&4月
【CD11〜12】シュターツカペレ・ドレスデン/ウェーバー『魔弾の射手』全曲:1973年1&2月
【Blu-ray Audio】上記全曲を『トリスタンとイゾルデ』以外は全て24-bitにリマスターした音源で収録(『トリスタンとイゾルデ』のみ16-bit)

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