木曜日, 9月 02, 2021

ラトル マーラー【廉価盤BOXセットの魅力】


 







ラトルがベルリン・フィルを去る日も近い。指揮者としてはいまだ「鼻たれ小僧」ともいわれる、60歳台前半にしてすでに最高峰を登りつめた彼が、これからどのような音楽活動を展開するのかが大いに楽しみだ。

そのラトルが2002年ベルリン・フィルのシェフに推戴されたのは、無名に近いバーミンガム市響CBSOを見事に鍛え上げ、ヨーロッパのスターダムにのせたことによる。しかも、引っ提げてきたキラーコンテンツの一つがこのマーラー・チクルスであったが、その録音記録の道のりは長い。CBSO、ベルリン・フィル、ウィーン・フィルをふくめ、全集完成は1986年の第2番に始まり2004年の第8番まで18年に及ぶ。

ほかにもマーラー音源はあるが、本集では、2番(1986年4月~6月)➡6番(1989年12月)➡7番(1991年6月)➡1番(1991年12月)➡4番(1997年5月)➡3番(1997年10月)➡10番(クック編)(1999年9月)➡5番(2002年9月)➡8番(2004年6月)➡9番(2007年10月)の順の収録である。ラトルは律義にも、ベルリン・フィルのシェフ就任後もCBSOとのと録音も行っている。

ラトルはマーラーについて多く語っているが、「私が今指揮者なのは、マーラーがあったからです」こそが最も率直なる吐露だろう。初期のマーラー演奏は実に初々しく「どろどろした情念」などとは一切無縁。徐々にロスバウトばりに楽器、楽節の浮き彫りが鮮明になり、その後は、アバドのような明燦な演奏スタイルとなっていくように感じる。現代マーラー解釈の典型的記録であり、デジタル録音の鮮度を考慮すれば、聴いて損はない、破格の廉価盤集である(紙ケースはオリジナル・ジャケットを使用。23ページの簡易解説付き)

【収録情報】
◆バーミンガム市交響楽団(&合唱団)との演奏

・交響曲第1番ニ長調『巨人』(1991年12月)
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マーラー:交響曲第1番「巨人」
・交響曲第2番ハ短調『復活』:アーリーン・オジェー(ソプラノ)、ジャネット・ベイカー(メゾ・ソプラノ)(1986年4月~6月)
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マーラー:交響曲第2番「復活」
・交響曲第3番ニ短調:ビルギット・レンメルト(アルト)(1997年10月)
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マーラー:交響曲第3番「夏の交響曲」
・交響曲第4番ト長調:アマンダ・ルークロフト(ソプラノ)(1997年5月)
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マーラー:交響曲第4番
・交響曲第6番イ短調『悲劇的』(1989年12月)
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マーラー:交響曲第6番「悲劇的」
・交響曲第7番ホ短調『夜の歌』(1991年6月)
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マーラー:交響曲第7番「夜の歌」
・交響曲第8番変ホ長調『千人の交響曲』:クリスティン・ブリューワー(ソプラノ)、ソイレ・イソコスキ(ソプラノ)、ユリアーネ・バンゼ(ソプラノ)、ビルギット・レンメルト(アルト)、ジェーン・ヘンシェル(アルト)、ジョン・ヴィラーズ(テナー)、デイヴィッド・ウィルソン=ジョンソン(バリトン)、ジョン・レリア(バス)、バーミンガム市ユース合唱団、ロンドン交響合唱団、トロント児童合唱団 (2004年6月)

◆ベルリン・フィルとの演奏

・交響曲第5番嬰ハ短調(2002年9月)
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マーラー:交響曲第5番
・交響曲第9番ニ短調(2007年10月)
・交響曲第10番(クック編)(1999年9月)

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