土曜日, 2月 05, 2022

ペトルーシュカ  名盤5点  Pétrouchka

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モントゥー

フランク:交響曲二短調&ストラヴィンスキー:ペトルーシュカ(期間生産限定盤)




The Great Conductors からの1枚、「ペトルーシュカ」をなにげなく聴き、本当に驚愕した。たっぷりと原色の油絵具をとり、これを思うさまカンヴァスに叩きつけるような演奏。リズムがあたかも自立的な意思をもって動き出すような躍動感に、めくるめく繰り出されるメロディが乱舞する。最近の整いすぎた大人しい演奏とは全く異質な、トリッキーで自由な動態の面白さ、もろものの抑圧から一気に解き放たれたようなスカット感―はじめて「ペトルーシュカ」の真髄にふれた気がした。初演指揮者モントゥーの面目躍如。


デュトワ

ストラヴィンスキー:バレエ「春の祭典」「ペトルーシュカ」

ぺトルーシュカ、 柔らかで整序されたアンサンブル (amazon.co.jp)


デュトワの音楽的感性はとびきり美質で、かつ研ぎ澄まされており、まさにミューズに祝福された才能の持ち主であると思いながら耳を傾けた。
ストラヴィンスキー演奏の一つの行き方である激しく「荒くれた」表現力はここでは完全にセーブされ、気品に満ち明るい音調が全体を支配する。「柔らか」でありながら、整序されたアンサンブルが清浄な湧き水のようにあふれ、そこに身をおく快感はデュトワならではである。「火の鳥」全曲版は特に有名だが、むしろ本集所収の「ぺトルーシュカ」(1911年版)の方がこの傾向がより端的にでているかも知れない。「春の祭典」も躍動感は十分だが、抑制にきいたクールヘッドな演奏である。
録音はモントリオール、聖ユスターシュ教会でなされ、音の広がり、残響ともに実に心地よい。

<収録情報>
・バレエ音楽『春の祭典』1984年5月
・バレエ音楽『ぺトルーシュカ』(1911年版)1986年11月


ブーレーズ 

ストラヴィンスキー:ペトルーシュカ、春の祭典




春の祭典とペトルーシュカなどストラヴィンスキー解釈について、ブーレーズ「以前」と「以降」では指揮者に再考を促したともいわれる音源。ブーレーズにはほかの録音もあるが、クリーブランドを振った本盤が規準版といっていいと思う。初演以来、スキャンダルさをもって登場した「春の祭典」では、それに引きずられ演奏も過度にアクセントをつけたものも多いが、ブーレーズは、緻密な構成と音楽の純度を高め、冷静に劇的な叙事詩としてこれを表現しているように感じる。一方、「ペトルーシュカ」も同様なアプローチだが、細部をゆるがせにせず、リズムとメロディの最適バランスをもって、管弦楽の精華とでもいうべき高みに達している。いまだベスト盤の一角を占める名演である。


アンセルメ

エルネスト・アンセルメ/ストラヴィンスキー:バレエ≪春の祭典≫≪ペトルーシュカ≫ (tower.jp)


シャイー


シャイ―の天性の“勘ばたらき”の良さが随所にみられる、実に楽しめるペトルーシュカである。ジャック・ズーン(フルート)、ペーター・マスーズ(トランペット)、ルード・ヴァン・デン・ブリンク(ピアノ)らによるコンセルトヘボウの名人芸が光るのはもちろんだが、瞼に次々に情景が浮かんでくるような、そして舞うバレリーナの躍動が見えるようなライヴ感こそが身上。バレエ曲はバレエ曲らしく、といった風情ながら、テンポ・コントロールは結構、小刻みに動かし実際の踊り向きかどうかはわからないが、そうした“纏”を大胆にしてみせるところがシャイーらしい。切れ味の良いリズム感と色彩感ある音色ともに申し分ない。1993年10月にアムステルダムにて収録。




ストラヴィンスキーの性格には狷介なところがあり、「春の祭典」では、カラヤンやオーマンディの演奏を酷評したことでも知られる。なぜか?おそらく原初的な宗教世界の「神聖」さについて、ストラヴィンスキーには思想的にも、表現上も強いこだわりがあったのだろう。
カラヤンやオーマンディの録音盤は、ベルリン・フィルの低弦の強烈な合奏力や、色彩感あふれるフィラデルフィア・サウンドが前面にでた、いわば”オーケストレーションの精華”的なアプローチが強かったと思う。それは、ストラヴィンスキーにとっては、求める音楽ではなかったようだ。その点、録音の悪さはあるが、マルケヴィッチは作曲家の真意をはかったような鋭き解釈が持ち味で、それは「神聖」であるかどうかはわからないが見事に「知的」である。
「火の鳥」ではデュトワを聴いて、これがひとつの行き方かなと思った。激しさよりもファンタジックで緻密なアンサンブルの妙によって、この曲の物語性が浮き彫りになると感じた。
その点で、ペトルーシュカには、あまり思想性を感じないし、物語性よりもバレエ本体の躍動感が重要なので、考えすぎずに曲そのものを寛いで楽しめるようにも思う。 



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