セルジュ・チェリビダッケ/ザ・ミュンヘン・イヤーズ<限定盤> (tower.jp)
本集の録音を3つに分類すれば、《第1グループ》はチェリビダッケの主力演目であり、ベートーヴェン、ブルックナーの交響曲集はいずれも1987~95年にかけて同時に収録されている。宗教曲系では“3大レクイエム”のほかミサ曲ロ短調は、《第2グループ》その他ドイツ演目のトップに掲げた。《第3グループ》は、イタリア系、フランス系、ロシア系およびその他に便宜的に分けたが、ここは系統的ではなくおそらくチェリビダッケの好みが反映されていよう。
若きチェリビダッケは戦後、ベルリン・フィルの実質シェフを務めたのち決別しベルリンを去った。それ以降、常任は不向き、練習魔、録音嫌い、仏教への傾倒などが話題となったが、鍛え上げたミュンヘン・フィルと、結果的に《第1、第2グループ》で貴重な録音を残したことは大きなメモリアルである。
以下は余談。先日、行きつけのクラシック音楽喫茶(これ自体がもはや“絶滅危惧種”だが)でブラームスの第1シンフォニーがかかった。濃密にして震えるような緊張感がときに貫く。しかし、そのテンポ設定は、どうしても恣意的に思えた。帰りがけにジャケットを見て、やはりチェリビダッケ(本集所収)であった。1968年、ベルリン・フィルについての映画を劇場に行って見た。チェリビダッケの振るエグモント序曲は鮮烈な印象だった。晩年、東京でブルックナーの第8番のライヴを聴いたが、その失速寸前に思えるギリギリの遅さが強度な緊張感を醸成していると感じた。こうした個性的な演奏スタイルは、“最後の巨匠”チェリビダッケの独壇場であっただろう。
<収録情報>(録音年)
《第1グループ》
【ベートーヴェン】
・交響曲集〔第2番~第9番〕(1987~95)
・『レオノーレ』序曲第3番(1989)
【シューマン】
・交響曲集〔第2番~第4番〕(1986~94)
【ブラームス】
・交響曲全集(1979~91)
・ハイドンの主題による変奏曲(1980)
【ブルックナー】
・交響曲集〔第3番、第4番、第5番、第6番、第7番、第8番、第9番〕(1987~95)
・テ・デウム(1982)、ミサ曲第3番(1990)
【チャイコフスキー】
・交響曲集〔第4番、第5番、第6番〕(1993, 1991, 1992)
・組曲『くるみ割り人形』(1991)
【3大レクイエム】
・モーツァルト、ヴェルディ、フォーレ(1995,1981,1994)
―――――・―――――
《第2グループ》
【J.S.バッハ】
・ミサ曲ロ短調(1990)
【ハイドン】
・交響曲集〔第92番、第103番、第104番〕(1993,1993,1992)
【モーツァルト】
・交響曲第40番(1994)
・『ドン・ジョヴァンニ』序曲(1982)
【シューベルト】
・交響曲第9番(1994)
・『ロザムンデ』序曲(1996)
【メンデルスゾーン】
・序曲『フィンガルの洞窟』(1993)
・『夏の夜の夢』序曲(1984)
【ヴェーバー】
・『オベロン』序曲(1985)
【ワーグナー】
・『パルジファル』~聖金曜日の音楽(第3幕)(1993)
・『トリスタンとイゾルデ』第1幕への前奏曲(1983)
・『トリスタンとイゾルデ』~『愛の死』(1983)
・『ニュルンベルクのマイスタージンガー』第1幕への前奏曲(1993)
・ジークフリート牧歌(1993)
・『神々の黄昏』~葬送行進曲(1993)
・『タンホイザー』序曲
(1993)
―――――・―――――
《第3グループ》
【ロッシーニ&ヴェルディ*】
・序曲集〔『ウィリアム・テル』、『セミラーミデ』、
『絹のはしご』、『泥棒かささぎ』、*『運命の力』〕(1983~95)
【フランス曲集】
・ベルリオーズ:序曲『ローマの謝肉祭』(1988)
・ドビュッシー:『海』、『映像』より「イベリア」(1992)
・ミヨー:マリンバ、ヴィブラフォーンと管弦楽のための協奏曲(1992)、フランス組曲(1991)
・ルーセル:小組曲(1990)、組曲ヘ長調(1992)
・ラヴェル:ムソルグスキー(ラヴェル編):組曲『展覧会の絵』(1993)、ボレロ(1994)
【ロシア曲集】
・R=コルサコフ:交響組曲『シェエラザード』(1984)
・プロコフィエフ:交響曲第1番(1988/ボーナストラック:ベルリン・フィル1948あり)、交響曲第5番(1990)
・ショスタコーヴィチ:交響曲第1番(1994)、第9番(1990)
・ストラヴィンスキー:詩篇交響曲(1984)
【その他】
・バーバー:弦楽のためのアダージョ(1992)年1月19-20日
・バルトーク:管弦楽のための協奏曲(1995)年3月20日
・スメタナ:交響詩『わが祖国』より「モルダウ」(1986)
・J.シュトラウス2世:『こうもり』序曲(1991)
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