木曜日, 1月 27, 2022

クライスレリアーナ 名盤5点 Kreisleriana












クライスレリアーナ、いわずと知れたシューマンの名曲ながら、なにを選ぶかでは好みがわかれよう。ピアノ曲として、緩急の別も、ダイナミズムと繊細さの両立でも、希望と懊悩の交錯でも・・・、小曲集ながら変幻自在に表情をかえる曲なので、どこに魅力を感じるかは個人によって、そしてその日の心の持ちようによっても異なる。

あまり個性的でないほうが、落ち着いて聴けるほうがよいという見方もできる。であれば、ケンプとアラウが良いと思う。


◇ケンプ


















Amazon | シューマン:子供の情景・クライスレリアーナ(限定盤) | ヴィルヘルム・ケンプ | 室内楽・器楽曲 | ミュージック



◇アラウ











クラウディオ・アラウ/シューマン:子供の情景、クライスレリアーナ、蝶々 (tower.jp)

クラウディオ・アラウ Claudio Arrau を聴く


しかし、ピアニストの個性をもっとも端的に示す作品として、本曲を味わおうとすると別の選択肢もあるだろう。以下、3点を掲げてみた。


◇ホロヴィッツ

ホロヴィッツ、美しき音の結晶 (amazon.co.jp)

子供の情景Op.15とクライスレリアーナOp.16をホロヴィッツで聴く。1960年代の録音だから半世紀以上のまえの記録である。ホロヴィッツといえば、楽々と超技巧曲をクリアする印象だが、本曲にはそんな表情は微塵もない。

耳を澄ませば、一音一音が明燦で正確無比に奏でられているのだろうが、リスナーの関心はその先の音の結晶に自然に導かれていく。しかも、それは豊かで、抒情的で、なによりも美しい。そして、子供の情景での言いようのない懐かしさ、クライスレリアーナの優しさ。久しぶりに聴いて、ホロヴィッツの至芸に改めて感嘆した。

晩年のホロヴィッツの輝き (amazon.co.jp)

ホロヴィッツの毒


グリモー

グリモー  煌くような情動 (amazon.co.jp)

いくども、さまざまな演奏家で聴いてきたクライスレリアーナながら、着心地のよい真新しい服を羽織るような爽やかさがある。構造的で複雑なパッセージでも技巧的なところが少しも表にでないで、あくまでも煌くような情動に耳が反応し、シューマンの素直な歌心に思いがいたる。しかもそこには、べたつくところがなくサラサラとした独特の手触り感がある。聴き終わったあと佳きアルバムとてらいなく思える。

グリモー、煌くような感性 (amazon.co.jp)


アルゲリッチ

「生」の感情表現の自由さ (amazon.co.jp)

たとえば、 リスト:Pソナタ  での強烈な線条的演奏とくらべて、「子供の情景」の肌理のこまかいピアノタッチは、アルゲリッチの別の一面、その豊穣な感性をしめしている。それは起伏に富む感情の襞とでもいうべきものであり、気性の強さと優しさの交錯でもある。


いかなるときでも打鍵が明確で、音がクリアに冴えわたる点では、同時代のポリーニと同様だが、そこに乗る「生」の感情表現の自由さこそアルゲリッチの魅力だろう。「クライスレリアーナ」、音の色彩の明暗のつけ方も自然だが、そこには過度に暗くならない抑制ラインがあるようにも感じる。そこもアルゲリッチらしい所作かも知れない。

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Martha Argerich: The Collection 1: The Solo Recordings  にて聴取。 シューマン:幻想曲&幻想小曲集(期間生産限定盤)  も参照。

若きアルゲリッチの衝撃 (amazon.co.jp)

若きアルゲリッチの魅力 Maria Martha Argerich



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