水曜日, 12月 11, 2024

ケンプのベートーヴェン ピアノ協奏曲 第3番










・ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番ハ短調 op.37
 ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団
 パウル・ファン・ケンペン(指揮)
 録音:1942年(モノラル)



 1970年、東京でケンプのベートーヴェンのライヴに行きました。当時「19世紀のロマンティズムを伝える唯一のピアニスト」ということで、バックハウスと比類する大家の実演に接した感激はひとしおでした。「ケンプ休止」という絶妙な間の取りかた、気品と風格に満ちたコンサートマナーはすばらしく、聴衆を強く惹きつけるものがありました。また、ケンプの演奏は常に安定しており、それはライブに限らずスタジオ録音でも同様です。

 本集は、メインのベートーヴェン(CD10枚)、シューベルト(9枚)のピアノ・ソナタ全集に加えて、バッハ(4枚:オルガン集を含む)、シューマン(4枚)、ブラームス(3枚)、ショパン(2枚)、リスト、モーツァルト(各1枚)にボーナス(古い録音やケンプの肉声を集めたスピーチ集)の全35枚で構成されています。下記には掲載しませんでしたが、ケンプ得意の各作曲家の主要な「幻想曲」が一同に聴けること、また所収されている粒ぞろいの小品群も魅力です。

 文字通り、半世紀におよぶケンプ芸術の集大成ですが、すでに各作曲家別には先行したボックス・セットが別販売されており、本集がそれをはるかに上回る<超廉価盤>であるがゆえに、これが出るなら購入を暫し待ったのに・・・というリスナーも多いと思います(★1つ留保。実は小生もその一人です)。

 下記の主要収録作品の多くは40年以上にわたって耳にしてきましたが、「ケンプ博士」の深く落ち着いた解釈は、テクニック抜群の機能主義的な今日のピアノ演奏にはない深み、慎みがあり、何度聴いても厭きのこないものです。なにより博士の真摯な演奏のモットーは「心から心へ」でした。本集のもつ最大の特色ではないでしょうか。

【主要収録作品】(括弧内は録音年)
<CD1〜4>
◆バッハ:ゴルトベルク変奏曲(1969年)、平均律クラヴィア曲集第1巻、第2巻(抜粋:1975年、1980年)、オルガン曲集(広島世界平和記念聖堂オルガン除幕式ライヴ:1954年)他
<CD5〜14>
◆ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集(1964-65年)他
(参考:ASIN: B001CGJ3QS)
<CD15〜17>
◆ブラームス:ピアノ・ソナタ第3番(1958年)、間奏曲集(1963年)他
<CD18〜19>
◆ショパン:ピアノ・ソナタ第3番、即興曲1〜4番(1958年)他
<CD20>
◆リスト:伝説、巡礼の年(イタリア)(1974年)、同左(スイス)(1950年)
<CD21>
◆モーツァルト:ピアノ・ソナタ第8番、第11番(1962年)他
<CD22〜30>
◆シューベルト:ピアノ・ソナタ全集(1965-69年)他
(参考:ASIN: B00004SA8A)
<CD31〜34>
◆シューマン:蝶々、ダヴィド同盟舞曲集、謝肉祭、交響的練習曲、子供の情景、クライスレリアーナ他(1966-74年)
<CD35:ボーナス>
◆バッハ:イタリア協奏曲(1931年)、スピーチ集等


⇒ 13人の偉大なるピアニストたち(協奏曲編)

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