水曜日, 12月 11, 2024

アルゲリッチのプロコフィエフ ピアノ協奏曲第3番











1970年1月22日アルゲリッチ初来日のライヴでプロコフィエフの「戦争ソナタ」を聴いた。当日の最後の演目だったが、音の大きさ、両腕が機械のように律動したときの目にもとまらぬ鍵盤上の指の動き、なによりその強烈な迫力に驚嘆した。いかに彼女がプロコフィエフを手中の演目にしているかを知る機会であった。

本盤はその3年前の録音だが、上記の特質とともに、特にリズム感が鋭敏で、表現の拡張性に挑戦しているような大胆さを感じる。アバド/ベルリン・フィルは、ピタリと寄り添いつつ、アルゲリッチと共同実験をしているような一体感がある。全体に生硬さはあるが、それが切れ味の良さにすべて転化しているような溌剌たる演奏。

(参考)ラヴェル:ピアノ協奏曲第1番

アルゲリッチのラヴェルの旧盤。色彩感あふれ抜群の巧さのベルリン・フィルゆえにバックは水も漏らさぬ構え、一方でアルゲリッチはそうした点で気おくれなど一切している風情なく、真っ向からむきあって自分の音楽を丁寧に表現している。特に、アバドの差配でオケの音量をミニマムに絞った第2楽章での、アルゲリッチの透明で緻密でありながら深い感性をたたえたピアニズムに酔う。26歳の女性ピアニストの演奏とは思えぬ落着きと一種の威厳すらを感じる。

➡ Martha Argerich Collection 2: The Concerto Recordings にて聴取



1941年生まれのアルゲリッチ10代から42才頃までのソロ・アルバムの集大成。1970年の来日公演(バッハ、ベートーヴェン、ショパン、プロコフィエフ)を聴いて以来のファンである。

彼女の凄さは、リリー・クラウス、ハスキルやへブラーなどそれ以前の「女流ピアニスト」という言葉を、文字通り鍵盤の迫力で叩き潰したことにあると思う。リリックな部分の音感も秀抜だが、その一方、ベートーヴェンでもプロコフィエフでも大きな構えと強烈な音量で堂々と聴衆を圧倒する。語弊のある言い方で恐縮だが当時「女リヒテル」の異名すらあった。しかも若く美しい20代前後から、である。

 

⇒ 13人の偉大なるピアニストたち(協奏曲編)

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