このリヒテルvsマタチッチ共演は特異の名演。リヒテルのハンマーのような屈強さ、マタチッチの無骨といった表面的な印象を超えて、迫力満点のグリーグでは思わぬ抒情性にはっと心がぐらつく。その一方、たっぷりの哀愁のシューマンの底にはとぐろを巻く強い情念が疼く。しかし、こうした意表を衝くスリリングさの先に、どちらもとびっきりに心を籠めた真の「音楽」を感じる。
リヒテルは強烈な個性のピアニストである一方、集中力あふれる堅牢な演奏スタイルは、当時のソビエト連邦の象徴だったハンマーにたとえられた。あらゆる演目で駄作といったものがないのは、当時のソ連の鉄の政治体制を反映したような完璧性ともイメージの共有がある。音楽、音楽家といえども、否、それが人びとの心をぎゅっと掴む作用をもっている以上、むしろそれゆえに時代が反映されている。
リヒテルについて リヒテルー協奏曲集にみる絢爛、豪華な陣容
マタチッチについて https://shokkou3.blogspot.com/2017/03/lovro-von-matacic.html
リヒテルといえば、協奏曲ではチャイコフスキーやプロコフィエフを挙げるべきとの見方が一般的かなとも思う。ここでは、あえてミケランジェリと対比したくて、グリーク/シューマンのカップリングを選んだ。
指揮者との組み合わせでも、
リヒテル (ロシア) VS マタチッチ(ルーマニア)【ロシア・東欧系コンビ】
ミケランジェリ(イタリア) VS ミトロプーロス(ギリシア)【ラテン系コンビ】
は面白い。また、ギレリスとの対比も一興。
https://shokkou3.blogspot.com/2021/12/blog-post_6.html
こちらもお奨め
https://shokkou3.blogspot.com/2022/01/5_27.html
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