木曜日, 12月 19, 2024

シフラのリスト


 









ジェルジ・シフラ1921-1994年が再評価されている。インプロヴィゼーション(即興でのアドリブ)、トランスクリプション(指示とは異なる楽器で演奏用に編曲する。アレンジ)、パラフレーズなどは、原曲・原典重視の立場からは、かつては鼻白んで見られたが、グールド登場以降、いまや多くのプレイヤーであたりまえの時代。

シフラは超絶技巧派でならしたが、作曲・編曲のセンスも豊かで、こうした技法を思うさま駆使した。ゆえにメインロードからは異端児扱いされたが、一方、その経歴、風貌からライヴでは熱狂的に迎えられた。ショパン弾きとしては”正統派”サムソン・フランソワとともに、時代を反映し、ちょっぴりデカダンぼい魅力があったのかも。

監獄入りの悲惨な戦争体験、指揮者として期待されたご子息Jrの不慮の死、愛煙家から肺癌になるなど波乱の人生が、ライヴ演奏には投影されているように感じるのは先入主ゆえか。小生の愛聴盤は以下だが、単なる技巧派などと思ったら大間違い。そのピアニズムは大家の名にふさわしい風格とともにある。後進の育成にも熱心であったようだが、これはご子息を失った空隙を埋めるという心理的な働きもあったからかと勝手な想像を馳せる。



ジェルジ・シフラ1921-1994年の1963年アスコーナ・ライヴ。当時、シフラのショパン、リストの評判はこよなく高く、自信ある演目を引っさげての登壇は大きな話題であったことだろう。
自在なテンポ設定ながら高速でも音は乱れず、強弱の振幅の大きさ、明暗のコントラスト(とくに陰影のつけかた)の妙、そしてその縦横な展開。音質に難はあるが、後半のリスト5曲は白熱の度合いが増し、圧巻の一夜を実感できる。

【収録情報】
・ショパン:幻想曲ホ短調 op.49、スケルツォ第2番変ロ短調 op.31、ピアノ・ソナタ第2番変ロ短調 op.35
・リスト:スペイン狂詩曲、『愛の夢』第3番変イ長調、ポロネーズ第2番ホ長調、半音階的大ギャロップ、ハンガリー狂詩曲第6番変ニ長調
 録音時期:1963年9月27日
 録音場所:アスコーナ、Settemane Musicali

→ Great Pianists 10 CD Set にて聴取

シフラは5年後、来日しバッハについても収録している。
・バッハ(ブゾーニ編):
1-2) 前奏曲とフーガ ニ長調BWV.532
3) コラール『目覚めよ、と呼ぶ声あり』BWV.645
4) コラール『汝のうちに喜びあり』BWV.615
5) コラール『栄光の日は来たりぬ』BWV.62)
【録音】Tokyo, 1968 

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