土曜日, 12月 07, 2024

サヴァリッシュのワーグナー


 











この曲集に耳を傾けると、サヴァリッシュが当代“超一流”のワーグナー指揮者であったことを改めて実感する。
バイロイトで若き日から『トリスタンとイゾルデ』(1957、1958年収録、以下同)、『オランダ人』(1959)、『タンホイザー』(1962)、『ローエングリン』(1962)を振り、熟達の境地にいたってから、『指輪』(1989)、『マイスタージンガー』(1993)など数多くの名演を残した。バイロイトと袂をわかった直後の1963年ウィーン響との本盤では、自然体でのワーグナー解釈を味わうことができる。

無理がなく、演奏しやすく歌いやすい安定したテンポ設定が基本。管弦楽の過度の強調もなく響きに透明感がある(バイロイトでもっとも好まれる点だろう)。音楽の構造の解像度が高く、ワーグナーの和声の特質を見事に浮かび上がらせている。でも、けっして理知がうがった堅苦しい演奏ではなく、感情移入もゆきとどき思わずメロディに引込まれる。そうしたサヴァリッシュらしさが十分に伝わる名曲集である。

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