月曜日, 10月 25, 2021

クーベリック マーラー交響曲全集 Rafael Kubelík






クーベリック マーラーとの”ハイマート・ロス”共感

交響曲全集は、ミュンヘン/ヘラクレスザールにて、1967年に第1、3、9番、1968年に第4、6、10番、1969年に第2番、1970年に第7、8番、そして1971年1月掉尾となる第5番が収録された。クーベリックは早くから意欲的にマーラーを取り上げており、第1番についてはウィーン・フィルとの1954年盤、第5番についてはコンセルトヘボウとの1951年盤がある。その第5番が、本集では20年後最後に取り上げられていることも興味深い。
バイエルン放送響は、前任のシェフ、ヨッフムとのブルックナー・チクルスの収録(第2、3、5、6番)を終えた直後であり、油が乗りきっている状況にあったことだろう。
なお、本集所収外だが、「大地の歌」については、1959年8月30日ザルツブルク旧祝祭劇場にて、ヒルデ・レッセル=マイダン(メゾ・ソプラノ)、ヴァルデマール・クメント(テノール)、ウィーン・フィルによる有名なライヴ音源がある。また、フィッシャー=ディースカウとの「さすらう若人の歌」(これも秀逸なもの)はかつて第1番に併録されて発売されていたが、ほかにも歌曲集の音源もある。
録音は古くなったが、演奏は今日のマーラー・ブームの膨大な音源のなかにあっても、なお独自の良さを失わない。小生の好むバーンスタイン、テンシュテット、シノーポリの全集と比較して、没入型、流麗さでは“やや控え目”ながら、作曲家としての感性からかディテールの分析とその再現ではシノーポリの先駆といった趣きもある。作曲家への強い共感(ドイツ・グラモフォン録音全集付録のインタビュー参照)では、ハイマート・ロス(故郷を失った痛手)という1点において、マーラーとクーベリックは深く気脈を通じているのかもしれない。

<収録情報>
・第1番 ニ長調 「巨人」(1967)
・第2番 ハ短調 「復活」(1969)
ノーマ・プロクター (コントラルト)、エディット・マティス(ソプラノ) バイエルン放送合唱団
・第3番 ニ短調(1967)
マジョリー・トーマス(コントラルト) バイエルン放送女声合唱団、テルツ少年合唱団
・第4番 ト長調(1968)
エルシー・モリソン(ソプラノ)、ルドルフ・ケッケルト(ヴァイオリン)
・第5番 嬰ハ短調(1971)
・第6番 イ短調 「悲劇的」(1968)
・第7番 ホ短調 「夜の歌」(1970)
・第8番 変ホ長調 「千人の交響曲」(1970)
(ソプラノ)エディット・マティス、マーティナ・アーロヨ、エルナ・スポーレンベルク、(コントラルト)ユリア・ハマリ、ノーマ・プロクター、(テノール)ドナルド・グレーベ、(バリトン)ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ、(バス)フランツ・クラス、(合唱)バイエルン放送合唱団、北ドイツ放送合唱団、西ドイツ放送合唱団、レーゲンスブルク大聖堂少年合唱団のメンバー、ミュンヘン・モテット合唱団女声セクション、(オルガン) エベルハルト・クラウス -
・第9番 ニ長調(1967)
・第10番 嬰ヘ短調 第1楽章 アンダンテ - アダージョ(1968)
 

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