水曜日, 10月 06, 2021

マーラー 交響曲第2番 名盤5点


 




以前から親しんでいるメータ盤の魅力を以下に記す。

メータ

「一期一会」を感じさせる白熱の演奏 (amazon.co.jp)


イレアナ・コトルバス(ソプラノ)、クリスタ・ルートヴィヒ(メッゾ・ソプラノ)、ウィーン国立歌劇場合唱団、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏。1975年ステレオ録音。

 ウィーン・フィルに注目すると、「復活」に関しては、古い録音だが、ケルツェ(ソプラノ)、ウェスト(アルト)、シェルヘン指揮ウィーン国立歌劇場管弦楽団、ウィーン・アカデミー合唱団の歴史的な名盤があったが、一般にはいまや忘却の彼方だろう。
 しかし、このメータ盤がでて、アメリカの並みいる高度技術系オケの多くの演奏を押さえて、「流石、ウィーン・フィル!」の決定盤が登場し、かつその地位はいまも保たれているのではないだろうか。

 メータ39才の才気溢れる演奏だが、メータとウィーンとの関係は意外と近い。1954年にメータはウィーン国立音楽大学に留学し、ハンス・スワロフスキーに学ぶ。1958年にリヴァプールの指揮者コンクールで優勝し翌年、その功績をもってウィーン・フィルを指揮してデビューを飾る。難しいウィーン子もいわば近しい関係としてメータを迎え入れたとも言えよう。

 そうした所縁もあってか、この2番では白熱の燃焼をウィーン・フィルがしているように感じる。テンポは早めだが音楽の濃度は高く、各パートの陰影に富んだニュアンスある響きは恐れ入るほどに見事である。しかも後半の3楽章に行くにつれオケが一体となった凝縮感が徐々に強まり、これは容易ならざる・・といったゾクゾクする緊張感が時にリスナーを貫く。

 かってライヴ録音のような迫力と言われたが、指揮、オーケストラだけでなく独唱、合唱についても、たしかに数本の波長の異なるバイオリズムが、この演奏時だけぴたっと最高にシンクロし、一気に高揚点が上がったような偶発性を感じさせる。「一期一会」の名演といった深い感動がある。

➡  
People's Edition  も参照

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次はクレンペラーである。やはりこの人の解釈と迫力は群を抜いている。

クレンペラー

クレンペラー、斧と鉈をもったような「凄演」 (amazon.co.jp)


全体については、見上げるばかりの大木に渾身の力をこめて斧を振るうような、各フレーズの処理については、薪に鉈を一気に突き刺すような、思い切りのよい演奏である。さらに、クレンペラーとは思えない快速感(特に前半3楽章)にも驚きがあろう。

あまりに著名なフェリアー(コントラルト)の説得力ある詠唱はもちろん、ジョー・ヴィンセント(ソプラノ)も、合唱団も耳元が熱くなるような健闘ぶり。終楽章、すべてが混然となったエンディング部は鬼気迫るものである。

なによりも、マーラーを得意とするメンゲンベルク、ベイヌムに鍛えられたコンセルトヘボウの緊張感ある演奏が本当に見事。古いライヴ・モノラル音源(1951年7月12日、アムステルダム。マーラー没後40周年記念)ながら、表情豊かな弦・木管楽器(第5楽章のフルートとピッコロの夜鶯の「リアリティ」)にくわえて、管楽器の咆哮、ティンパニーの強打とも効果的で乱れぬ技量。
リマスターで音は随分と聴きやすくなったが、もしも録音が良かったらどんなにか凄い演奏だっただろうかと思いは馳せる。

<収録情報>
交響曲第2番 ハ短調 「復活」
Symphony No. 2 in C Minor, "Resurrection"

作詞 : 伝承 - Traditional
作詞 : フリードリヒ・ゴットリープ・クレプストック - Friedrich Gottlieb Klopstock
キャスリーン・フェリアー - Kathleen Ferrier (コントラルト)
ジョー・ヴィンセント - Jo Vincent (ソプラノ)
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 - Royal Concertgebouw Orchestra
オットー・クレンペラー - Otto Klemperer (指揮)

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テンシュテットはここでも彼らしいアプローチで名演を紡いでいる。

テンシュテット

テンシュテット、伝説的名演の「復活」 (amazon.co.jp)


「復活」の伝説的名演。1981年5月14-16日の収録で、ソロはエディト・マティス(ソプラノ)、ドリス・ゾッフェル(メゾ・ソプラノ)。但し、かねてより廉価盤全集  Mahler: Complete Symphonies Klaus Tennstedt  があり、録音を気にしなければこちらがお得。また、1989年2月20日の別のライヴ音源  マーラー:交響曲第2番 ハ短調「復活」  も有名。

低弦は、深く地中を抉り取る鍬(くわ)のようだ。管楽器は形式的な謹厳さと自由で「くだけた」「やさくれた」表情をあわせもつ。ソロの詠唱は、ときにか細く、ときに力強く、最大限の振幅をもって臨場する。このように、曖昧さがない明確な役割分担が与えられている。そして展開される音楽は、スケールが大きくいかにも熱いテンシュテット流。その特質は本盤でもライヴ盤でも共通。


ワルター

ブルーノ・ワルター/マーラー:交響曲第2番「復活」 (tower.jp)

バーンスタイン

レナード・バーンスタイン/マーラー:交響曲第2番「復活」&亡き子をしのぶ歌 (tower.jp)


(参考)

織工Ⅲ: ヤニック・ネゼ・セガン マーラー第2番「復活」 (shokkou3.blogspot.com)


👉 織工Ⅲ: 名盤5点 シリーズ (shokkou3.blogspot.com)



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