火曜日, 5月 29, 2018

名盤探訪 ノイマン ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」&第7番

ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」&第7番
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・交響曲第9番について
ブラームスはドヴォルザークの感性豊かなメロディ創造力を高く評価しており、チェロ協奏曲など、その音作りに賛辞を惜しまなかった。一方、ドヴォルザークは民族音楽へのあくなき関心を有しており、それを咀嚼、内在化して自作品に結実している。そうした要素が最高度に表現された作品が第9番である。

ノイマンの演奏は、この2つの特質、感性豊かなメロディと民族音楽の咀嚼力を冷静かつ見事に浮かび上がらせている。過度に感傷的になることなく、テキストの細部を丹念に表現しながら、全体の仕上がりは均整がとれている。
その反面、激烈な表現ぶりからは「禁欲」の構えで、テンポを大きく動かすこともしない。よって、リスナーによっては大人しい、ドライブ感の不足した演奏と思われるかも知れない。しかし、還暦をこえたノイマンが、デジタル録音で再録(1981年10月)したのは、自らの解釈への秘めたる自信となにより手塩にかけてきたチェコ・フィルの実力への強き信認あればこそであろう。


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名盤探訪 ノイマン ドヴォルザーク:交響曲第8番&第4番

ドヴォルザーク:交響曲第8番&第4番
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・交響曲第8番について
優しく語りかけるように始まる第1楽章冒頭のト短調の序奏から、目の前に懐かしい田園風景が広がるイメージがある。ノイマンの特色である弦楽器と木管楽器の絶妙なバランス感覚が、この曲の運行には欠かせない。

第2楽章のフルートとオーボエの掛け合いは子供が<なぞなぞ>遊びをしているような面白さがあるが、柔らかく、ほのぼのとした表現ぶりである。中間部でキュッと引き締めたあと、ふたたびコミカルなメロディに回帰する。

第3楽章はドヴォルザークのもつ豊かな抒情性がもっとも美しく結実した作品だが、ノイマンは安易なセンチメンタリズムに陥ることなく、節度ある冷静な、そして高貴な演奏である。

終楽章、印象的で短いトランペットによるファンファーレののち、主題が変奏曲風に登場する。その後は力感をもって、快活に展開されるが、全体にオーヴァードライブ感がなく、弦楽器を前面に管楽器は後衛から援護し、その中間をチェコ・フィルの強み、しなやかして美音の木管楽器が縦横に埋めていく。セル ドヴォルザーク:交響曲第8番 他 と双璧、聴いていて常に快感を得ることができるという意味においては本曲筆頭の名演。


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月曜日, 5月 28, 2018

名盤探訪 ギレリス バッハ:フランス組曲第5番,ショスタコーヴィチ:ソナタ第2番&リスト:ロ短調ソナタ

バッハ:フランス組曲第5番,ショスタコーヴィチ:ソナタ第2番&リスト:ロ短調ソナタ
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Emil Gilels Plays Concertos & Sonatas にて聴取(なお、ここには1979年11月14日、バッハ/シロティ編:前奏曲ロ短調 BWV.855のライブ・アンコールも所収されている)。リストもショスタコーヴィチも聴きものだが、以下はバッハ:フランス組曲第5番について。

ギレリスはあまりバッハの録音を残していない。フランス組曲といえば、たとえば、グールドの名盤  バッハ:リトル・バッハ・ブック  が有名。

グールドと比べるとギレリスは安定したタッチで、ある意味でオーソドックスな解釈。しかし、豊かで魅力的な演奏である。BWV816の7曲(1.アルマンド、2.クーラント、3.サラバンド、4.ガヴォット、5.ブーレ、6.ルール、7.ジーグ)のうち、特に後半が聴きもの。有名な4はまるで教則本を正しく弾くが如くゆっくりと固い音、一転し、5はものすごく速いパッセージ、6はふたたび減速し意味深長な含意をこめ、終曲7では力強い打鍵で一気に盛り上げる。この曲集だけでも聴きこむ価値があり、得難い充足感があるだろう(1960年2月25日の録音)。


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日曜日, 5月 27, 2018

名盤探訪 ヴァルヒャ トッカータとフーガ/バッハ:オルガン名曲集

トッカータとフーガ/バッハ:オルガン名曲集
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バッハのオルガンを無性に聴きたくなるひとつのきっかけは、(まったくの個人的意見ながら)少々メランコリーな心持で、一人沈思したいときではないだろうか。しかし、トッカータの原義は「触れる」という意味で、「トッカータとフーガ」は実はオルガンの「腕ならし」曲といわれれば、そうだったのか!と気分もちょっとは和み、さらに本集の終曲、『目覚めよと呼ぶ声が聞こえ』は、よく耳にすれば明るい導きの響きもある。

ヘルムート・ヴァルヒャの即興的な雰囲気漂う名演が、古くからひろく支持をえているのは、バッハの音楽のもつこうした「朗々さ」を見事に表現しているからではないだろうか。聴き終わったら、結構、はじめは落ち込んでいた心持が晴れて変わっているかも!推薦します。

<収録内容>(録音時点と場所)
◆トッカータとフーガ ニ短調 BWV565(1956年9月、アルクマール)
◆トッカータ、アダージョとフーガ ハ長調 BWV564(1956年9月、アルクマール)
◆幻想曲とフーガ ト短調 BWV542(1962年9月、アルクマール)
◆パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV583(1962年9月、アルクマール)
◆小フーガ ト短調 BWV578(1970年5月、ストラスブール)
◆コラール『主イエス・キリストよ、われ汝に呼ばわる』 BWV639(1969年9月)
◆コラール『いざ来ませ、異教徒の救い主』 BWV659(1971年5月、ストラスブール)
◆コラール『目覚めよと呼ぶ声が聞こえ』 BWV645(1971年5月、ストラスブール)


       

名盤探訪  Toscanini  ヴェルディ:レクイエム&テ・デウム(トスカニーニ指揮1940年ライヴ)

ヴェルディ:レクイエム&テ・デウム(トスカニーニ指揮1940年ライヴ)
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トスカニーニによるヴェルディ「レクイエム」の録音は5種類あるようだが、一般的なのは1950年盤 ヴェルディ:レクイエム&テ・デウム であろう。本演奏は録音状況ははるかに劣る1940年盤である。

 しかし、この籠りに籠もって、それが放出される寸前のエネルギーの圧力はなんとも凄い。それを解き放つような「渾身の一撃」をここに加えるといった激しき演奏で、また、マイク・セッティングのためだろうが、独唱が前面にですぎるぐらいに強調される。さらに、その表現ぶりはオペラばりに抑揚がついており濃厚な詠唱である。テンポは可変的だが、全体はキリリと引き締まっており、最後の一音の「追い込み」まで一切の弛緩がない。美しきメロディが蠱惑的に現世をたたえる一方で、神の世界への敬虔な架け橋のような神々しき響きも折々に交差する。聴きおわる頃には録音の悪い痩せた音は気にならなくなり、純正な音楽空間をそこに意識させるような神聖な気持ちに導いてくれる。

 ◆ヴェルディ:「レクィエム」「テ・デウム」

 ジンカ・ミラノフ - Zinka Milanov (ソプラノ)
 ブルーナ・カスターニャ - Bruna Castagna (メゾ・ソプラノ)
 ユッシ・ビョルリング - Jussi Bjorling (テノール)
 ニコラ・モスコーナ - Nicola Mascona (バス)

 ウェストミンスター合唱団 - Westminster Choir
 NBC交響楽団 - NBC Symphony Orchestra

 アルトゥーロ・トスカニーニ - Arturo Toscanini (指揮者)

 録音時期:1940年11月23日
 録音場所:ニューヨーク、カーネギー・ホール
 録音方式:モノラル(ライヴ)
 2012年新リマスター、エンジニア:キット・ヒギンソン