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1937年12月25日、トスカニーニ/NBC響は歴史的なデビュー演奏を行った。イタリア出身の一人の偉大な老指揮者をニューヨークに招聘するために、RCAは世界最高クラスの放送交響楽団を創設し、そのこけら落としコンサートであった。これは当時の欧米クラシック音楽界における空前絶後の「大事件」であったろう。
当日の演目は、本集のヴィヴァルディ『調和の霊感』第11番、モーツァルト交響曲第40番そしてメインがこのブラームスであった(本集では、「最後のコンサート」もあわせて所収)。以下は本ブラームス交響曲第1番について。
本番について、多くの音源を残したカラヤンの「初録音」は、1943年9月6〜11日、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団との演奏 グレート・コンダクター・シリーズ/カラヤン ブラームス:交響曲 第1番 他 であった。本集はその約5年前、いかに早い時期の録音かがわかろう。
本番では、フルトヴェングラー/ウィーン・フィルの名演 ブラームス:交響曲第1番 (1952年1月27日)があるが、ロマンティックな楽想をときに自由に、縦横に展開するフルトヴェングラーに対して、トスカニーニ盤は、厳しい規律と超越的ともいえる高い士気を最後まで持続させることを旨とする機能主義的な演奏である。
多くの指揮者にとって、トスカニーニ、フルトヴェングラー両巨頭の解釈と実践のあたえた影響は大きく、本曲を得意としたミュンシュ ブラームス:交響曲第1番&悲劇的序曲【Blu-spec CD】 (1956年)、ベーム ブラームス:交響曲第1番(1959年)でも、トスカニーニのスタイルをいかに咀嚼し、これを手本としているかに思いはいたる。特に、ミュンシュの切れ味のよさはトスカニーニ盤を髣髴とさせる部分がある。
録音の古さにくわえて、後年のトスカニーニ盤にくらべても演奏の完璧さには欠ける(その意味では好事家向けではあろう)が、この明快で細部まで神経のゆきとどいた演奏の「高質さ」は伝わってくる。ドイツ的という言葉は必須条件ではなく、ブラームス音楽の普遍的な素晴らしさをこのように表現しえたその1点において、トスカニーニの棒の威力には驚きを禁じえない。
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