カラヤン/ベルリン・フィルによるシベリウスの後期交響曲(4~7番)、ヴァイオリン協奏曲および管弦楽集。録音は主として1960年代後半。再録の多いカラヤンだが、管弦楽集を除き、交響曲は一発勝負、自信の録音だったのだろう。
ヴァイオリン協奏曲は、音色は見事に美しいがやや線が細いといわれたフェラスがピタッとはまっており名盤。管弦楽集はその後、売れ筋の『アダージョ』などに何度も組み込まれた手中の玉。カラヤン嫌いでなければ、CD5枚組+BDオーディオでこの価格はいまだベスト・クオリティ。
<収録情報>
交響曲第4番 1965年2月
交響曲第5番 1965年2月
交響曲第6番 1967年4月
交響曲第7番 1967年9月
ヴァイオリン協奏曲 フェラス(ヴァイオリン) 1964年10月
組曲『ペレアスとメリザンド』1984年2月
交響詩『タピオラ』(1)1964年10月、(2)1984年2月
交響詩『フィンランディア』(1)1964年10月、(2)1984年2月
トゥオネラの白鳥 (1)1965年2月、(2)1984年2月
悲しいワルツ (1)1967年1月、(2)1984年2月
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1960年代後半、レコードを聴きはじめた頃、カラヤン/ベルリン・フィルの新盤は高かったが、エンジェル・レーベルからのフィルハーモニア管弦楽団の旧盤は、録音が古くなったとの理由からダンピングされ安く買えた。しかも、旧盤は過去のもの、更改されて克服されるものとの受け止め方が一般で、その評価も一部を除き新盤に比べて「求心力にかける」「表面的」といった一刀両断の言い方で片付けられていた。
1960年フィルハーモニア管弦楽団との録音のシベリウスの2番。その響きの<外延的>なひろがりと<内在的>なものを感じさせる音の奥行き、そこから独特の≪立体感≫がうまれてくる。そうした音楽がある種の威圧感をもって迫ってくる。けっして、よくいわれる表面的で軽いサウンドではない。そう簡単には解析できないし、解析できない以上、たやすく真似もできない。カラヤンの音づくりの典型がこの2番には満ちている。なお、フィルハーモニア管は音質が良くあうシベリウス作品を得意としており、本盤はその典型と思う。
→ Sibelius: Symphonies Nos. 2, 4, 5, Tapiola, Finlandia も参照
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カラヤンの厖大な録音のなかで、わずか10分の「カレリア」序曲を取り上げるのは少し勇気がいる。この演奏の突出さをどう表現すべきか。音に色がある。リズムには自然の息吹がある。包み込むような音の奔流には圧倒感よりも名状しがたい心地よさがある。下手な比喩で恐縮だが、ジェット機の高度から、雲海を足下におき、流れゆくあかね雲に見惚れて、その一瞬一瞬をこよなくいとおしく思うような切なさがある。一度、是非聴いてみてください。
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