木曜日, 5月 24, 2018

クラシック音楽 聴きはじめ 10 セル/ライヴ・イン・東京 1970

ライヴ・イン・東京 1970
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いまから約半世紀前(1970年)に東京でおこなわれたセル/クリーヴランド管弦楽団によるライヴ音源である。この日、このコンサートを東京文化会館で聴いていた。その時の感動が正確に甦ってくる。セルがこの時に重篤な病気であったことはコンサート会場では知るよしもなかったし、同年大阪万博の記念コンサートが東京でも目白押しで、多くの注目は同時期に来日していたカラヤン/ベルリン・フィルに寄せられていた。セルはもちろん「著名中の著名」な指揮者ではあったが、それでもあまりに多くの巨匠の来日ラッシュのなかに埋没し正直地味な印象はぬぐえなかった。

しかしその魂魄の演奏は、はじめての日本でのライヴで、私ならずとも聴衆の驚きは大きかったと思う。当時、セル/クリーヴランド管弦楽団の演奏は「冷たい」とか「クールな精密機械」といった一部評論家の言動があったが、実際の演奏はそれとはまったく異質の熱気あふれるものであり、オケから紡ぎだされる音楽は暖かく表情豊かな音色とともに、アンサンブルはけっして乱れないといったものだった。前半の「オベロン」序曲、モーツアルトの40番も一気に流れるように展開され素晴らしいものだったが、後半のシベリウスの2番は文字通り白熱の名演だった。当時、シベリウスはいまほど演奏される機会がなく、このプログラムでも透明なクリーヴランド・サウンドに合う曲を選んだのかなと事前には感じたが、のちにセルがこの曲をもっとも得意としていたことを知り十八番での勝負といった演目であったのだろう。
 
若き日から彗星のごとく登場したセルの晩年の輝きを本CDを聴き返して追想した。忘れえぬ思い出である。


       


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