土曜日, 5月 19, 2018

イッセルシュテット Hans Schmidt-Isserstedt

ハンス・シュミット=イッセルシュテット・コレクション~1950-1964
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イッセルシュテットは北部ドイツ人。その特質は、フルトヴェングラー的なデーモンとも、カラヤン的機能主義とも異なる。テンポは基本的にあまり動かさず悠然と落ち着いた構え、強奏でも乱れはなく一定の節度を保つ。作為的な情緒とは無縁ながら、その音色には特有の滋味がある。無理のない安定した運行ゆえに、神経は細部までゆきとどき、オーケストラから最良のものを引き出す名指揮者である。

本集は、1950年代を中心とした手兵、北ドイツ放送響との古い音源が中心。本集でしか聴けない記録も多い一方、主力のベートーヴェンでは別にウィーン・フィルとの秀でた全集( ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」&第6番「田園」 などを参照)があり、また、ブラームスでも他の廉価盤 Brahms: From Hamburg もある。よって、根強いファンは別として、購入にあたっては慎重な判断もいるだろう。

(収録情報:カッコ内録音年、オケの記載のないものは北ドイツ放送響)
【バッハ】
・ロ短調ミサ BWV 232(1950年)
マルゴット・ギヨーム(ソプラン)、ゲルトルート・ピッツィンガー(アルト)、ワルター・ガイスラー(テノール)、ヨーゼフ・グラインドル(バス)
・ブランデンブルク協奏曲第2番(1961年)

【パッヘルベル】
・カノン(1954年)

【ヘンデル】
・オラトリオ「メサイア」(1953年)
アニー・シュレム(ソプラノ)、ロレ・フィッシャー(アルト)、ルドルフ・ショック(テノール)、クルト・ベーメ(バス)、ケルンNWDR合唱団、ハンブルクNWDR合唱団、ケルン放送響

【ハイドン】
・交響曲第92番「オックスフォード」(1953年)シドニー交響楽団
・交響曲第94番「驚愕」(1955年)
・交響曲第101番「時計」(1961年)
・交響曲第103番「太鼓連打」(1954年)

【モーツァルト】
・交響曲第38番「プラハ」(1959年)
・交響曲第40番(1959年)
・交響曲第41番「ジュピター」(1961年)
・レクイエム(1952年)、「エクスルターテ・ユビラーテ」モテット※(1953年)、リーザ・デラ・カーザ(ソプラノ)、マリア・フォン・イロスファイ(アルト)、ヘルムート・クレプス(テノール)、ゴットロープ・フリック(バス)、※マリア・シュターダー
・「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」(1955年)

【ベートーヴェン】
・交響曲第7番(1961年)
・交響曲第8番(1961年)
・交響曲第9番ニ短調「合唱」(1951年)、ビルギット・ニルソン(ソプラノ)、マリア・フォン・イロスファイ(アルト)、ヴァルター・ルートヴィヒ(テノール)、ルートヴィヒ・ウェーバー(バス)、Das NDR Chorus

【シューベルト】
・交響曲第5番(1955年)
・交響曲第6番(1958年)ロンドン響
・交響曲第9番「グレート」(1959年)
・劇音楽「ロザムンデ」D.797(抜粋)(1955年)

【ブラームス】
・交響曲第2番(1955年、1957年)
・ハンガリー舞曲集(1954年、1961年、1962年)
・ハイドンの主題による変奏曲 (1962年)

【リスト】
・ハンガリー狂詩曲第2番(1959年)

【ワーグナー】
・ニュルンベルクのマイスタージンガー:第1幕への前奏曲(1952年、1961年)北ドイツ放送響、第3幕への前奏曲(1952年)
・「パルジファル」~前奏曲(1961年)
・交響曲ハ長調 WWV 29(1962年)
・「ラインの黄金」~ハルハラへの神々の入場(1955年)
・「ワルキューレ」~ワルキューレの騎行(1955年)
・「ワルキューレ」~魔の炎の音楽(1955年)
・「ジークフリート」~森のささやき(1955年)
・「神々の黄昏」~ジークフリートのラインの旅(1955年)
・「神々の黄昏」~ジークフリートの葬送行進曲(1955年、1961年)

【ブルックナー】
・交響曲第9番(1952年)

【マーラー】
・交響曲第2番「復活」(1956年)オダ・バルスボルク(ソプラノ)、ジークリンデ・ワーグナー(メゾ・ソプラノ)、北ドイツ放送響
・「大地の歌」(1964年)ナン・メリマン(アルト)、フリッツ・ヴンダーリッヒ(テノール)

【チャイコフスキー】
・交響曲第4番(1960年:2種)
・交響曲第5番(1952年)
・交響曲第6番「悲愴」(1954年、1960年)

【ドヴォルザーク】
・交響曲第7番(1953年)
・交響曲第9番「新世界より」(1953年、1957年)
・弦楽のためのセレナーデ ホ長調(1963年)
・管楽のためのセレナーデ ニ短調(1963年)
・スラヴ舞曲集(第1、2、3、16番) (1953年)

【ヴェルディ】
・レクイエム(1961年)ステファニア・ヴォイトヴィチ(ソプラノ)、クリスタル・ルートヴィヒ(メゾ・ソプラノ)、ニコライ・ゲッタ(テノール)、ボリス・カルメリ(バス)、北ドイツ放送合唱団、ケルン放送合唱団

【リムスキー・コルサコフ】
・交響組曲「シェヘラザード」、.熊蜂の飛行(1959年)

【ギュンター・ラファエル】
・交響曲第5番(1960年)


ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」&第6番「田園」
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ベートーヴェンの5番、1940〜50年代はフルトヴェングラー、トスカニーニの両巨星の演奏が、前者はドイツ精神主義の精華、後者は機能主義的アプローチの模範として尊重された。1960年代以降はステレオ録音が登場し、大勢は音響も加味して評価する方向となり、先行して人気を得たのはライナー/シカゴ響(1960年)だったと思う。
一方、カラヤンはベルリン・フィルとのベートーヴェン交響曲全集を60年代から累次にわたって世に問い絶大な影響力を及ぼす。では、ライヴァル・オケたる天下のウィーン・フィルはどうであったか?

イッセルシュテットが1968年全集を収録し大きな注目を集めた。特に、ベンチマークたる5番、9番は名演の誉れ高く、5番では人気絶頂のカルロス・クライバー盤(1974年)がのちに登場するまでは推選盤筆頭という評価も稀ではなかった。
改めてその5番を聴く。遅い演奏といってよいだろう。ライナー盤との各楽章比較では、第1:8:07(ライナー、以下同7:28)、第2:10:28(10:04)、第3:6:00(5:26)、第4:8:58(7:59)と第1〜3楽章までは各約30秒の遅行だが、なんと第4楽章は約1分も長い。しかし、遅いということを意識するのは実は他との比較においてであり、イッセルシュテットにとってはこの偉大な曲をキチンと過不足なく再現するためにはこのタイム・キーピングは必須であったのではないかと感じさせる。折り目正しく一切奇をてらわぬ正攻法の演奏である。

イッセルシュテットは北部ドイツ人ながら、フルトヴェングラー的なデーモンとも、ましてトスカニーニ的切り立つような彫刻美ともまったく異なる。テンポは動かさず悠然と落ち着いた構え、強奏は乱れず一定の節度を保つ。作為的な情緒とは無縁ながら滋味に富む。無理のない安定した運行ゆえに、神経は細部までゆきとどき、ウィーン・フィルはいかにも沈着な対応ながら、その実、指揮者、オケともに「前向き」な曲づくりの姿勢が自然に伝わってくる。5番に限らず、聴くうちにベートーヴェンの意図した音楽がここに見事に再現されているのではないかという確信がもてるような、安定した実に良い演奏である。

→ Brahms: From Hamburg も参照


Brahms from Hamburg
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往年のファンにとっては、ハンス・シュミット・イッセルシュテットという名前は、一種の畏敬ともにあった。並みいる大家の存在、覇を競う名指揮者群像のなかにあって、ベートーヴェンの主力の交響曲をウィーン・フィルと録音し、これが当時の第1等、ベンチ・マーク盤の評価を勝ち得ていたことの意味は大きい。

 かつてドイツ滞在中、ブラームスのハンブルクにおける存在の重さを実感したことがある。それは郊外でドイツ・レクイエムをホルスト・シュタインの指揮で聴いたときのことだが、真冬の寒い教会で、厚いコートの襟をたてて咳ひとつを抑えようとする緊張したフロアの雰囲気に「異国人」として正直、沈黙の重苦しさには居座りの悪さがあった。場に呑まれただけかもしれないけれど、それくらいご当地のブラームスを大切にする気風並々ならずと感じた次第である。

 ベートーヴェン「運命」「合唱」で希代の名演を生んだプロ・ドイツのイッセルシュテット。彼が創立者として活動した北ドイツ放送交響楽団と残したブラームス交響曲全集他である。4番がとくに名演の声が高いが、ブラームスはその晩年をすごしたウィーンの人間ではなく、本来北ドイツの生んだ巨匠なのだという本場意識濃厚の貴重な記録である。かつ、この価格、聴いて損はない。

<収録記録>
◆交響曲
・第1番(録音:1967年6月5日)
・第2番(1967年10月30日、ライヴ)
・第3番(1969年2月4-5日)
・第4番(1973年5月21日、ライヴ)
◆序曲など
・大学祝典序曲(1970年9月2-4日)
・ハイドンの主題による変奏曲(1962年9月24日、モノラル・ライヴ)
・ハンガリー舞曲第1、2、3、5、6、7、10番(1953年、モノラル)
・運命の歌(1971年9月13-14日、ライヴ)

Sym 4-6
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解釈の「芯」がしっかりとしている一方、表現の細部の処理は丁寧である。チャイコフスキー特有の抒情性はあるが、過度にはならず、けっしてそれに流されることなく、むしろ音楽構成の大きな掴み方のほうにリスナーの関心を誘導していく。NDR SOの低弦は質量とも豊かで、それゆえ音響の重心は低く、色調はやや暗めであるが、落ち着きがあり耳によくなじむ。
第6番「悲愴」は、1965年5月23、24日の録音。モノラル音源ながら、音はクリアである。ハンス・シュミット=イッセルシュテットの名匠ぶりは、その絶妙なテンポ設定にある。速度の可変性とダイナミズムの振幅の按配にすぐれ、第3楽章の切れ味と終楽章の深い哀愁のコントラストは見事。第5番は、1970年11月1日、第4番は1967年1月16日のいずれもステレオ録音だが、演奏の傾向は一貫している。


Hans Schmidt-Isserstedt: The Telefunken Recordings

Hans Schmidt-Isserstedt: The Telefunken Recordings

【曲目】
1. ハイドン:交響曲 第92番「オックスフォード」
2. ドヴォルザーク:交響曲 第9番「新世界より」
3. チャイコフスキー:交響曲 第6番「悲愴」
4. リスト:ハンガリー狂詩曲 第2番
5. リムスキー・コルサコフ:熊蜂の飛行
6. シューベルト:交響曲 第8(9)番「グレート」
【演奏】
ハンス・シュミット=イッセルシュテット(指揮)
1)シドニー響
2-6)北ドイツ放響
【録音】
1)1953年8月6日(ライヴ)
2)1953年5月18,20日
3)1954年2月14日
4,5)1959年5月16,19日(ステレオ)
6)1959年3月3,4日(ステレオ)
 
Capitol Recordings

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